「PTJ2022春夏」(2)/テキスタイル・ワークショップ~日本の素材を学ぼう~/原料・染色加工におけるサステイナブル

2021年05月20日 (木曜日)

〈パノコトレーディング/オーガニックコットンとは/取締役 三保 真吾 氏〉

 環境負荷低減が問われる中、オーガニックコットンの注目度がますます高まっている。そのオーガニックコットンの原糸の輸入・販売、生地の企画・製造・販売を行うのがパノコトレーディング(東京都千代田区)だ。三保真吾取締役は「環境重視の流れが本物であってほしい」と話す。

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  ――パノコトレーディングとはどのような企業なのですか。

 オーガニックコットンの扱いを中心としている会社です。原綿・原糸・生地・製品を輸入するほか、企画・製造・販売も行っています。スイス・リーメイ社を経由してインドとタンザニアのオーガニックコットンを調達するほか、ペルーで生産されているオーガニックコットンなども仕入れています。

  ――PTJではどのような話をされますか。

 オーガニックコットンは以前からあり、目新しい綿花ではないのですが、「イロハが知りたい」という声が大きくなっています。このため今回は「オーガニックコットンとは何か」から始まり、生産に関連する工程、トレーサビリティー、持続可能な開発目標(SDGs)に触れたいと考えています。

  ――それでは教えてください。オーガニックコットンとは。

 定義ははっきりとしています。簡単に説明すると、オーガニック農産物などの生産方法の基準に従って2、3年以上の有機栽培の実践を経て認証機関に認められた農地で、使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って栽培された綿花のことです。認証はポイントの一つと言えるでしょう。

 これまでオーガニックコットンは「肌に優しい」といったマーケティング手法が取られ、消費者の誤解を招いている部分もあります。オーガニックコットンの栽培をはじめとする有機農業が目指しているのは農業従事者らを農薬などの有害物質から守るためです。それを正しく伝える必要があります。

  ――これからの課題はありますか。

 有機農業の意味合いや手摘みの綿花に夾雑物が入るのは当たり前であるという認知を高めることが一つでしょう。価格や供給面での課題も残っています。決して安い綿花ではなく、需要に供給が追い付いていない状態です。オーガニックコットンは綿花全体の1%程度といわれています。

 これまで「エコ」に始まり、「ロハス」や「エシカル」など、環境に関連する言葉が新しく生まれたり、消えたりしてきました。現在の環境意識の高まりは各国政府を巻き込んだものであり、本物であってほしいと願っています。企業ももっと取り組みを深める必要があるでしょう。

〈山陽染工/サステの流れ無視できなくなる/企画開発課課長(山陽染工児島ファクトリー取締役担当部長) 森原 聰 氏〉

 欧州を中心に環境への意識が高まる中、国内でもサステイナビリティーの意識が消費者の間で徐々に浸透しつつある。排水問題や水の削減など、地球環境に配慮したモノ作りが求められており、産地内ではサステイナブルな生産体制の確立が進んでいる。26日、「染色・加工におけるサステイナブル」をテーマに講義する森原聰企画開発課課長に話を聞いた。

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  ――ワークショップではどのような話を。

 サステイナビリティーについて、世界の流れ、そして国内の状況について話します。当社がある三備産地では、どのような取り組みが進んでいるか例をあげるとともに、山陽染工グループとしての取り組みも紹介します。

  ――海外では近年、環境意識が高まっています。御社は2019年に初めて海外の展示会に出展しました。

 19年2月にイタリア・ミラノで開かれたテキスタイル展示会「ミラノ・ウニカ」に出展しました。それまで、欧州を中心にサステイナブルな意識が高まりつつあるということは情報として得ていましたが、実際に展示会に参加してみて、その意識の高さを肌で感じました。

 会場にはサステイナブルコーナーが設けられているほか、当社のブースへもサステイナブルな素材や加工を目当てに来場される方が多かったです。国内でも今後この流れは無視できなくなると思いました。

  ――国内のムードはいかがですか。

 海外に比べるとまだ温度差があります。海外とビジネスを行っている工場は早くからサステイナブルなモノ作りに力を入れてきましたが、メーカーや消費者レベルではまだ欧州ほど意識が浸透していないと感じます。

 ただ、新型コロナウイルス禍以降、衣類の大量廃棄の問題など、サステイナビリティーをテーマとしたテレビ番組が放映されることが多くなったほか、大手SPAもサステイナブルなモノ作りに力を入れ始めたことで、消費者も以前より意識するようになってきました。

  ――三備産地や御社の取り組みは。

 産地の染色加工場では、坂本デニム(広島県福山市)が、薬剤や蒸気の代わりに電解水を使って加工する「エコ染色システム」の活用を本格化させているほか、岡山県織物染色工業協同組合は18年から独自の安全基準に沿った加工ブランド「倉敷染」を始動させるなど、各社でサステイナビリティーを見据えた取り組みが進んでいます。

 当社も、必要なモノだけを使って生地本来の味を生かした加工の開発や、連続染色機ではなくバッチ染色機を使って、必要なモノを必要な分だけ染める加工などサステイナブルな加工を模索しています。これらの取り組みもお話しできればと考えています。