2020年秋季総合特集Ⅳ(15)/新型コロナ禍と検査機関

2020年10月29日 (木曜日)

 新型コロナウイルス感染症の拡大は検査機関にも影響を与えた。当初は中国での感染拡大の混乱が大きかった。その後もASEAN地域や南アジアへと感染は広がった。現在は中国の回復が最も早い。下半期(2021年3月期)に向けてどう取り組むか。

〈日本繊維製品品質技術センター 理事長 山中 毅 氏/機構改革で営業強化/BCP活動も推進〉

  ――新型コロナ禍が影響しています。

 大変でしたが、いい勉強にもなりました。その中には新たな発見もありました。例えば3月末から始めたBCP(事業継続計画)活動です。政府は4月中旬、全国に緊急事態宣言を発令しましたが、地震や災害時の備えとしてそれ以前からBCPを考えていました。週2回、BCP本部会議を開き、その結果をホームページでも公開しています。これにより“情報共有、共通認識”が進みました。企業体としての経営体制に手応えがありました。

  ――どのような内容ですか。

 適切な事業継続を図ることを基本に、より公共性や緊急性が高いものから順次対応し、職員や取引先の安全を最優先にした感染防止策を講じています。何をしたらいいのか、何をしてはいけないのかを職員に具体的に示しました。現在まで、海外を含めて感染者は一人も出ておりません。対策を徹底した職員にも感謝しています。

  ――新型コロナ感染予防対策の課題は。

 「健康経営の促進」も経営方針の一つです。ストレスチェックだけでなく、職員の不安をくみ取れるものに整備していくことも重要です。秋に日頃直接業務に関係がない職員がインタビュアーになるクロス面談を行います。大阪のスタッフが、東京のスタッフを面談して思いを吸い上げるといった形で、面接者もコーチング手法を活用します。

  ――新型コロナ禍は業績にも影響した。

 4~5月は試験依頼が減りましたが、6月以降は回復の兆しがあります。とはいえ、衣料需要は元の量に戻ることはないでしょう。プロパー販売を重視し、無駄なものは作らないといった基調は続きそうです。こうした変化を受け、1日に機構改革を行いました。

  ――というと。

 顧客や市場ニーズに迅速に対応し、施策実行のスピード化を図るため、営業部門の組織変更を行った。国内営業業務は東日本事業所、西日本事業所を新設し、これに海外事業所を加え、営業部門は3事業所体制です。東部事業所は東京試験センター、中部事業所は名古屋試験センター、西部事業所は大阪試験センター、中四国試験センターは四国試験センターに改称しました。好調の神戸試験センターを増員し、抗菌・抗ウイルス試験に対応していきます。衣料品にとどまらずメディカルや、プラスチック分野の企業とも交流しています。

  ――海外事業は。

 それぞれのミッションを遂行します。上海、無錫、南通の華東3拠点の連携を強化します。上海総合試験センターはサービスの充実を図るため、閔行区虹中路に移転しました。ダッカ試験センターは、リモート対応が人材育成につながりました。現地スタッフへの権限移譲を進めます。

〈ニッセンケン品質評価センター 理事長 駒田 展大 氏/ビジネスモデルの転換を/問題解決能力の向上図る〉

  ――新型コロナ禍で検査機関はどう変化しますか。

 ビジネスモデルを変えないといけなくなりました。検査機関は約70年の歴史がありますが、試験をして報告するといった業務を繰り返してきました。ある面で構造不況業種です。新型コロナ禍でそうした現実が如実に見えてきました。衣料向けの単純な試験だけでは事業継続が難しい。需要が伸びそうで、かつ得意な分野を深堀りすることが重要です。

 ニッセンケンとしてはサステイナビリティーに直結した認証や検査です。抗菌性や抗ウイルス性試験は家電分野などでも求められています。そうした需要にも応じていきます。

  ――アパレル業界もコスメティックなどの分野に進出しています。

 厚生労働省登録検査機関として、化粧品などの定量試験も実施しています。新型コロナ後は衣料生産も減っていくでしょう。

 消費者にも無駄なものは買わないという動きがある。試験でも伸びる分野と伸びにくい分野があります。採算性をしっかり見ていくことも大事で、事業の見直しが必要でしょう。来年度に向けて5年、10年を見据えた中長期的な計画の策定も検討しています。

