ひと/シキボウの次期社長に決まった尻家 正博 氏/長期的視野で存在価値を

2021年05月07日 (金曜日)

 6月29日付でシキボウの社長に就くことが決まった。現在、新型コロナウイルス禍に対応するため2カ年の緊急経営計画を実行中の同社。「新しいビジネスモデルの創出で、まずは新型コロナ禍から脱出する。長期的視野で当社の存在価値や方向性を追求する」ことに取り組む。

 入社以来、工場の労務を皮切りに管理畑を歩んできた。かつて紡績工場は多数の女子従業員が働きながら寮で共同生活するのが一般的だった。寮で従業員の日常生活まで含めた管理を担うのが「舎監」。尻家さんも富山工場の舎監となったが「当社で専任の舎監を経験したのは私が最後」だそうだ。年頃の女性が集団生活するとなれば、なにかと生活指導上のトラブルも起きやすい。「ここでは話せないトラブルに悩まされたこともある」と振り返るように、現場レベルからシキボウのことを知り尽くす一人である。

 次期社長として、まずは今期(22年3月期)が最終年度となる緊急経営計画をやり遂げた上で、次の経営戦略も策定する役割が課せられた。「新型コロナ禍を経て、今後はこれまでとは別の社会になるはず。従来の延長線上では対応できない。今後は、いかに新しいビジネスモデルを創出できるかにかかっている」と話す。ユニチカトレーディングとの提携や新内外綿の完全子会社化など材料がそろいつつあるだけに、その手腕には期待がかかる。

 趣味は野球。大阪府立富田林高校の硬式野球部で汗を流した元高校球児で、今も草野球を楽しむ。高校野球OBチームによる大会「マスターズ甲子園」にも参加し、2019年の大会ではPL学園OBチームとの試合で元読売ジャイアンツの桑田真澄投手(現コーチ)とも対戦した。

 新型コロナ禍という過去に例のない厳しい事業環境のただ中での社長就任は、野球で例えるなら、まさに勝負所での打席だろう。相手ピッチャーは手強いが、既に塁は埋まっている。勝負を決める快打を期待。(宇)

 しりや・まさひろ 1988年関西学院大・法学部卒、シキボウ入社。2018年総務部長、19年執行役員コーポレート部門経営管理部長、20年執行役員コーポレート部門経営戦略部長兼財務経理部長、21年執行役員コーポレート部門財務経理部長。21年6月29日付で代表取締役兼社長執行役員就任予定。大阪府出身。56歳。