「ITMAアジア」の日系部品メーカー出展者/精密加工技術でオンリーワン/足元堅調も将来に危機感

2021年06月17日 (木曜日)

 【上海支局】12~16日まで上海市内で開かれた国際繊維機械見本市「ITMAアジア+CITME2020」の日系部品メーカー出展者は、超精密加工技術を用いた製品で中国でもオンリーワンのポジションを築いている。各社とも中国内販の足元は堅調だが、地場メーカーの追い上げを前に将来への危機感を隠さない。新規分野開拓やさらなるコスト削減、一層の差別化により、優位性を維持しようとしている。

 化繊ノズル製作所は、合繊紡糸用ノズルと不織布製造用ノズルなどをパネル展示した。マスクに使われるメルトブロー不織布用ノズルは、新型コロナウイルス禍を受け、2020年2月から受注が一気に増えた。今は落ち着いているが、防護服や使い捨てベッドシーツなどの医療資材のスパンボンド不織布向けノズルへの引き合いが引き続き強い。

 しかしこうした不織布は供給過剰に陥っており、今後の見通しは厳しい。そのため、今回展では複合紡糸用ノズルのアピールに余念がなかった。複合紡糸用も地場メーカーが力を入れているため、新しい断面のものを同社から顧客に提案し、需要を喚起していく戦略を描いている。

 日本ノズルは、スパンレース不織布やメルトブロー不織布用のノズルと製造設備、湿式紡糸ノズルなどを訴求。メルトブロー不織布のサンプルを用意し、同社製造設備がポリプロピレン製だけでなく、生分解性ポリマー使いなども生産できることを紹介した。メルトブロー不織布メーカーが競争激化に対応するため、さまざまなポリマーを取り扱えることを重視しているためだ。

 マスク需要の急拡大を受け、地場ノズルメーカーが乱立した。現状は地場メーカーとの技術力の差は歴然としているが、将来キャッチアップしてくる可能性もあるため、加工技術での一層の差別化と商品のアップグレードに取り組んでいく。

 高山リードは各種織機用リードや、経糸準備機用リード、それらのメンテナンス機器を出展した。内販はガラス繊維用織機向けが好調で、売り上げ全体の半分以上を占めている。ガラス繊維は電子製品の基盤に使われるもので、高品質が求められ、同社製品が選ばれている。

 地場の競合メーカーが力を付けてきている中、品質のさらなる向上に取り組みながら、工場の多能工化などで製造コストを下げ、価格競争力を高める努力を続けている。

 湯浅糸道工業は、糸道の新製品をアピールした。同社製品は、中国でも高級ゾーンで高いシェアを誇る。地場合繊メーカーの設備投資を追い風に、売り上げ規模を年々拡大している。

 合繊メーカーの品質要求が高まっており、高品質の糸道の需要は今後、さらに拡大しそうだ。一方、糸道メーカー間の競争も激しくなっていることから、さらなる差別化と商品開発に力を入れていく。