ユニフォーム総合特集(8)/素材・副資材/さまざまな機能に光が当たり始める

2020年11月13日 (金曜日)

 日本の素材・副資材メーカーは、抗菌・抗ウイルス、制電、防汚など高機能な生地や加工、付属品などの開発にたけていたが、あまり認知されていない面も少なくなかった。しかし、ユニフォーム流通による一般ユーザー向け市場開拓の加速や、新型コロナウイルス禍で引き起こされた抗菌・抗ウイルス商品への注目の高まりで、ますます高機能な素材、資材へも光が当たり始める。

〈東レ/抗ウイルス「マックスペックV」開発〉

 東レは「2020年 東レユニフォーム総合展」を10月28日~11月6日、ウェブ上の特設サイトで開催。8コーナーを設け戦略素材をPRした。

 優れた洗濯耐久性、着用快適性が特徴の抗ウイルス素材「マックスペックV」をこのほど開発した。来年1月からポリエステル100%の織物、ニットで投入し22年度で30万メートル、25年度で100万メートルの販売を計画する。

 繊維評価技術協議会によるエンベロープ型ウイルスに対する抗ウイルス性認定を取得している。既にA型インフルエンザへの効果を確認しており、新型コロナでも確認作業を進めている。

 19年度は東京五輪・パラリンピックに向けた企業別注の更新需要が旺盛だったほか、電動ファン(EF)付ウエア向け織物、使い切りの防護服「リブモア」、エコ素材群の販売が好調で「業績は前年を上回った」。

 20年度は新型コロナ禍の影響で「先行きは厳しい」と懸念しているものの、引き続きEFウエア向けやリブモアを拡販。近々、リブモア新タイプの販売を立ち上げる。

 エコ素材では、回収循環型の取り組み「サイクリード」、ケミカルリサイクルナイロン、再生ポリエステル「&+(アンドプラス)」「エコユース」、部分バイオポリエステル「エコディア」という多彩なラインアップで対応。企業別注から注目を集めており、エコディアがヤマトホールディングスの新制服に採用された。

〈東洋紡STC/「ナノバリアー」に多くの引き合い〉

 東洋紡STCは2019年度、備蓄ワーキング向けが苦戦したものの、企業別注で大型案件を取れたことから「ユニフォーム全体としては堅調だった」と言う。

 しかし、20年度に入って下半期以降、新型コロナウイルス禍による影響が顕在化してくるとみており、新型コロナ禍に伴い引き合いを集める抗ウイルス素材「ナノバリアー」を打ち出すとともに高機能ニット「Zシャツ」などで拡販を計画する。

 ナノバリアーでは、このほど工業洗濯耐性を持たせた新タイプを開発。加工剤を繊維により強く固着する新しい技術を通じ、工業洗濯を50回繰り返しても繊維に付着したエンベロープ型ウイルスを99・9%以上減少させる効果が持続するという。

 医療施設用ユニフォームやワーキング、スクールシャツ、寝具の側地やカバーなどの生活資材用途に投入し、22年度で30万メートル、25年度で100万メートルの販売を計画する。

 高機能、快適な着心地が売りのZシャツ、「Eシャツ」はカジュアル過ぎない質感が受け入れられ、テレワーク普及に伴う在宅需要などを背景に好調な販売を続けており、20年度も拡販に手応えを強めている。

 12月8~11日に東京で、同14~17日に大阪でグループ総合展の開催を計画しており、来シーズン向けのプロモート素材群を打ち出す。

〈帝人フロンティア/素材力を成長の原動力に〉

 帝人フロンティアのユニフォーム部は、新型コロナウイルス禍という逆風下で販売を伸ばしている。ワークウエアやオフィス、サービス分野が勢いを欠いているが、企業別注や病院白衣などが比較的堅調な動きを維持している。販売を支えているのが素材力だ。

 同部の2020年度上半期(4~9月)の販売は、企業別注の伸長などが寄与して前年を上回る水準で推移している。門脇秀樹ユニフォーム部長は「人員配置の工夫や生産拠点の拡充に加えて、素材力が顧客に評価された」と健闘した要因を分析。その上で「まだまだシェアは小さい。積極提案を続ける」と強調した。

 秋冬向けでは「エルゴライト」、春夏向けでは「エアーインプレッション」の展開に注力している。エルゴライトはマルチ糸を高密度に織り上げて軽量・保温・防風を実現。エアーインプレッションは高通気や吸汗速乾などの特徴を持つ。

 環境に配慮した素材もラインアップし、再生ポリエステルの「エコペット」、植物由来原料を使った「プラントペット」などを投入している。

〈インビスタ「コーデュラ」/デニムや補強など拡大〉

 インビスタジャパンは高耐久素材「コーデュラ」で、ユニフォーム用途の開拓を進めている。優れた耐久性を武器に「コーデュラデニム」やレインフォースメント(補強)、ポリウレタン混、ニットの「コーデュラベースレイヤー」などの採用が増えている。

 ワークウエアでデニムトレンドが続く中、日本市場向けにストレッチ性を持たせたコーデュラデニムの開発が奏功した。デニムが市場に定着する中で、破れなどの問題も出てきており、耐久性の高いコーデュラデニムへの注目が高まっている。

 レインフォースメントは副資材商社の島田商事と定番生地の備蓄販売を始めたことも拡大に寄与。義務化されたフルハーネスに対応した補強用としても採用が増えた。

 ポリウレタン混は従来、スポーツやアウトドア向けだったが、ナイロンのしっとり感と接触冷感が受け、ワークウエアでも拡大している。

 コーデュラベースレイヤーは、ワークウエアアパレルのTシャツやポロシャツなどに採用さている。さらに、プリンタブルウエアのトムス(東京都渋谷区)と取り組みワーク以外の用途へも広げていく。

