LIVING-BIZ vol.65(2)/特集 寝具寝装21春夏・モノ作り/東洋紡「ブレスエアー」/過去最高並みの販売量へ/21年に生産能力倍増計画

2020年12月16日 (水曜日)

 東洋紡のクッション材「ブレスエアー」の販売が好調だ。2021年3月期は、過去最高並みの販売量が視野に入る。21年に新設備を導入し、生産能力を倍増させる計画で、事業の幅を広げる。

〈一般寝具向け好調/新幹線最新鋭車両に採用〉

 ブレスエアーは、同社の熱可塑性ポリエステル系エラストマー「ペルプレン」を網目状にした3次元スプリング構造体で、軽量・高反発、耐久性、通気性、透水性などの特徴を持つ。簡単に洗うことができ、すぐに乾くため、清潔な状態を容易に保つことができる。

 用途は寝具、インテリア、自動車や列車の車両シート、土木・産業資材などに広がる。今期は、新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要で、一般のマットレス向けが好調に推移する。「免疫力を高める睡眠が再度注目されており、眠りの質を高めるマットレスへの関心が高まっているようだ」(森島淳・繊維機能材事業総括部生活資材事業部事業部長)と追い風も受ける。

 列車用途は、7月にデビューしたJR東海道新幹線の最新鋭車両のN700Sのシート、5月に東武鉄道のTHライナーのシートにそれぞれ採用された。

〈防ダニ機能付与/サステ対応進める〉

 ブレスエアーは1996年に販売を始めたが、順風満帆だったわけではない。18年9月には、敦賀事業所第二で起きた火災でブレスエアーの生産設備を焼失。19年秋に新設備を導入して再稼働した。「1年以上止まったが、現在はフル稼働。パートナー企業には感謝の言葉もございません」(森島事業部長)と話す。

 現在、「2号機を新設する準備を進めている」とし、来年の導入で生産能力を倍増させる計画だ。新商材への対応を見据えた設計や省力化で、さらなる展開へつなげる。

 重点取り組みに挙げる高機能・高付加価値化では来春、防ダニ機能を持つブレスエアーを提案する。鉄道車両シート用途では難燃剤を練り込んだ難燃性ブレスエアーなどがあり、機能性の展開を広げる。

 敦賀事業所の操業が停止している中でも、新たな素材を市場へ投入できるように、大津市にある同社の総合研究所に設けた小型紡糸機を使って研究開発を続けてきた。病院向けに抗ウイルス機能を持つ商材の研究も進める。

 サステイナブル対応も重視する。ブレスエアーは耐久性があり長く使えるサステイナブル素材だが、製品のリサイクルの研究も始めた。

 省力化や物流対策などの事業体質強化、海外展開にも力を入れる。海外展開は、ASEANと欧州の2地域へのアプローチを進める。

 車両用シート向けでは、名古屋市で10月に開かれた展示会「第3回 名古屋クルマの軽量化技術展」に東洋紡グループで出展。グループの技術や素材を使ったコンセプトカーシートやコンセプトカーなどを紹介し、自動車産業のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)や環境配慮に沿った製品を訴求した。

 シートはブレスエアーや伸縮性織物「ダイヤフローラ」、子会社である東洋クロスの合成皮革「パーミア」を組み合わせて製作。通気性やクッション性などの特徴を生かし、快適なシートを提案した。

 グループの素材や技術を内装と外装合わせて50点以上使用したコンセプトカー「マニプレーラー」も提案。ブレスエアーの特徴も生かし、内装の“快適空間の演出”と外装の“安心・安全の提供”を両立させた次世代自動車の高機能化を提案する。

〈JIS化で客観評価可能に〉

 ブレスエアーを含む熱可塑性3次元網状繊維構造体の機能性を評価できる試験方法、評価区分などを規定するJIS規格「規格番号:JIS L 4500:2020」が20年3月に公布された。

 これまで熱可塑性3次元網状繊維構造体の機能性を評価する共通の規格がなかったが、JIS化で繊維、反発弾性、耐久性などで区分された客観的な評価が可能になった。

 経済産業省が14年に創設した制度「高機能JIS」に基づき、日本化学繊維協会がJIS原案策定委員会を組織し、JIS原案を策定していた。