産資・不織布通信(58)/東レ フッ素繊維/摺動性や耐熱性で活躍

2021年01月25日 (月曜日)

 東レの「トヨフロン」は、合成繊維の中で最高レベルの摺動性(滑りやすさ)と耐熱性、耐薬品性、離型性を備えるフッ素(PTFE)繊維だ。低摩擦性に優れるフッ素樹脂を独自の製糸技術によって繊維化し、ばらつきのない均一な繊度を持つ丸断面を実現した。工業分野を中心に幅広い用途で使われている。

 同社がトヨフロンの販売を始めたのは1964年で、2002年には米国の化学メーカー、デュポン社のフッ素繊維(「テフロン」)事業を買収した。日本で唯一のフッ素繊維メーカー(製造は東レ・ファインケミカルの松山工場)であるとともに、米国のトーレ・フロロファイバーズ〈アメリカ〉でも生産している。

 フライパンなどにも使われているフッ素樹脂を、マトリックス紡糸法という技法で繊維化している。技術的には単糸繊度1・5デシテックスという細繊度糸の生産(量産は3・3デシテックス)が可能だ。フィルムを割繊したタイプのフッ素繊維も展開されているが、繊度や均一性などで大きな差が出ると言う。

 耐熱性や耐薬品性などの特徴から、バグフィルター用途を軸としていたが、OA機器などがメインになっていく。複合機などの内部(トナー周り)には回転体があり、トヨフロンの摺動性が生かせるためだ。ただペーパーレス化や新型コロナウイルス禍による在宅勤務の浸透でOA機器分野も厳しさは増している。

 そのほかでは自動車のサスペンション周りなどで採用が進む。低速高荷重に強く、近年は免震用途で使われるケースも目立ってきた。米国では重機や農機にも用いられている。糸だけでなく、織・編み物やフェルトなどの高次加工品でも提供できるオールマイティーな合成繊維と言え、用途も着実に増えている。

 トヨフロンの特徴・特性が生かせる分野はまだまだあると捉え、探索を続ける。耐熱性は必要ないが、耐薬品性と摺動性がいる用途もあれば、耐熱性と摺動性が求められる用途もあり、分野を絞ることなく開拓を図る。厳しい条件下で使われることも多く、性能の高さで優位性を発揮できるとみる。

 日本や欧米、中国市場などでの拡販に重きを置くが、フッ素繊維自体の認知向上が課題になる。ホームページを刷新して「このような特性を持った面白い繊維がある」とアピールする。日本と米国の2極から供給できるという「東レグループならではの安心感も顧客に伝えていく」とした。