2021春季総合特集Ⅴ(6)/トップインタビュー  トンボ/社長 近藤 知之 氏/ネット技術の革新が求められる/小売店へのサポートシステムを構築

2021年04月28日 (水曜日)

 トンボは今入学商戦で、オンライン展示会などネットを通じた販促を強化するなどしてスクールとスポーツの販売が堅調だったことから、計画する2021年6月期売上高の達成が見えてきた。人工知能(AI)の活用も視野に採寸や受発注でのシステム構築を進め、22年6月期にグループ売上高400億円を目指す中期3カ年計画「アクション400」に向けて取り組む。

  ――新型コロナウイルス収束後、日本の繊維産業の発展に必要なことは。

 ネット技術の革新がこれまで以上に求められると思います。この間業界で拡大したネット通販に加え、AIの身体採寸のテクノロジーを活用した、決済完了まで含む小売システムの構築などを進め、そのシステムを小売店までサポートしていく必要があります。新型コロナ禍で海外との連携が難しくなり、国内生産の重要性が見直されたため、国内の生産拠点の確保も無視できないと考えています。

  ――新型コロナ禍が長期化しています。

 IT技術を活用した非接触の取り組みが求められています。新型コロナの感染が拡大する前は学校を会場とした採寸、販売が中心でしたが、最近は感染防止に向けて、販売店店頭やネットを通じた採寸、販売の要望が増えており、今後も対応を進めます。

  ――21年入学商戦の状況はいかがでしょうか。

 厳しい環境でも学校への地道な営業を継続し、制服のモデルチェンジ校数は120校と堅調に獲得しました。一部エリアでは、感染対策で制服よりも取り扱いが簡単な体育着の通学が許可され、体育着の販売が増えました。夏服を中心に制服の購入が控えられるケースもありましたが、影響は限定的で、全体では安定した売り上げを確保しています。

  ――21年6月期の進捗(しんちょく)を。

 20年7月~21年2月の売上高はスクールが前年同期比3%増、スクールスポーツが同6%増、ヘルスケア(介護ウエア)が同10%増となりました。3月は新型コロナ禍で商戦が遅れたために受注が集中し、予断が許されない状況が続きました。今後、4~6月の状況次第ですが、21年6月期売上高はグループ連結で395億円前後(前期384億円)を見込んでいます。

  ――グループ売上高400億円を目指す中期3カ年計画「アクション400」の進捗(しんちょく)は。

 2年目の21年6月期が計画に近い線で推移しているほか、一昨年5月に子会社化した瀧本(大阪府東大阪市)の黒字化も視野に入り、最終年度の22年6月期には400億円超を達成できる見込みです。計画は順調に進んでいます。

 今後の課題は、顧客の要望の変化に対応することです。独自のネット通販サイト「トンボスクールモール」を活用し、家庭内での採寸や受発注システムを拡充します。

 新型コロナの感染防止に向けて、展示会などのイベントを全てネット上の開催に切り替えました。今後はネットによる販促をさらに強化し、バーチャルモデルを起用したファッションショー、バーチャル展示会などを拡充したいと考えています。

  ――子会社化した瀧本との連携は。

 現状と変わらず、お互い切磋琢磨しながら良い結果を出していきます。営業エリアの細分化など組織変更で販売を強化し、グループ内での勉強会なども検討します。

  ――設備投資の状況を。

 茨城県笠間市で建設する新物流センターは、新型コロナ禍で20年5月の着工を1年延期しました。東京本社関係の物流は現状、玉野本社工場(岡山県玉野市)と紅陽台物流センター(同)で対応しているため、関東エリアの販売の状況を見極めながら、今年4月の着工、もしくはさらに1年延期するかを決定します。1万6530平方㍍の土地を既に購入しており、時期を決定次第、建設を進めます。

  ――コスト上昇が深刻化しています。

 当社は昨年8月、スクールとスポーツで値上げを発表し、定番商品では価格を改定しました。別注は、契約期間のあるもの以外は1年以内の実施を予定していましたが、大都市圏では次年度に持ち越しとなったエリアもあります。コスト高騰の現状を丁寧に説明し、値上げへの理解を求めたいと思っています。

〈新型コロナ禍収束後にまずやってみたいこと/提携先をまず訪問したい〉

 英国のスコットランドとイタリアのミラノには提携先があるため、「新型コロナ収束後にはまず訪問したい」と近藤さん。スコットランドにはタータンチェック柄の企画で協力するロキャロン社、ミラノには20年2月に産学連携を結んだ服飾学校「イスティテュート・セコリ」がある。新型コロナ禍の影響で渡航ができなかったこの1年。アフターコロナでは「事業もプライベートも充実」させる。

〈略歴〉

 こんどう・ともゆき 1980年テイコク(現トンボ)入社。99年営業統括本部販売統括部長、2001年取締役営業統括第一営業本部長、03年常務、10年専務。12年9月社長。