東レ/来期は8千億円へ回復/ナイロンでケミカルリサイクル

2021年03月18日 (木曜日)

 東レの三木憲一郎常務執行役員繊維事業本部長は、来期に繊維売上収益8千億円超を目指したい考えを示した。基本方針に掲げる①成長分野・成長地域での事業拡大②サステナビリティへの対応による事業拡大③ビジネスモデルの高度化――に沿った取り組みを進めるとともに、国内産地企業との連携も強化して回復させる。

 今期(2021年3月期)は、売上収益7050億円(前年比15・2%減)、事業利益350億円(同41・3%減)となる見通し。新型コロナウイルス禍で衣料の市場環境は厳しく、資材関連も自動車が回復して白衣やマスク用不織布が伸びたものの、一般の産業資材は低調に推移する。海外では中国の回復が早く衣料分野も戻っているが、足元では不織布に一時の勢いがなくなりつつある。ユニクロとの第3期戦略的パートナーシップ(16~20年)は5年で累計1兆円の取引額を目指していたが、超過達成の見通しだと言う。

 糸・わたの投入量は昨年7~9月を底に回復に向かった。4~6月は秋冬物の残りもあって80%の水準だったが、7~9月は生産調整を行い70%となった。10~12月は85%、足元は90%の水準に戻した。自動車関連がけん引するポリエステル短繊維が好調な一方、まだ動きが鈍い素材もあるが、「全体として回復に向かっている」と話す。

 競争力の源泉として、産地企業との連携による高性能・高感性素材の創出を重視する中、北陸産地との取引も徐々に回復している。市場環境が19年の水準に戻るには1年以上かかるとみるが、「産地との取り組みは重要で、より強固な関係を築いていく。来年1~3月には元の水準に戻したい」とした。

 グリーンイノベーション事業では、ペットボトルからのリサイクル繊維「&+」(アンドプラス)の展開が広がっているが、今後はナイロンでもリサイクル糸を拡充する。工場の繊維くずを再利用するマテリアルリサイクルは既に展開を始めているが、名古屋事業場でナイロンのケミカルリサイクルを始めることを検討中。22年半ばからの展開開始となる見込みで、その後はインドネシア・トーレ・シンセティクス(ITS)など海外拠点の活用も視野に入れる。