2020年秋季総合特集Ⅳ(7)/トップインタビュー ユニチカトレーディング/エコ素材による発信強化/代表取締役社長 細田 雅弘 氏/新事業開発室が始動

2020年10月29日 (木曜日)

 ユニチカトレ―ディングは2020年度からの中計を通じ業績を19年度の売上高362億円、営業・経常利益1億円から22年度には売上高433億円、営業・経常利益10億円に回復させる。「エコフレンドリー」や「パルパー・ソロナ」といった環境配慮型素材への傾斜を強める同社。細田雅弘社長に中期的な事業戦略を聞いた。

  ――新型コロナウイルス禍に見舞われています。

 カジュアルやスポーツといった一般衣料向けが苦戦に転じました。一方でマスクや防護服向けといった特需が発生し、こちらはプラスとして作用しています。収益全体としては、上半期は何とかプランを達成できそうな状況です。

 マスク向けが増えたのはあくまで特需です。一時期、品不足に陥りましたが、医療機関の在庫は増強され、海外からも安価な輸入品が入ってくるようになりました。今後もマスクビジネスを続けようと思うのならば、高グレードのゾーンに絞るべきです。当社はその方向性で今後も展開していきます。

  ――この間、「エコフレンドリー」など環境に配慮した素材群を充実させてきました。

 誰もが環境、環境と言っています。こんな中で、どういう訴求ポイントを持てるか、もう一歩踏み込んでPRできるかが問われてくるのではないでしょうか。

 マーケットがさまざまなエコを求めてくるのに対して、どれだけ多くの引き出しをもってニーズに対応できるかが重要になってきます。ストレッチ「Z―10」のような独自素材を100%エコ化できれば大きな強みになってきます。

  ――「エコフレンドリー」のその後の進展は。

 残念ながら新型コロナ禍でこの半年くらい、商談は止まったままです。しかし、環境はますます重要視されてくるでしょうし、われわれとしてもますます力を入れていきます。ある生地商さんが21春夏でそこそこの量を扱ってくれることになっています。

  ――「パルパー・ソロナ」がエコ素材のラインアップに加わりました。

 確か2年ほど前のインターテキスタイル上海でデュポンに対するプレゼンをスタートさせました。両社の思惑が一致し、その後、共同開発に着手したわけです。

 これまではPET再生ポリエステルで「エコパルパー」を展開してきました。しかし、相手素材が「ソロナ」に替わると、いろいろと操業条件を調整しなければなりません。

 この前、デュポンは世界初の特殊複重層糸だと言っていました。当社だから開発できたとも言ってくれました。21春夏から店頭にお目見えします。デュポンの販路をお借りして海外にも打って出ます。ゆくゆくはインドネシア・ユニテックスにも持ち込み、グローバルに売り込んでいきます。

  ――新事業開発室を立ち上げました。

 今回の「パルパー・ソロナ」のプロモーションは同室がオーガナイズしたものです。アイソレーションガウンの進化版も彼らが走り回って手掛けてくれています。ネット通販でマスクを発売したのも同様です。このほど「リバティプリント」を施した新タイプを発売しました。

 ネット通販では、災害対策品の開発を進めていて、被災者の方が本当に必要とされるものをパッケージで納められるようなグッズセットをイメージして準備を進めています。

  ――アセアン開発センターを発足させました。

 リモートでいろいろと準備していますが、まだ人を出せていません。日本から輸出した高機能糸で生地や製品をベトナムで生産し、日本への持ち帰りや世界市場への販売で新規商流を創出することがミッションです。

  ――非繊維事業はいかがですか。

 衣料繊維事業の拡大を望みにくいことを考えると、こちらを是が非でも伸ばさなくてはなりません。防護服なんかが期待できるアイテムです。産業資材やフイルム、プラスチックを主力に扱っており、例えば包装用フイルムは巣ごもり需要の増大で売れ行きは好調です。工業用フイルムでは、デジタル化や5Gの進展に伴い半導体市場向けが伸びており、これの拡販にも力を入れていきます。

〈私の新常態/筋トレやりつつネットフリックス〉

 新型コロナ禍に伴い「在宅勤務がずいぶんと多くなった」。映画を見ているだけでは手持ち無沙汰のため、「筋トレやストレッチのための道具で体を鍛えながらネットフリックスを見ている」と言う。夜に飲む機会が減り、北新地にもほとんど顔を出さなくなったおかげで、「健康体に戻れた」と笑顔をのぞかせる。こういう新しい日常を過ごしながら、「徐々にアフターコロナになじんでいくんでしょう」と語る。

〈略歴〉

 ほそだ・まさひろ 1982年4月ユニチカ入社。2007年7月技術開発本部技術開発企画室長、12年7月執行役員、14年6月執行役員樹脂事業本部長、15年4月執行役員樹脂事業部長、16年4月上席執行役員樹脂事業部長、19年4月常務執行役員繊維事業本部長兼特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長、20年4月常務執行役員特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長