繊維ニュース

特集 快適・衛生機能の繊維素材(5)/検査機関/社会のニーズに応える

2021年05月26日 (水曜日)

 新型コロナウイルス禍が続く中で、安心・安全への意識が高まりを見せているが、同時に快適や衛生に対する関心もこれまで以上に強まっている。消費者に快適性や衛生面を付与した繊維製品を届けるために重要な役割を果たすのが検査機関と言える。市場ニーズの変化に対応しながら社会の要請に応えている。

〈機能性試験強化で存在感/カケンテストセンター/短期吸放湿性試験も導入〉

 カケンテストセンター(カケン)は、東京事業所川口本所(埼玉県川口市)で機能性試験の強化・拡充を図っている。同事業所には同本所のほか、三つの拠点(原宿ラボ、目黒ラボ、堀留ラボ)があるが、快適や衛生などへの要望が強まる中、そうした声に対応できる拠点としての体制を整えることで川口本所の存在感を高める。

 川口本所では、吸水速乾性、保温性、遮熱性、帯電性、吸湿発熱性、消臭性といった試験を増強し、処理できる能力を高めた。既存試験の強化に加えて新試験にも乗り出しており、これまでは大阪事業所だけで行っていた短期吸放湿性試験設備の導入を終えた。

 吸放湿性試験は、繊維が衣服内の湿気を吸ったり、放出したりする機能を評価する。通常の吸放湿性試験は24時間かけて試料に湿気を吸わせ、24時間かけて放湿させるため、試験に2日間かかる。短期吸放湿性試験は3時間でデータが取れるとし、試験時間の大幅な短縮につながる。

 川口本所には2セット設置している。「オリジナルで組んだ試験設備であり、(吸放湿性試験を)3時間で可能にしているのはカケンだけ」と自信を見せる。これは設備だけでなく人の力の寄与も大きい。その一環として、従来から短期吸放湿性試験を手掛けてきた大阪事業所での研修などを実施している。

 川口本所では4月にバイオラボを開設している。五つの試験室を設け、抗菌性試験、マスクや防護服の試験、カビ抵抗性試験、抗ウイルスの試験に対応し、恒温恒湿室ではマスクなどに求められる微粒子捕集効率試験にも応じる。

〈気化熱冷却試験を本格展開/日本繊維製品品質技術センター(QTEC)/独自ノウハウで新開発〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は気化熱冷却試験の展開を本格化する。独自のノウハウで2020年に確立したが、一部の顧客への説明・紹介にとどまっていた。現時点では東日本事業所、東京試験センターのみ試験可能だが、受注状況によって対応できる試験センターを増やす。

 新型コロナウイルスの感染拡大で抗菌や抗ウイルスをはじめとする「清潔」が大きくクローズアップされており、QTECも西日本事業所、神戸試験センターで試験を行っている。新型コロナ禍が続く中、この流れは変わらないとするが、もう一つの重要なキーワードが「快適」だ。

 快適には関連するさまざまな機能があるが、世界的な潮流になっているSDGs(持続可能な開発目標)を考えると「(アパレル製品の)大量生産・大量廃棄問題に焦点が当たる」と捉える。その上で「単純な機能は消費者から選ばれなくなる。実感できる機能に注目が集まる」と話す。

 そうした流れに対応するのが気化熱冷却試験だ。気化熱を利用するクールタオルが人気を博しているが、明確な評価方法はなかった。今回の試験は温度40℃・湿度65%といった環境の中で生地に水を滴下して温度の下がり方を判別する。従来はあやふやだった部分が数値化できる。

 温度や湿度は顧客の要望に応じて設定できる。納期や価格は通常の機能性試験と同程度に設定している。気化熱冷却試験は「顧客の声からヒントを得て自ら考えて作った試験」とし、今後もさまざまな需要を拾い上げて新たな試験を開発する。それによって繊維業界に貢献する。

〈研究開発のパートナーに/ボーケン品質評価機構/微生物試験を3極で増強〉

 ボーケン品質評価機構は、清潔・衛生関連の試験で通常の規格試験にとどまらず、依頼企業と共同で試験方法・評価基準のカスタマイズなどにも取り組むことで、研究開発パートナーとしての役割を担うことを目指す。

 機能加工・素材の重要性が高まる中、繊維企業の間では商品開発スピードを上げたいとの要望が高まる。これに対してボーケンは商品の企画・開発段階から参画し、試験前のスクリーニングなど開発支援を積極的に実施している。評価技術を生かし、衣料分野だけでなく介護、不織布、自動車、ヘルスケアなど幅広い用途での取り組みを進める。

 新型コロナウイルス禍を契機に要望が増加している抗菌・抗ウイルス性試験は繊維だけでなく樹脂メーカーなどからの依頼も増加した。このため抗菌性試験を担う東京微生物試験センターを4月に増床し、試験能力は従来の5倍以上となる。

 抗菌性試験のほか抗ウイルス性試験も担う大阪微生物試験センターも昨年10月に増床した。中国の上海微生物試験センターでも抗菌性試験を実施しており、3極体制で試験需要に応える。上海微生物試験センターは繊維のほかプラスチックの抗菌性試験にも対応する。

 繊維評価技術協議会の「SEK」マークや抗菌製品技術協議会の「SIAA」マークなどの認証事業にも積極的に参画するほか、新規試験方法の日本産業規格(JIS)化や国際標準規格(ISO)化などにも取り組む。

 さらに今後は循環型社会に向けた取り組みのサポートにも力を入れる。耐久性向上やリサイクルに関連する評価方法の確立などサステイナビリティーにつながる試験方法の研究開発を積極的に進める。