  ――エコテックス事業は新型コロナ禍でも順調でした。

 エコテックススタンダード100認証だけでなく、素材の安全性や生産地を示せるトレーサビリティー証明「メイドイングリーン」などにも関心が高まってきました。コロナ後はこうしたサプライチェーンの安全性のトレーサビリティーが重視されるでしょう。

 とはいえ、内外とも厳しい環境が続いており、減収でも利益を出すにはどうしたらいいのか。体制の見直しも必要です。

  ――というと。

 昨年からコストや原価など数字の管理を強化しています。数字が見えてこないと、次に打つべき手も分からない。コスト意識、営業の考え方も変えないといけません。

  ――上半期は厳しかった。

 国内は2割減近い減収でした。海外事業所は中国を中心に回復傾向にありますが、まだ元に戻っていません。

  ――インドやバングラデシュは現在も感染が拡大している。

 インド、バングラデシュともにリモートで管理しています。ナショナルスタッフも成長し、現地化が進んでいます。中国もウェブを利用してコミュニケーションをとっています。

  ――下半期の課題は。

 コロナの収束は見えませんし、コロナ後も元には戻りません。営業体制など来期以降に向けて今できることを進めるとともに、中長期的視点で方向性を打ち出すことが必要です。ソリューション能力の向上にも注力していきます。

〈ボーケン品質評価機構 理事長 吉田 泰教 氏/品質サポート業務を強化/医・食・住 重点分野に〉

  ――2020年度上半期(4~9月)は新型コロナ禍で検査機関にとっても厳しい環境となりました。

 当機構は現在、繊維、生活産業資材、認証・分析、機能性、海外の5事業本部制で業務に当たっていますが、特に繊維事業は新型コロナ禍による衣料品の生産・販売停滞で試験依頼が大きく減少しました。生活産業資材事業も生活用品を中心に依頼件数が落ち込みました。

 一方、機能性事業は抗菌や抗ウイルスなど衛生機能性試験の依頼が急増しています。抗菌性試験は東京、大阪、上海の各試験センターが、抗ウイルス性試験は大阪の試験センターが担っていますが、それぞれ検査能力を数倍以上増強しています。これまであまり衛生関連の加工や機能素材を扱っていなかった企業からの依頼も増えています。このため品質サポート課を中心に試験方法や評価基準に関する相談など、さまざまな品質管理業務に対応しています。商品開発パートナーとして商品企画段階から品質管理支援するケースも増えています。オンラインセミナーも開催し、抗ウイルス性試験に関する情報発信も行いました。コンテンツや依頼企業の課題解決ルールの開発が一段と重要になっています。

  ――繊維産業はどのように変化し、ボーケンとしてどのように対応するのでしょうか。

 やはり衣料分野を中心に量的減少は避けられないでしょう。そうなると、試験の対象サービス・市場・分野を拡大するしかありません。衣料分野に加えて、生活用品や産業資材の重要性が高まります。海外拠点でも試験対象を雑貨などに広げており、中国内販に取り組む企業に対して表示方法のアドバイスなど支援にも取り組んでいます。当機構が開発した試験方法がJIS(日本産業規格)だけでなくISO(国際標準規格)や中国のGB(国家標準)に採用されるケースが増えているように標準化でも役割を果たしていきたい。そのために試験方法の自動化の開発などを進めています。既に画像診断による形態安定加工生地のシワ評価やペプチド法による獣毛鑑別など開発しました。未来研究所でITを活用した開発を進めており、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みも進めています。

  ――今後の戦略は。

 従来の衣に加えて、医・食・住を重点分野として取り組みます。まずは抗菌・抗ウイルス試験に力を入れます。マスクや防護服などに関連する試験対応にも取り組みます。その上で食や住といった新規分野・事業の開拓に取り組まなければなりません。品質サポートや商品企画サポートといった業務も強化しています。取引先の皆さんにお役に立てる価値創造型業務へと転換することが新しいボーケンの戦略です。