2021年春季総合特集(14)/3検査機関が取る21年度の針路

2021年04月22日 (木曜日)

 新型コロナウイルス禍は検査機関にも影響を及ぼした。負の面は小さくないが、変化へのきっかけにもなった。各機関は海外拠点の高度化や人材育成を加速して強い体制を構築する。3検査機関に2021年度(22年3月期)の針路を聞いた。

〈日本繊維製品品質技術センター(QTEC)/理事長 山中 毅 氏/対応、意志、実行の三つの力/国内外で人材育成を図る〉

  ――新型コロナウイルス収束後、日本繊維製品品質技術センター(QTEC)が発展するためには。

 巣ごもりやテレワークが日常になり、必要な衣服も変化しています。繊維、アパレル業界は厳しい状況にありますが、日本人はファッションに敏感ですので、感染拡大が落ち着けばある程度動きが出てくると期待しています。ただ、直ちに新型コロナ前へ戻ることはないと考えています。

 そのような変化が起こる中、QTECに求められるのは対応力です。70年を超える歴史があり、この伝統を維持しながら顧客のニーズを取り込むことが第一になります。後は意志力と実行力です。「さまざまなことに挑戦して需要をつかむという強い意志」が不可欠と思っています。

  ――20年度を振り返ると。

 職員全員が高い危機管理の意識を持って頑張ってくれ、感謝しています。4、5月の緊急事態宣言発出時は出勤比率を3割に抑えましたが、ローテーションを組むことで仕事に対応できました。また3~5月はオーダーが減りましたが、6、7月から海外も含めて少しずつ回復し、順調に推移しています。

  ――21年度の方針を教えてください。

 一つは変化への対応力、意志力、実行力に磨きをかけること。もう一つは国内拠点の再構築です。前年度は神戸試験センターや福井試験センター、北陸試験室、四国試験センターは順調だったのですが、苦戦を強いられた国内場所もありました。状況や課題を分析して今年度に臨みます。

 海外拠点の強化にも継続して取り組みます。上海可泰検験(上海総合試験センター)は、機能強化のため、昨年10月に移転しました。そのほかの拠点もそれぞれの強みを生かして伸ばします。バングラデシュのダッカ試験センター、ベトナム試験センターの成長にも期待しています。

  ――先ほど職員の話が出ましたが、人材については。

 組織は人に支えられているので、人材育成にとても力を入れています。職員の成長による財団の発展を目指しています。このため管理職研修を進めており、今後、階層別研修へ広げていきます。社内活性化のため、直属の上司ではない職員がインタビューワーとなる“クロス面談”などを継続実施します。

  ――中長期視点での取り組みや課題は。

 顧客から選ばれる試験機関として存在感を高めて100年続くQTECを目指しており、多様性を意識して人材の幅を広げていきます。繊維の知識を持つ人だけでなく、法律や経済学を修めた人も採用していきたいと思っています。

 海外ではナショナルスタッフを全拠点で育成することが大きなミッションです。

〈ボーケン品質評価機構/理事長 吉田 泰教 氏/品質パートナー戦略を加速/標準化にも積極的に参画〉

  ――20年度(21年3月期)を振り返ると。

 新型コロナウイルス禍の影響で試験案件が減少し、収入面では厳しい1年でした。ただ、その中で若いスタッフが新しい取り組みを主体的に進めてくれました。マスクの性能試験の新規受入体制の整備などが一例です。危機感が共有され、組織としての主体性が高まったことは成果です。収入面でも繊維事業は現在、前年度比80%まで回復しています。機能性事業も抗菌、抗ウイルス試験が増加しました。

  ――“新型コロナ後”を踏まえた21年度の基本戦略は。

 通常の試験業務だけでなくお客さまと共に品質保証を行う「品質パートナーサービス」をさらに加速させます。ESG(環境、社会、ガバナンス)やサステイナビリティーへの要求も一段と強まるでしょうから、それに対する対応が重要になります。そこで繊維事業は品質管理からCSRまで含めた工場監査、そして企画段階のサンプルチェック、オンラインを活用した教育支援、品質基準書作成など品質パートナー業務を強化します。モニターテストや消費性能に関する評価技術の開発にも力を入れます。

