特集 タオル製品(2)/有力製造卸の進路

2021年05月31日 (月曜日)

〈浅野撚糸 専務 浅野 宏介 氏/「パーフェクテン」拡販へ〉

  ――2021年10月期に向けた上半期の商況は。

 主に小売りや問屋向けを販路とした卸売りが苦戦傾向にあります。これは新型コロナウイルス感染拡大による店頭市況の低迷が原因ですので、じっくり回復を待つことが最善策だと捉えています。

 半面、苦戦が予想されていた直営店「エアーかおる本丸」の売り上げは健闘しています。ECサイトやテレビ通販といったB2Cの売り上げはほぼ計画通りです。さらに、ポルトガルをはじめ海外向けの糸の販売が復活の兆しを見せています。

  ――下半期の注力事項は。

 開発に10年以上かけた「パーフェクテン」の拡販に注力します。パーフェクテンは化粧道具や美容関連品の一つとしての展開に特化した商品シリーズです。

 4月に出展した美容関連見本市「ビューティーワールドジャパン2021」では美容関連企業や関係者から好感触を得ました。現在、物販に注力する美容関連企業や美容院オーナー、サロンオーナーに向けて商談と商品提案を積極的に進めています。

 今後も「エアーかおる」シリーズに加えて、パーフェクテンをもう一つの商品の柱にしていきたいと思います。

  ――パーフェクテンの最大の商品特徴は。

 髪と肌の拭き心地が軽いのが特徴です。吸水性と速乾性はもちろん、しなやかさと耐久性を併せ持つ高品質かつ高機能な美容関連商品としてアピールを図ります。

〈小杉善 社長 小杉 啓生 氏/違った切り口の提案必要〉

  ――新型コロナウイルス禍の中での動きは。

 2020年は、春先の端境期から夏場の需要期にかけて幅広い販路で堅調さを維持できました。21年2月期は前年比で増収増益となりました。今期の出だしは新生活需要の減少などで、前年比を少し下回る出だしですが、ほぼ予測した通りの水準です。

 販路別で見るとリーフレットやカタログを通じた通販、宅配型に堅調さが見られる一方で、店頭販売、イベント用途などに減少が目立ちます。

 ネット通販もリアル販売など既存の商流をフォローする形で成長が目立ちます。大手モール型の通販サイトが引き続き販売を伸ばす一方で、アパレルメーカーなどの単独サイトの勢いが薄れるなど、ネット通販の中でも濃淡が出ているように感じます。

  ――売り場の動きは。

 大手モール型のネット通販ではアウトドアブームと絡めたタオルの提案が消費者に受け入れられているようです。

 “おうち時間”に関する新需要も生まれています。昨年はタオルを備蓄するための購入だった印象を受けましたが、今年は「快適さをグレードアップさせる」傾向が出ており、違った切り口での提案が必要だと感じます。

 当社としては積極的に仕掛けたい市場環境ではあるのですが、先行きが不透明で、販売先の積極性が失われています。顔を合わせての商談が難しい状況が続きそうです。

〈スタイレム 事業本部 ガーメント事業部 第2部ギフトコミュニケーション課課長 小倉 隆司 氏/「贈」のノウハウ蓄積〉

  ――商談、販売の近況は。

 この4月にカタログ販売向けの内見会を東西で開きました。集客、来場側ともにかじ取りが難しい状況にあります。

  ――「今治謹製」直営店開設から8カ月です。

 開設から運営まで、完全に新型コロナ禍の中での展開ですが、さまざまな成果を得られています。

 特に消費者の声を直接集められるメリットは大きい。これまで、贈答の「答」として用いられることが多かった今治謹製ですが、直営店ではパーソナルギフト、プレゼントの「贈」として選ばれるケースが見られます。

 直営店によるブランドアピール効果も得られたようで、百貨店での「今治謹製」販売も昨年比で増加しました。ギフト用途だけでなく、百貨店のネット通販でも引き合いが強まりました。

