2021春季総合特集Ⅴ(5)/トップインタビュー  菅公学生服/社長 尾﨑 茂 氏/長大な産業構造の見直しを/デジタル技術の活用不可欠

2021年04月28日 (水曜日)

 菅公学生服は2021年入学商戦で制服モデルチェンジ(MC)を堅調に獲得しており、販売計画通りになる見通しだ。教育ソリューション事業の案件も増加傾向で、企業との連携にまで広がりを見せつつある。人工知能(AI)を活用した採寸などこれまでにない技術を強化することで、一層の成長を目指す。

  ――新型コロナウイルス収束後、日本の繊維産業の発展に必要なことは。

 業界特有の長大な産業構造を見直す必要があり、そうしなければ衰退を止めることはできないと思います。企業も顧客とのつながりを強化しなければ淘汰(とうた)される恐れがあり、デジタル技術を活用したコミュニケーションが不可欠になるのではないでしょうか。

  ――新型コロナ禍が長期化しています。

 感染防止に向け、非接触の対応を強めました。AI技術を活用した「スマート採寸」は今春、124校に採用され、非常に高い評価を得ました。社内でも採寸から生産手配までの業務を大幅に削減でき、リードタイム短縮や削減につながりました。今回蓄積した2万人前後の採寸データを活用し、今後は全面的に訴求するとともに、商品開発へも生かしたいと考えています。

 昨年11月はオンライン展も開催し、一定の評価を得ました。ネットを活用し、いかに顧客と接点を作るかが今後も求められると思います。ただそれだけでは営業活動として弱く、双方向のコミュニケーションが必要です。リアルとオンラインのハイブリッドによる提案を考えていきます。

  ――21年入学商戦は。

 全体としては順調に進み、MCの勝率は例年以上に堅調でした。地域差もありますが、大阪や名古屋を中心に多くの採用を得ました。要因は、地道な営業の強化に尽きると思います。スポーツも「カンコープレミアム」など自社ブランドのアピールが奏功し、採用に貢献しました。新型コロナ禍で一部現場レベルでの納期調整はありましたが、全体的には大きな混乱もなく、順調に納品を終えました。感染防止対策で制服よりも洗いやすい体操服の通学が許可された地域が一部ありますが、制服の販売への影響は軽微でした。

 全国的に性的少数者(LGBTQ)に配慮する流れが強まり、MCに踏み切る学校も増えています。当社も制服のモノ作りをはじめ、先行した対応を心掛けています。

 SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが後押しする傾向もあり、地域ごとに連携した活動が増えています。学会への参加なども行い、学生への支援を強化します。

  ――教育ソリューション事業の進展は。

 キャリア教育、人材育成、学校魅力化、働き方改革の四つの項目で、各案件ごとに取り組みを進めています。学生に向けては、非認知能力(数値化が難しいコミュニケーション能力や共感性、忍耐力など)や意欲の向上に向けた教育活動を継続していて、幅広く採用を得ています。最近では、愛知県や九州などで引き合いが増えていますね。企業との連携も深めていて、地元でのキャリア教育の受け入れなどが広がっています。

  ――新たな商品企画は。

 DR.C医薬(東京都新宿区)とコラボレーションし、ハイドロ銀チタンを活用した抗菌防臭効果のある制服やシャツを検討しています。新型コロナ禍とは関係なく、2年ほど前から取り組みを進めてきました。新型コロナに対する効果も実証されていて、強力に推し進めていきます。

  ――設備投資は。

 19年に新設した群馬県前橋市と宮崎県都城市の物流センターは順調に稼働していて、全国の物流拠点の集約も引き続き進めていきたいと思います。工場へのAIやIoTの導入も徐々に進展していて、運搬用ロボットなど新たな機器も取り入れています。

  ――コスト高騰について。

 人件費や物流費などが大きく上昇しています。徐々に価格改定に向けた交渉も進んでいますので、今後も値上げに対する理解を浸透させていきたいと思います。

  ――21年7月期の見通し。

 売上高371億円(前期370億円)の計画通り増収の見込みですが、利益面は在庫調整の状況次第で読めない部分があります。引き続き、コスト削減などを推進します。

〈新型コロナ禍収束後にまずやってみたいこと/全国の社員に会いに行きたい〉

 ウイズコロナのこの間、「全国の社員と1年以上会うことができなかった」と振り返る尾﨑さん。ネットによる会議などでは言葉を交わしてきたが、「やはり実際に会うのとは違う」と言う。食事に行くなど、事務的な連絡にとどまらない交流が改めて必要だと再確認した。「顔を見て話がしたいですね。早くそういう日が来ないかな」と新型コロナ禍の収束を願う。

〈略歴〉

 おざき・しげる 1998年尾崎商事(現・菅公学生服)入社。2001年取締役、03年専務。06年から社長。