激変にどう対応する アパレルトップインタビュー2021(3)/三陽商会 社長 大江 伸治 氏/事業構造改革が進捗/「再生プラン」達成へ自信

2021年01月20日 (水曜日)

  ――昨年を振り返ると。2022年2月期の営業黒字化を目指す「再生プラン」を発表した。

 昨年3月に副社長として三陽商会へ入社し、5月の株主総会後に社長となった。が、新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の事態に直面した。一方で、経営再建のベースとなる「再生プラン」については、想定を超える進捗(しんちょく)になっている。今期(21年2月期)を黒字化へのトランジション(移行期)として位置付け、新型コロナ禍におけるダメージコントロールと事業構造改革を粛々と進めている。

  ――事業構造改革の進捗は。

 本部と現場の危機感もあり、販管費の圧縮は想定よりも進んでいる。今期と来期の2期で40億円の削減を計画していたが、今期だけで50億円を削減できそうだ。具体的には不採算だった約150店舗を閉鎖し、人件費や閉鎖に伴う店舗関連費も削減できた。

 在庫削減については、今年2月末の時点で約33億円減少する見込みだ(20年2月末との比較)。MD精度を上げ、商品仕入れを抑制した効果も出ている。粗利益率の改善も第3四半期(20年3~11月期)まではほぼ計画通り。第3四半期までを総括すると、前売りは計画通りで事業構造改革は想定を上回った。

  ――直近の売り上げ状況は。

 昨年11月後半から新型コロナの第3波で重衣料の売り上げが落ち込んでいる。しかし、今期の売上高380億円、営業損失85億円、純損失35億円という最終防衛ラインは死守する。11月までは強気に構えることもできたが、第3波の影響で予断を許さない状況だ。

  ――電子商取引(EC)は好調だ。

 ECは前年比30%増のペースで推移している。自社ECの「サンヨー・アイストア」も堅調で通期のEC化率は20%弱(外部EC含む)になる見通しだ。当社のEC戦略は、実店舗を補完する形で展開している。あくまでも実店舗が基軸で、この位置付けは変えない。両チャネルを連動させながら消費者への利便性、購買体験を提供する。

  ――昨年から直営店を強化している。

 新たに開設した直営旗艦店「ポール・スチュアート青山本店」は好調で、新規顧客を開拓している。既存ブランドのブラッシュアップという意味でも直営店の役割は大きい。さらに直営店の運営開発部を立ち上げ、英国ブランド「マッキントッシュ・ロンドン」でも出店調査を行っている。

  ――今後の施策については。

 デジタル戦略でECのタスクフォースを組み、自社・外部ECの見え方、系統性を再考している。パッチワーク状に広がったECをまとめた方が良いのか、そのあたりも考えたい。三陽商会にはこれだけのブランド資産がある。しかし規模を求め過ぎた。ブランドイメージが希薄になれば消費者は振り向かない。個性や運営体制を含め、強いブランドを構築する。付随して、当社がターゲットとするアッパーミドル市場がどうなるのか、さまざまな角度から分析を行っている。