  ――新型コロナ禍の中での市況の変化は。

 ブライダルなど贈答の「答」の需要の動きが急速に不安定になる中で、「贈」に適した製品開発や提案手法の蓄積は重要度が増しています。

 今治謹製でも父の日、母の日、バレンタインデーなど記念日や卒業や定年退職などセレモニーに絡めたキャンペーンを重点展開し、パーソナルギフト、プレゼント用途の開拓を進めます。

 直営店店頭での刺しゅうサービスなど店舗発信の企画を増やします。得られた「贈」のノウハウは百貨店向けなどB2Bの既存販路への提案にも反映していきます。

〈ナストーコーポレーション 社長 尾池 行郎 氏/機能を軸とした提案を継続〉

  ――2021年4月期の見通しを。

 前年比で増収増益となる見込みです。「巣ごもり需要」によってチェーンストア向けが堅調だったこと、素材による差別化提案がOEMでも受け入れられたことなどが奏功しました。

 この間に急成長していたドラッグストア向けの販売に一服感が出るなど、変化がありますが、提案によっては、今後も拡大が見込めそうです。

  ――今期(22年4月期)の展望は。

 市場の動向は新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言の継続によるイベント中止や店舗閉鎖など見通しが付きにくい。

 ただし、生活感のあるリビング商品全般については、堅調な売れ行きが続くとみています。

 タオルの製品提案では、消費者が「欲しい」と感じる製品を意識して打ち出します。これまでもスーパークールタオルが夏場のヒット商品となっており、今後も機能による差別化を軸にします。

 これら差別化製品は利益率を意識した価格設定にしていきたい。もちろん、単なる値上げとならないよう、付加価値を高め、それが売り場にも消費者にも伝わり、受け入れられる形を確立します。

  ――具体的な取り組みは。

 5月にクラウドファンディングを通じた新製品の先行提案を行います。世界的に重視されるSDGs(持続可能な開発目標)の理念に沿った生産体系を海外でも構築し、会員制交流サイト(SNS)を通じてアピールしていきます。

〈日繊商工 社長 俣野 太一 氏/改めて需要創造に取り組む〉

  ――新型コロナウイルス禍の影響が続いています。

 2020年は、事業運営、販売戦略ともに、どのように対応するべきか手探りの部分が多かったのですが、今年は少しずつ見えてきました。

 社内での在宅勤務の体制作りや4月上旬に展示会を開催して商談ができるなど変化も出てきました。消費者や販売先からタオル製品に要求される要素にも新型コロナ禍による変化が表れています。

 “おうち時間”が増え住生活環境を良くしようという意識や、これまで共用だったタオルを1人1枚にしようという意識は新型コロナ禍以降に顕著になってきました。

 当社の4月展では清潔、健康志向への対応やアウトドア、キッチンでの使用に向けた提案も行いました。

 他業種では、リモートワークに合わせたパジャマスーツなど“新発明”とも呼べる製品提案も出ています。当社でもタオル分野で新たな付加価値を打ち出し、新たな需要を創出していきます。

  ――販路の動きは。

 ネット通販は既存が伸びたり、新たに参入したりと急速に拡大しているようです。

 一方で、リアル店舗をはじめとした“人を集めることで成立していた業態”は苦戦しており、縮小やネット通販での代替など構造変化にさらされています。

 当社でも自社ネット通販の充実を進めるとともに、タオルを中心にさまざまなジャンルの製品に扱いを広げ、新しい売り場の開拓を進めます。

〈野村タオル 社長 野村 佳弘 氏/時代に適応できる人材育てる〉

  ――前期(2021年2月期)の業績はいかがでしたか。

 ネット通販やホームセンター向けが堅調だったため増収増益でした。新型コロナウイルス禍で蒸発したビジネスもありましたが、新たに生まれた需要を取り込むことができました。多様な販路先があったことが奏功したと言えます。