 機能性事業は抗菌・抗ウイルス性試験を担う大阪微生物試験センターの増床が完了し、昨年10月から稼働しています。抗菌性試験を行える東京微生物試験センターも4月に増床し、試験能力を5倍以上に高めます。5月から稼働予定です。上海微生物試験センターは繊維とプラスチック両方の抗菌性試験が可能です。

 生活産業事業は品質基準書作成や品質表示の指導など品質管理支援業務を強化します。電気安全環境研究所(JET)との業務提携を生かし、電器分野での試験評価技術の開発も進めます。認証・分析事業もサステナブル・アパレル連合(SAC)やZDHCなど国際NGOとの連携を深め、環境や人権、労働慣行まで含めた試験機関としての役割を担いたい。2月には日本バイオプラスチック協会にも加盟しました。生分解性試験などへの対応を強めます。

  ――海外拠点は。

 中国5拠点(上海、常州、青島、広州、杭州)は、現地での機能性試験の実施体制を強化し、アジア5拠点(韓国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア)はバングラデシュやカンボジアなど周辺国も含めたネットワークを整備します。

  ――未来研究所の役割も高まります。

 試験機関の業務は標準規格がベースですから、標準化への参画が重要です。未来研究所で現在、抗アレル物質試験、ペプチド分析、シワの画像解析などのJIS(日本産業規格)化、ISO(国際標準規格化)に積極的に取り組んでいます。将来的にはスマートテキスタイルやAI(人工知能)による画像処理技術の研究開発を進めます。

〈ニッセンケン品質評価センター/理事長 駒田 展大 氏/「エコテックス」の訴求/国内は規模適正化を実施〉

  ――新型コロナウイルス収束後にニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)が発展するために必要なものは。

 検査機関の立場は以前よりも難しくなると思っています。新型コロナ禍でアパレル産業は厳しい局面を迎え、考え方や構造が変貌を遂げようとしています。品質管理の捉え方や経費のかけ方もこれまでとは異なるでしょう。そうした変化にどのように対応するかが問われます。

 変化の一つが、サステイナビリティーやSDGs(持続可能な開発目標)への対応を重視する企業が増えていることです。そのような意味でニッセンケンの柱の一つである「エコテックス」の注目度が上がっています。エコテックスが潮流に合った認証としてさらにアピールを強めます。

  ――エコテックスは高い認知度を誇ります。

 スタートから約10年が経過して多くの企業に知られるようになりました。認証取得にはCSRやビジネスの観点など、企業によってさまざまと思います。ただ環境対応にコストがかけられる大企業もあれば、そうではない中小企業も存在します。情報発信や助言もニッセンケンの役割になります。

  ――21年度が始まりました。20年度の業績は。

 厳しい1年でした。バイオケミカル事業(抗菌性・抗ウイルス性試験など)といった新型コロナ禍に応じた試験・検査業務は伸びましたが、一般的な試験は落ち込みました。中国の回復は早かったのですが、日本国内は戻っていません。ASEAN地域とインド、バングラデシュも厳しい状況です。

  ――21年度の方針は。

 国内は適正規模に組み直しました。その一環として実施したのが、近畿圏3事業所・検査所の統合です。大阪事業所と京都検査所、西脇検査所を一体化して「西日本事業所」を4月1日付で新設しました。従来の事業所・検査所を大阪ラボ、京都ラボ、西脇ラボとし、より合理的・機能的な連動を図ります。

 エコテックスや抗菌性・抗ウイルス性試験などはさらに伸ばしていく方針ですが、エコテックス事業とバイオケミカル事業、香粧品分析事業の三つを集約し、「ライフ アンド ヘルス事業本部」を同日に発足しました。繊維に加え、食品、住居、化学、医療などの新分野の開拓を加速していきます。

  ――海外の事業については。

 中身の高度化や体質強化に力を入れます。その取り組みの中でも重要視しているのがローカルスタッフの育成です。日本と中国、ASEAN地域、インド、バングラデシュの各拠点のネットワークを強固にして人材の高度化につなげます。