クローズアップ/東レ 産業資材事業部長 倉本 将秀 氏/次なる布石はメキシコで

2021年04月27日 (火曜日)

 合繊メーカーが力を入れる自動車用エアバッグ事業。これまでは順調すぎるほどの事業拡大を続けてきたが、昨年は新型コロナウイルス禍で成長が一時ストップ。ここに来て浮上しているのは、米国原料メーカーのフォースマジュール(不可抗力)表明に伴い懸念される原料不足だ。2021年度のエアバッグ市場をどう見ているのか、1月に就任した東レの倉本将秀産業資材事業部長に聞いた。

  ――20年度の販売状況は。

 上半期の苦戦が響き前年実績には届きませんでした。多少の強弱はありますが下半期以降、月を追うごとに回復し国内外に展開する原糸、基布、縫製の各拠点は全てフル生産に転換しています。

  ――北米の原料メーカーが寒波の影響でフォースマジュールを表明した。

 原料の供給を制限されており正直、もっと作りたいのに作れないジレンマがあります。工場は動き出したとの連絡は受けていますが、フォースマジュールはそのままです。この先どうなるのかは読み切れません。

  ――21年度の事業計画は。

 自動車メーカーが一気に増産に入ったため、昨年の下半期以降、市況は急激に回復しています。当社も21年度は2桁%の増産・増販を計画しています。

  ――エアバッグ縫製を傘下に収めた効果は。

 スウェーデンのアルバ社をM&Aすることでポルトガルとチュニジアの工場が加わりました。これまではエアバッグメーカーの言うことをそのまま聞いていましたが、例えば基布の欠点の見極めを精査したところ、欠点としてカウントされていたケースを減らすことができました。梱包(こんぽう)資材を使いやすい形に変えたり、リターナブル(回収可能)にしたりといった取り組みも進んでいます。

  ――インドに織布工場を構えている。

 インドの自動車生産は年間400万~500万台くらい。いずれ1千万台に成長するとともに、エアバッグの普及も進んでいきます。競合他社より先に現地に進出し、マーケットを把握できるメリットは大きいと思います。

  ――この間、海外を中心に大型の設備投資を続けてきた。

 グローバルなお客さまに供給していくための拠点整備は一段落しました。今後は各拠点が自社の生産能力を増やしていく段階に入ります。次に増産投資を実施するならば、メキシコになります。メキシコは原糸、織布の一貫体制を備えており、その競争力はかなりのレベルにあります。向き合っている市場は北米ですし、まだまだいけると感じています。