東レ PA6樹脂/疲労耐久性が15倍の新規ポリマー開発/従来物性を維持したまま

2021年01月26日 (火曜日)

 東レはこのほどポリアミド6(PA6樹脂)が持つ高い耐熱性、剛性、強度を維持しながら、繰り返し折り曲げ疲労耐久性を従来の15倍まで飛躍的に向上させた新規ポリマー材料を開発した。自動車や家電製品、スポーツ用品といった耐久疲労性が必要な用途に広く展開することが期待できるといい、2021年からの本格的なサンプルワーク開始を目指す。

 PA6樹脂は優れた耐熱性、剛性、強度を持つエンジニアリングプラスチックで、自動車のエンジンルーム内部品や家電製品の筐体(きょうたい)などに使われてきた。

 同樹脂に疲労耐久性を持たせるためには柔軟なエラストマーを配合するが、疲労耐久性を向上させると耐熱性、剛性、強度が低下するトレードオフの関係があり、同樹脂の特性を維持しつつ優れた耐久疲労性を持った材料の開発が長年の課題だったという。

 同社は外力が加わったときに稼働可能な構造を持つポリマーとして分子結合部がスライドするポリロタキサンに注目。ポリロタキサンを同樹脂中に均質に微分散化することで同樹脂の特性と疲労耐久性の両立を目指した。

 同社独自のテクノロジーであるナノアロイによる精密アロイ制御技術を駆使し、同樹脂中にポリロタキサンを最大限の効果発現が期待できるPA6結晶構造サイズの数10ナノメートルに微分散化することに成功した。

 今回、開発した製品では、外力を受けたときに同樹脂の結晶構造変化が抑えられることを確認しているという。今後、自動車、家電製品、スポーツ用品などへの用途展開を進めるとともに、繰り返し折り曲げが要求される部材のような新規用途開拓にも力を入れる。