使用済み綿製品をリサイクル/反毛からケミカルリサイクルまで/再利用へ技術革新加速
2021年01月18日 (月曜日)
近年、サステイナビリティーへの要求が高まる中、繊維製品のリサイクル・アップサイクルの重要性が一段と増している。ここに来て使用済み綿製品を原料として再利用するための技術革新が加速してきた。サステイナブル素材としての綿への注目がよりいっそうと高まる可能性がある。
(宇治光洋)
綿製品のリサイクルとして一般的なのが反毛による紡績原料としての再利用だろう。この方法を進化させているのがクラボウの「ループラス」。縫製工程で発生する裁断くずを反毛し、紡績糸へと再生する。現在、エドウインなどアパレルと連携して普及に向けた取り組みが加速する。
反毛など機械的手法によるリサイクル・アップサイクルに加えて、化学的手法で綿の主成分であるセルロースを再資源化する技術革新も加速してきた。例えばダイワボウレーヨンは、スウェーデンのパルプ関連ベンチャー企業と連携して、使用済み綿製衣料や裁断くずなどを化学的に溶解・再生して生産するレーヨン短繊維「リコビス」を開発した。
海外でもレンチングがグローバルSPAと連携して裁断くずなど廃棄綿布を精製セルロース繊維「テンセル」に再生した「テンセルリフィブラ」を実用化した。消費者が使用した綿製品の廃棄物を原料として再利用した量産技術も確立している。
こうした中、新たな取り組みをスタートさせたのが日清紡テキスタイル。このほど日清紡ホールディングスの新規事業開発本部、信州大学繊維学部の木村睦教授との共同研究で、使用済みの綿製ドレスシャツを再生セルロース繊維の原料として再利用する「シャツ再生プロジェクト」が始動した。
使用済の綿製シャツを裁断し、イオン溶液でセルロースを溶解・抽出したものを再生セルロース繊維として紡糸する。既にラボレベルではビスコースレーヨンよりも高強力な再生セルロース長繊維の紡出に成功した。2021年3月から実用化に向けた開発を本格化させ、22年3月にはパイロットプラントの建設に着手する予定。早ければ23年4月から試験生産を開始する。
これまで使用済み繊維製品のケミカルリサイクルは主にポリエステルなど合成繊維の領域で普及してきたが、ここにきて綿製品などセルロース繊維でも実用化に向けた動きが加速する。
綿の主成分であるセルロースは地球上に最も豊富に存在する炭水化物(多糖類)であり、繊維素とされる。生分解性があるため、合成繊維のようにマイクロプラスチックとなって自然環境を汚染する懸念も小さい。このためサステイナブル素材として綿や再生セルロース繊維への注目が高まっていた。
そうした中でセルロース繊維のケミカルリサイクル技術が確立すれば、サーキュラーエコノミー(循環経済)も可能になる。サステイナブル素材として綿などセルロース繊維の存在感が一段と高まりそうだ。