特集 快適・衛生機能の繊維素材(4)/素材・加工剤メーカー/多彩な機能を実現

2021年05月26日 (水曜日)

〈用途広がる「フルテクト」/シキボウ〉

 シキボウの抗ウイルス加工「フルテクト」の採用が拡大している。新型コロナウイルス禍を契機に注目が高まり、マスクなど衛生製品だけでなく寝装やカジュアルなど幅広い用途に広がる。

 フルテクトは抗ウイルス加工の先駆け的商品。繊維評価技術協議会が認証する「SEK抗ウイルス加工」マークを取得しているほか、最近では新型コロナウイルスに対する抗ウイルス性も確認した。デザイナーの森永邦彦氏のブランド「アンリアレイジ」にも採用され、昨年9月のパリコレクションにフルテクトを使った作品が出展されるなどファッション分野でも注目が高まる。

 加工を担う染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)に自前の抗ウイルス性試験室を持つことも同社の強み。開発だけでなく、ロットチェックの実施など品質面での信頼性にもつながる。

 同社はフルテクトのほかにも制菌加工「ノモス」など多彩な衛生加工を持つ。ノモスは糸加工にも対応し、タオルや靴下への提案も進む。新型コロナ禍による“ニューノーマル”に対応した素材として衛生加工を重点提案する。

〈機能レーヨンで用途開発/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは、多彩な機能レーヨンを生かした用途開発に力を入れる。清潔や衛生に焦点を当てた機能レーヨンのラインアップも再整備し、新型コロナウイルス禍による新たな需要に応える。

 機能レーヨンを得意とする同社は、快適や清潔・衛生に焦点を当てた原綿も多数ラインアップする。最近では抗ウイルス機能レーヨン「パラモスプラス」への引き合いが紡績用を中心に増えた。現在、機能の耐久性向上などバージョンアップも進めている。

 そのほか、繊維評価技術協議会の「SEKマーク」も取得できる抗菌レーヨン「バクトフリー」、光触媒抗菌・消臭の「パナケイア」なども根強い人気がある。ふとん中わた用途で防虫機能レーヨン「マイテクト」への注目も高まった。

 原綿供給を担う同社にとって販売先企業と連携した用途開発が重要になる。機能性に加えて、生分解性などレーヨンのサステイナブルな特性も打ち出すことで新たな需要の創出に取り組む。

〈衛生から風合い加工まで/富士紡ホールディングス〉

 富士紡ホールディングスは、繊維事業子会社であるフジボウテキスタイルの和歌山工場(和歌山市)の加工技術を生かし、綿などセルロース繊維への多彩な衛生加工や風合い加工を得意とする。

 同社の衛生加工で注目されるのが抗菌防臭性と吸水速乾性を両立した「デオスカイ」。綿に吸水速乾と抗菌防臭を同時付与する加工は薬剤の相性から技術的ハードルが高いが、フジボウテキスタイル和歌山工場の技術で実現した。わきがの原因菌であるコリネバクテリウム属に対する抗菌性も確認している。

 綿100%の防汚加工「ワンダーフレッシュ」も両立の難しい油汚れに対するSG(ソイルガード)性とSR(ソイルリリース)性を併せ持つことに成功している。

 そのほか、オリーブオイル成分を生地に加工した「モイストオリーブ」もユニークな風合い加工商品。オリーブオイルはオレイン酸を含む油脂であり、皮脂膜に近い働きがあるとされる。

〈大和化学工業/同浴加工で抗菌性付与〉

 大和化学工業(大阪市東淀川区)は染色同浴で高い抗菌性を付与できる「アモルデンD4C」の提案に力を入れる。工業洗濯50回後でも制菌レベルの性能を確認しており、後加工工程の省略による環境負荷低減やコスト削減にもつながる。

 衛生加工市場の拡大とともに、抗菌剤のニーズが拡大している。同社への試験依頼は前年の約2倍に増えており、今期は前年を上回る販売を計画している。

 特に力を入れるのが、アモルデンD4Cで、サステイナビリティーの面からも注目を高めている。パディング加工ではなく、染色時に染料とともに添加して抗菌性を付与するため、後加工に伴う熱処理や排水がなくなる。排水の環境負荷も少なく、活性汚泥菌への影響も少ない。工程簡略化で、コスト削減や短納期化にもつながる。

 染料と共にポリエステルの非結晶部分に入り込むので耐洗濯性も高く、工業洗濯50回後もSEKの制菌マーク(赤ラベル)を取得できる性能を確認している。分散染料に似た化学構造なので染色を邪魔せず、色相に対する影響はほとんどない。光による変色も少なく、耐光堅ろう度試験では濃単色だけでなく三原色でも良好な結果が出ている。

 ソーピング後の処理で、ナイロンへの機能性付与が可能など対応素材も広がっている。

〈コタニ化学/天然由来の加工剤を拡充〉

 コタニ化学(堺市)は、抗ウイルス加工剤、抗菌防臭剤、防ダニ加工剤、竹エキス抗菌消臭剤など衛生加工剤を幅広く展開している。足元では特に抗ウイルス加工剤や抗菌加工剤が注目を集めており、今年はさらなる拡大を見込む。

 抗ウイルス剤「クインライトVR」は有機窒素系で、エンベローブを持つタイプと持たないタイプの両方に効果を発揮する。抗菌防臭効果もあり、洗濯耐久性も良好な結果を得ている。抗菌防臭加工剤「クインライトRL―N」は細菌、カビ、酵母菌に幅広く効果を発揮し、スポーツ衣料などでも注目されている。

 サステイナビリティーへの取り組みを重視する中、近年は天然由来、植物由来の加工剤の開発も強化している。衛生関連では、竹エキス抗菌消臭剤「クインライトBMB」や天然鉱物を使用した抗アレルゲン剤「クインライトALG」などへの注目が高まっているという。

 快適加工では、既存商品のグレードアップに取り組んでいる。このほど蓄熱・保温剤「クインライトHT―B」に比べて保温性を大きく向上させた「HT―3B」や、保湿加工剤「クインライトSSQ」の性能をさらに高めた「SSQ2」を開発した。その他の既存商品も順次グレードアップを図り、新商品として打ち出していく予定。