〈クラボウ/注目高いIEC対応制電生地〉

 クラボウは電気・電子技術分野の国際規格であるIEC規格に対応した高制電素材「エレアース」を開発し、このほど開催した展示会でも大きな注目を集めた。新型コロナウイルス禍を契機に抗菌・抗ウイルス機能繊維加工技術「クレンゼ」を導入した防護ガウンへの引き合いも増加している。

 ユニフォーム素材展には当初予想を上回る来場があり、特にエレアースへの注目が高い。近年、さまざまな分野の製造業で電子デバイスを取り扱う頻度は高まっており、特に家電や自動車関連ではサプライチェーン全体でユニフォームにIEC対応制電生地を使用することが取引条件となるケースも出てきた。こうした中、ポリエステル綿混生地としては業界初となるIEC規格対応を実現したことで、新たな市場を創造する生地として提案を進める。

 「クレンゼ防護ガウン」は医療用ガウンに求められる防水性の基準である米国医療機器振興協会(AAMI)基準のレベル1に対応する。感染症以外の医療・介護現場で使い捨て防護ガウンに代わって使える防護ガウンとして引き合いが多い。

 耐摩耗性・引き裂き強度に優れる「タフコットン」も注目のユニフォーム地。フルハーネス対応作業服や電動ファン付きウエアなど従来以上に生地の耐久性が求められるアイテムが増えている。

 エレアースやクレンゼ防護ガウンなど市場創造型提案の推進と、タフコットンなど高付加価値品の積極投入でユニフォーム地の需要掘り起こしに取り組む。

〈シキボウ/抗ウイルスからサステまで〉

 シキボウはユニフォーム地でも得意の抗ウイルス加工やサステイナブル原料を活用した商品を多彩に提案し、新型コロナウイルス禍の下での社会的要請に応えることを目指す。

 新型コロナ禍を契機に抗ウイルス加工への注目がより高まっていることから、ユニフォーム用途でも抗ウイルス加工「フルテクト」の普及を目指す。そのため工業洗濯にも対応した高耐久タイプも開発した。ユニフォーム地として実績豊富な校倉(あぜくら)造構造織組織高通気生地「アゼック」にフルテクト加工を施したタイプなども用意する。

 抗ウイルス加工だけでなく衛生加工全体への注目も高まっていることから、制菌加工生地「ノモス」などの提案にも力を入れ、需要の掘り起こしに取り組む。

 サステイナビリティーの追求も一段と重要になった。このため再生ポリエステルだけでなく、燃焼時の二酸化炭素発生量を抑制する特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」を使ったユニフォーム地の提案を進め、最終処理の際の環境負荷低減にも貢献する。オフコナノは従来の短繊維だけでなく長繊維も用意するなど汎用性が高まった。

 そのほか、ユニフォームでもファッション性への要求が一層高まることを受けて、特殊紡績糸によるメランジ調生地「マザリト」など独自性の高い商品の提案を進める。

〈モリリン/今後は機能性の打ち出しも〉

 モリリンは原着ポリエステル長繊維糸「モコフィーロ」の提案に力を入れている。5千色という豊富なカラーバリエーションをはじめとしたさまざまな特徴だけでなく、今後は難燃や制菌、高視認といった機能性も打ち出す。

 モコフィーロは韓国で7月に竣工した新工場、モリリンファイバーコリアで生産する。多彩なカラーバリエーションのほか、色の再現性に優れ小ロットにも対応。従来の原着糸では困難とされてきた杢(もく)調の糸も表現できる。

 サステイナビリティーを実現していることも特徴の一つ。原着糸であることから染色工程を経ないため、水や薬品、二酸化炭素の使用量を削減できる。サステイナブルな差別化素材として提案を進める。

 今後は機能材を練り込み機能性を付与した新商品のモコフィーロも展開する方針だ。山田敏博繊維資材グループ統括部長は「ユニフォーム事業として差別化を進めていく上でファンクション(機能)は重要な要素になるだろう」と語った。

 モコフィーロは夏ごろから本格生産を始め、初年度は1200トンの生産計画を立てている。

〈ディスカバーリンクせとうち/デニムのワークウエア再生へ〉

 「尾道デニムプロジェクト」など、地域活性化事業を行うディスカバーリンクせとうち(広島県福山市)は、モノ作りの現場で着用された後、役目を終えたユニフォームを再利用した素材を使って新たな製品としてよみがえらせる「リクロー」プロジェクト(PJ)を10月に発足した。同PJを通じて、産地型サーキュラーエコノミー(循環型経済)のプラットフォームになることを目指す。

 同社は、同県尾道市内の溶接や漁業など、さまざまな仕事に携わる人がはき込んだジーンズを“リアルなユーズドジーンズ”として販売する尾道デニムプロジェクトを2013年に開始。衣料OEM事業部でノウハウを蓄積してきた。この二つの事業をさらに深化させるものとして、リクロープロジェクトを立ち上げた。

 第1弾として、常石造船(福山市)が17年に刷新した、デニム製造のカイハラ(同)のデニムを使ったユニフォーム約1800着を回収し、新たな製品に再生する。ディスカバーリンクせとうちの黒木美佳企画生産部マネジャーは「地域企業とアイデアを出し合いながら、服飾に限らずさまざまな製品を開発していきたい」と話す。

 デニムのワークウエアはトレンドになりつつあるが、再利用し新たな製品を作る試みは珍しい。SDGs(持続可能な開発目標)やサステイナビリティーへの対応が求められる中で注目が高まりそうだ。