クラレ クラリーノ事業/環境配慮型を重点投入/来年から車両内装向け本格化

2020年11月24日 (火曜日)

 クラレは人工皮革クラリーノ事業で、環境配慮型素材の拡販、市場浸透に重点的に取り組むとともに自動車向けの販売を近々、本格化させ、同用途を柱用途の一つに育成する。中国では合弁企業のヘーシンクラレで増設を進めており、「2021年中にフル稼動させられる」(中村育雄執行役員クラリーノ事業部長)との手応えを示す。

 クラレは環境配慮型のエコ素材として有機溶剤を使用しない銀付き「クラリーノ―TN」、再生ポリエステルによる銀付き「同―SR」、再生ナイロンによるスエード「同―NR」を構えている。いずれでもRCS認証を取得済み。

 20年から本格販売を開始。欧州で市況低迷が続いているものの、最近のビーガン志向の高まりも重なり「スポーツ向けの販売をTNやSRがけん引している」と言う。

 NRは来年から投入することにしており、2~3年かけてバイオマス原料によるクラリーノも完成させたいとしている。

 自動車向けでは、既に銀付きでカーシート向けのクラリーノを完成させており、国内外で来年発売されるニューモデルに搭載されることになっている。

 米国、欧州、中国といった海外を中心とする造面メーカーにクラリーノの生機を販売し、造面メーカーが車両内装材向けに展開する取り組みに以前から力を入れてきており、今後もパートナーとの連携を強化し車両内装材での拡販を計画する。

 美術印刷のNISSHA(京都市)とはNISSHAのインサート成形技術との融合で高い質感、美しさを兼ね備えた「マテリアルインサート」を共同開発した。

 自動車内装材やライフスタイルに調和する外装が求められているコンシューマー・エレクトロニクスなどの用途を掘り起こす。

 中国のヘーシンクラレは、4系列による年産1600万平方メートル体制に2系列を加え年産2800万平方メートルに引き上げる増設工事を進めている。

 一時期、新型コロナ禍によって苦戦していたが、夏ごろからフル操業へと回復させている。いち早く中国国内の市況が回復したほか、当局が環境規制を強化するのに対応できない中小の事業者が淘汰(とうた)されているためとクラレは分析している。

 ヘーシンクラレでは現在、試運転に取り組んでおり、中国市況が現状のまま推移するのであれば、21年いっぱいをかけて新設備をフル操業させられるとみている。