転機を迎えた商社繊維事業 2020年度決算から(4)/医療・衛生関連は好調

2021年06月03日 (木曜日)

〈ガウンなど寄与して大幅増益/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアの2021年3月期業績(帝人グループ繊維・製品事業の業績)は、売上高3149億1300万円(前期比2・8%増)、営業利益175億300万円(223・3%増)だった。医療従事者向けの医療用防護具(ガウンなど)の供給が貢献し、利益を大きく伸ばした。

 医療用防護服以外の衣料繊維を見ると、テキスタイルや重衣料は苦戦したが、巣ごもり需要や節約志向のニーズを捉えた衣料品の販売は拡大した。産業資材はイベントなどの減少でテント・重布は勢いを欠いた。自動車関連は期後半から回復に入った。

 今期は環境、インフラ、モビリティー、ヘルスケア、グローバルテキスタイルの重点5領域に引き続き注力。回復が遅れている衣料繊維分野は環境配慮と機能性を兼ね備えた素材開発を進める。

〈繊維が苦戦/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは21年3月期単体決算で、売上高738億8400万円(前期比12・9%減)、営業利益9億1200万円(46・3%減)、経常利益5億9300万円(64・3%減)の減収大幅減益を強いられた。

 繊維部門は売上高205億2200万円(26・9%減)と大きく後退。スポーツアパレル、インナー、ユニフォーム、中東の全4部門が低調だった。

 高機能材部門は売上高533億6200万円(6%減)。海外フイルムが「コスモシャインSRF」の好調で増収となったほか、ディスポーザブル医療商材の受注が増えメディカルが増収増益。国内フイルム、エンジニアリングプラスチック、機能繊維の輸出、VOC処理装置の輸出は減収となった。

 22年3月期では、売上高770億円、営業利益8億円、経常利益8億円を見込んでいる。

〈ファッション衣料用途振るわず/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスの21年3月期決算(単体)は、売上高1078億円(前期比10・8%減)、営業利益15億5千万円(3・4%減)で減収減益だった。繊維事業は新型コロナウイルス感染拡大でファッション衣料用途が振るわなかった。樹脂化学品および建材事業は増益を確保した。

 繊維はマスクや防護服などの防疫資材が伸びたが、ファッション衣料系の各用途(スポーツ、インナー、アウター、ライニング)は勢いを欠いた。タイ、中国・上海に展開している子会社の業績は売上高61億円、営業利益1億4千万円。

 中期3カ年計画の最終年度である21年度は、サステイナブル(環境・省人化)、メディカル・ヘルスケア(健康・安全)、車両関連などの重点領域の強化を重視した施策を推進する。