2021春季総合特集Ⅴ(7)/トップインタビュー 明石スクールユニフォームカンパニー/社長 河合 秀文 氏/“廃棄出さない”強い覚悟持つ/SDGsを軸に取り組む

2021年04月28日 (水曜日)

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は昨年、決算期を5月から12月に変更した。今年からは1~12月決算となり、今入学商戦では制服モデルチェンジ(MC)も堅調に獲得している。新たな企業指針として掲げたSDGs(持続可能な開発目標)を軸に成長を目指す。

  ――新型コロナウイルス禍の収束後、日本の繊維産業が発展するためには。

 SDGsに則し、過剰に生産し過ぎないことです。消費者の目も厳しくなる中、原点に戻って適量を生産し、廃棄を出さないという強い覚悟を持つことが大切だと思います。モノ作りは“腹7分目”でちょうどいいじゃない、というくらいの考え方に変えていく必要があるのではないでしょうか。適価・適品で販売するため、計画生産、計画販売が求められていくとみています。

  ――今年からSDGsを企業指針とし、「倉敷発、地球品質。」をスローガンに取り組まれていますね。

 「環境」「命」「絆」の3項目で訴求しています。エコ活動や、防災教育などに前向きに取り組んでいきたいと思います。30年以内に大規模な地震が来るとの予想もあり、危機意識が高まっていることから、防災教育は小中学校を中心に順調に広がっています。防災学習教材の充実に加えて、防災を学べるすごろくなどを提案しています。

 SDGs全体の活動については、営業や生産含めて一体化して取り組み、今後の成長につなげていきます。

  ――決算期を5月から12月に変更しました。

 新型コロナ禍で昨年急きょ浮上した9月入学の問題、制服の納期調整を受け、5、6月で売り上げを区切ることに危険性を感じ、決算月を変更しました。暦年と決算月を合わせれば、年前半で利益を予測し、年後半で計画的に投資などを行えると判断しました。

 前期の変則7カ月決算(20年6~12月)は納品調整の影響を受け、前年同期比17%増と大幅増収でした。ただイレギュラーな数字で、今期(21年1~12月)から通常の数字が分かるとみています。引き続き、通期売上高で前期比2%増の成長を目指します。

  ――21年入学商戦の状況は。

 21年1~3月の売上高は4%増で、出足としては順調です。スクールでは制服MCを堅調に獲得しました。洗濯耐久性や抗ウイルスのほか、LGBT(性的少数者)に配慮した制服などのニーズに対応したことで、多くの採用を得ました。特に中学校がMCに踏み切る流れが強まり、引き続き制服のブレザー化が進んでいます。反対に、高校はMCの流れが鈍化しています。

 ただ、公立で生徒数の減少が響いています。特に都市部は今後も影響しそうで、実際に定員割れの学校も多くなっています。当社もその減少分を想定した上で、新規校を獲得していく必要があります。私学校も生徒数を増やしているところとそうでないところが鮮明になってきています。

 市場では通信制高校の入学者が増えていて、総数は20万人はいるのではないかとみています。制服を導入する通信制高校もあり、制服を購入されるケースも多いと聞いています。販売への影響ではなくて機会と前向きに捉えていきたいと思います。

 採寸は、感染防止の対応が求められる中、スマートフォンの撮影を用いた採寸システム「明石インテリジェンス(AI)採寸」の活用を本格化させました。独自開発のアプリで画像を取り込み、長年蓄積してきた採寸データと手採寸の数値を合わせてサイズを推計するものです。導入1年目ながら多くの学校に採用されました。今後、システムで採取したデータも活用し、精度を向上させていきます。

 スポーツは「デサント」ブランドの累計採用校数が2千校を超えるなど順調に進んでいます。水着の受注は新型コロナの関係で水泳の授業がどうなるか次第ですが、4月中に結論が出るとみています。

  ――企業向けユニフォームは。

 メディカル介護ウエアは、病院や介護施設への営業が難しい状況が続いているものの、既存案件の追加受注などで販売が伸びています。

〈新型コロナ禍収束後にまずやってみたいこと/友人や得意先と会食したい〉

 新型コロナ収束後は、「やっぱり人と会食したいですね」と河合さん。定期的に食事に行く友人や得意先がいるが、同感染症の影響で「1年半近く会っていない」と言う。仕事上のためになるケースも多いものの、長期間交流できていないため「時間が止まっているような感覚」だ。「またそういう付き合いがしたい」と、その時が来ることを待ちわびる。

〈略歴〉

 かわい・ひでふみ 1982年明石被服興業入社。89年取締役。2002年専務。05年から社長。明石SUC社長も兼務。