この人に聞く/帝人 帝人グループ執行役員 アラミド事業本部長 ペーター・テル・ホルスト 氏 持続可能性やDXが重点

2021年05月25日 (火曜日)

 中長期的に需要が拡大すると予想されている高性能繊維。中でもアラミド繊維は新型コロナウイルス禍の影響からいち早く抜け出し、自動車を中心に幅広い用途での伸長が期待されている。帝人アラミド繊維事業の今後の方針について、ペーター・テル・ホルスト帝人グループ執行役員アラミド事業本部長に聞いた。

  ――アラミド繊維の市場動向は。

 ひと言で表すと底堅いと言えるでしょう。特に自動車関連用途は軽量やメンテナンスフリーに対するニーズが大きく、堅調です。光ファイバーケーブルや係留ロープなどの産業用途、防護衣料向けも着実に伸びています。ただ新型コロナ禍もあって航空宇宙市場は低迷が続いています。

  ――帝人アラミド繊維事業の2021年3月期は。

 新型コロナの感染拡大で昨年5月から8月にかけて欧州や北米における顧客の工場が稼働停止を余儀なくされ、当社のアラミド繊維事業も厳しい状況に直面しました。10月以降は自動車用途を中心に非常に力強い回復を見せました。光ファイバーケーブル市場も持ち直しています。

  ――21年度以降の基本方針や販売戦略は。

 まずは昨年に落ち込んだ部分を取り戻すことです。第1四半期に大型定修を実施しますが、準備しているので問題ありません。新型コロナ禍でもデジタル技術で企業を変革するDXや持続可能性への投資を強化しました。現場の業務遂行力を向上し、オペレーショナル・エクセレンスに向けた戦略を進めます。

 具体的にはビッグデータやモノをインターネットにつなげる技術であるIoTの強化を検討しています。管理プロセスで標準化を図り、その仕組みをオランダ本部だけでなく、日本を含む全世界の拠点で活用します。オランダではパラ系アラミド「トワロン」の生産能力を増強しており、革新への投資を継続します。

  ――事業の中長期的な戦略は。

 中長期的にも事業成長や持続可能な取り組み、そしてDXの強化が重要です。持続可能性では環境配慮型エネルギーへの移行やライフサイクルアセスメントに向けた完全循環型バリューチェーンへ移行します。DXに関しては「インダストリー4・0」のコンセプトに沿う生産性向上に向けた取り組みを進めます。

 持続可能性の中で掲げている完全循環型バリューチェーンへの移行ですが、われわれのアラミド繊維を使用後に顧客から回収して再びアラミド繊維を作る取り組みで、ラボベースでは実証ができています。事業化には顧客や協業先との連携が不可欠です。そのほかバイオ原料を用いたトワロンの生産技術開発などを推進します。