東洋紡/信頼回復を最優先/23年後半でエアバッグを黒字に

2021年05月12日 (水曜日)

 東洋紡は主力のフィルム・機能マテリアル事業では2020年度連結決算で20%の増収、37%の営業増益を確保したものの、過去10年間の全体業績、企業価値は横ばいにとどまっているとの危機感を示している。21年度は「持続的な成長に向けて経営基盤を作り直す」(竹内郁夫社長)との方針の下、企業体質の変革に取り組む。

 21年度は、中期4カ年計画の最終年度だ。営業利益目標を300億円としていたが、未達の270億円を見込んでいる。この間、敦賀事業所第二や犬山工場で火災事故といったトラブルに見舞われており、「現状に強い危機感を持っている」との認識を示す。

 このため、22年度からの新中計を前に、21年度で経営基盤を作り直す。まず「1丁目1番地の(製造業としての)信頼回復に努めたい」と安全・防災・品質保証の徹底に最優先で取り組んでいく。

 事業ポートフォリオの組み換えを引き続き強化する。フィルム、ライフサイエンス、環境の3領域での取り組みに重点を置くとともに、次代を担う有力テーマの事業化を加速させる。

 主力のフィルム事業では、工業用「コスモシャインSRF」の第3系列が21年度中にフル操業に至る見通しだ。これに伴い45%まで引き上げてきたマーケットシェアが「さらに高まる」との手応えを示している。

 エアバッグ用ナイロン66事業では、タイで新工場の建設を進めており、22年2月から量産に着手する。ユーザーからの認証に半年から1年を要するため、エアバッグ事業が黒字転換するのは「早ければ23年後半から」とみている。

 エアバッグでは、北米メーカーのフォースマジュール(不可抗力)表明でナイロン66原料が世界的にひっ迫している。自動車メーカーは搭載部位によってはポリエステルで代替しようとの動きを示しているといい、東洋紡もポリエステルによるエアバッグ布の開発に取り組んでいる。

 東洋紡は目指す姿に“素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループ”を掲げており、年末をめどに「2025中期経営計画」と「サステナブルビジョン2030」を公表する。