クローズアップ/東レ 不織布・人工皮革事業部門長 西村 誠 氏/エコタイプスエードを90%に

2021年01月27日 (水曜日)

 2020年度から新しい中期経営課題をスタートさせた東レ。初年度で新型コロナウイルス禍に見舞われ苦しいスタートとなってしまったが、不織布・人工皮革事業部門は既に反転に向けた手応えを強めている様子。西村誠部門長に21年度以降の戦略を聞いた。

  ――20年度上半期の状況は。

 紙おむつ向けが主力のポリプロピレン(PP)スパンボンドでは、紙おむつの需要が頭打ちに転じていましたが、新型コロナ禍によるマスク需要の急増で全体としては玉不足気味でした。海外では、稼動開始が遅れた中国・仏山のTPFでしたが昨年の春以降、フル操業を続けています。インドのTIDもスタートが10月にずれ込みましたが、垂直的フル操業を達成しています。ポリエステル「アクスター」では工業用フィルター向けが多少、下振れ気味です。

  ――「ウルトラスエード」は自動車内装材に多くを依存している。

 一時は大苦戦に陥りました。しかし、4~6月期で全ての用途が落ち着きを取り戻しています。7~9月期から、特に内装材の中国や北米向けが回復し、かなり挽回させることができました。工業材料は相対的に堅調ですが、ファッションが変わらず低調なまま推移しています。

  ――PPではアジアのトップメーカーに上り詰めました。

 現在は全拠点がフル操業を続けており、予算を大きく上回る状況です。しかし、マスク需要に以前ほどの勢いが感じられません。この間、マスク換算で月産1億枚体制を構築しました。が、今後は実需を見据えた生産を徹底します。紙おむつ向け原反の品質安定、トップゾーンでのシェアアップ、コストダウンのためのプロセス開発が当面のPPスパンボンドにおける課題です。

  ――アクスターの見通しは。

 PLA原反による新規用途の開発に改めて力を入れていきます。それと、現中計の期間中に「アクスター」の増産を計画しています。

  ――「ウルトラスエード」は相対的に堅調のようだ。

 既に下半期から巡航速度を取り戻しています・この間、再生ポリエスエルやバイオ原料によるエコタイプの拡販に重点的に取り組んできました。現状のエコ比率は60%前後です。これを、現中計を通じ90%に引き上げていくつもりです。新型コロナ禍によって中計の進捗(しんちょく)が半年遅れになってしまいました。21年度の早いタイミングで部門全体を巡航速度に回復させるのが最大のミッションだと考えています。