  ――では、今期の立ち上がりはいかがでしょうか。

 今年は新型コロナ禍から、ある程度は回復してくるかと思っていましたが緊急事態宣言の発令もあり先が見通せないのが不安です。前年にあったマスク関連などの特需が見込めそうもないですし、東京五輪・パラリンピック向けの動きもまだ見えません。とは言っても現状はそれほど悪い状況ではありませんので、前々期並みの業績を見通しています。

  ――今後の展望を教えてください。

 先が見通せないため動きにくいですが、ネット通販をはじめ、量販店やディスカウントショップ向けなど、当社の顧客でも元気な会社は多いので、そうした企業への深耕は引き続き図っていきます。将来的には当社のブランドを立ち上げ、直販という方向性も考えています。

  ――課題は何でしょうか。

 従業員はここ数年でかなり若返りました。特に20代の人材が増えてきましたので、今後彼らを主力とするべく人材育成をどう進めていくかが重要です。時代の変化に対応しつつ、時代に合った人材の育成を進めていきます。

〈プレーリードッグ 社長 松岡 良幸 氏/ライフスタイル全般に提案〉

  ――時機をとらえた提案が続いています。

 2020年11月までマスク関連製品、トートバッグの販売がけん引し、21年3月期は増収増益を見込んでいます。

 大きく販売を伸ばした不織布マスクでは、安定して国内市場に供給されるようになった昨年6月ごろからはマスクケースの提案を充実させるなどで差別化を図りました。トートバッグもレジ袋有料化の流れに乗せられました。

 新型コロナウイルス禍の中で消費者の志向、売り場の環境の変化のスピードが上がっており、今期はまた違った提案が必要になるとみています。

  ――タオルの市況をどのように見ますか。

 冠婚葬祭、中元・歳暮などの贈答用途で全般的な苦戦が見られます。特に贈答の「答」の落ち込みが激しい。儀礼的な形でなく、実需に即した製品開発、提案がより重要度を増してきました。

 タオル、繊維製品に限らず、幅広いジャンルの提案を行うため、社内の情報共有を強化し、部署を横断する形での企画、需要の掘り起こしを行います。ネット通販向けでは、より短期間での売り上げ動向を比較し、良い動きを早期につかみ、対応を厚くするなどの動きも進めています。

  ――繊維製品以外の新提案が目立ちます。

 今年の中元商戦に向け、魚介類のカタログ通販も始めます。ライフスタイルに関わる幅広いジャンルに提案の幅を広げていきます。

〈本多タオル 社長 本多 正治 氏/変化に対応し新たな販路模索〉

  ――2021年8月期の見通しはいかがですか。

 新型コロナウイルス禍の影響で微減収微減益の見通しです。前期はマスクなどの特需がありましたが今期はそうした商品の動きは芳しくありません。ただ、吸水性に優れ従来のバスタオルをコンパクトサイズにした「バスタオル卒業宣言」は引き続き好調さをキープしており、厳しい中ですがドラッグストアや量販店向けなど新規開拓も進みました。

  ――今後に向けて強化することは何ですか。

 新型コロナ禍で先行きは不透明ですが、既存先へのアプローチをこれまで通り進めながら、新規開拓に取り組んでいきます。新型コロナは悪い面だけでなく、新しい需要が生まれるなど良い面もありました。そうしたことに光明を見いだして、アンテナを高くし果敢に挑戦していくことが重要です。今後、日本国内では少子高齢化による人口減少も進みますし新しい販路を模索していきます。

  ――そのための方策はありますか。

 バスタオル卒業宣言は新規開拓を進める上での良い武器になっていますので活用をさらに進めます。当社では営業に携わる人材が順調に育ってきていますので、会社として彼らをバックアップしていきたいですね。もちろん、バスタオル卒業宣言に次ぐ新たな商材の開発も行います。付加価値を高めながら、商品のネーミングやパッケージデザインにこだわるほか、発信も強化します。