クローズアップ/ユニチカ 上席執行役員 機能繊維事業副本部長 兼不織布事業部長 吉村 哲也 氏/成長戦略の策定急ぐ

2021年03月02日 (火曜日)

 ポリエステルスパンボンド、コットンスパンレースを展開するユニチカの不織布事業部。開発を強化してきた独自素材の販売が相次いで滑り出しており、一方でアフターコロナをにらんだ成長戦略の検討にも着手した。吉村哲也事業部長に不織布事業の中期戦略を聞いた。

  ――新型コロナウイルス禍に翻弄(ほんろう)された1年だったのでは。

 自動車関連資材や建材が新型コロナ禍の影響で大きく落ち込みました。一方で、アイソレーションガウンのような特需が発生し、スパンボンド、スパンレースの販売を伸ばすことができました。しかし、プラスマイナスをトータルすると、当事業部の売り上げは前年を下回る見通しです。

  ――湿潤養生シート「アクアパック」のような独自素材の開発が相次いでいる。

 アクアパックはコンクリートの品質を向上させるだけでなく作業性に優れているため、ゼネコンからの引き合いが相次ぎだいぶ市場に浸透してきました。いずれは輸出も手掛けたいと考えています。

  ――ほかにも高機能原反を打ち出している。

 「ディラ」は世界一太い糸を使ったスパンボンドです。圧力損失を上げることなく捕集効率を維持できるため、フィルター用途を中心に広がりつつあります。抗ウイルス、抗菌、防ダニなど六つの機能性を持たせた「ユニダイヤ」もさまざまな用途で使われ始めました。

  ――1月のオートモーティブワールドに出展した。

 プラスチックのような硬い板状のスパンボンド「マリックスAX」シリーズを出展しました。開発に2~3年かかりました。各種モビリティー向けの外装部材、防災グッズなどの用途がターゲットです。

  ――スパンレース「コットエース」の近況は。

 インバウンド需要の激減、外出自粛の影響などで2020年度は苦戦に転じました。両用途は21年度も厳しいままでしょうが、一方で生活資材を中心に新しい企画の話が進んでいます。21年度は最低でも前年並みを確保します。

  ――プロジェクト的な取り組みを立ち上げた。

 事業部内の精鋭を集めたアメーバのような組織を発足し、将来をにらんだ施策の検討を開始しました。新型コロナ禍が収束しても市場は元に戻らないでしょう。何か新しい用途、販路を開拓できなければ今後の成長はあり得ません。小手先の改良では通用しません。不織布同士、あるいは他素材との複合などで開発を強化し、当社の強みを最大限に発揮させていきます。市場ごとに何が求められているのかを精査し近々、ターゲットを絞り込みます。