繊維ニュース

特集 スクールユニフォーム(7)/アパレル編/独自の取り組みが鮮明に

2021年06月18日 (金曜日)

 公立を中心に生徒数が減少する中でも、性的少数者(LGBTQ)の人々への配慮などで制服のブレザー化が進み、今入学商戦は制服モデルチェンジ(MC)が活況だった。新型コロナウイルス禍の影響が昨年に比べて限定的だったため、学生服メーカー各社の独自の取り組みが鮮明になってきている。

〈今春のMCは120校超/ジェンダーレス制服を拡充/トンボ〉

 トンボは今入学商戦、制服モデルチェンジ(MC)校を120校超獲得した。ライセンスブランド「イーストボーイ」や、デザイナーの松倉久美氏とのコラボレーション企画などで私学の大型校を中心に採用を得た。

 性的少数者(LGBTQ)の人たちへの配慮などで進む制服のブレザー化にも対応。男女兼用ジャケットなど「スタイルによるデザインの差がつかない制服が主流」(恵谷栄一取締役営業統括本部副本部長)になりつつあり、今後「ジェンダーレス制服はトンボというイメージを定着」させる。

 機能性を軸にした商品では、織物調ながらニットのジャケット生地「ミラクルニット」が優れたストレッチ性や軽量性で評価され、累計採用校数が100校近くに達した。

 店頭商品の販売も堅調に進んでいる。詰め襟学生服は2020年7月~21年4月の販売が微増、セーラー服は2%増となった。新型コロナウイルス禍の中、抗ウイルス関連や洗濯耐久性に優れる商品も販売が増加した。

 人工知能(AI)を活用した採寸サービス「ハカルンジャー」、自社ECサイト「トンボスクールモール」で採寸から販売まで一貫した提案も奏功し、販売につながった。

 来春はジェンダーレス制服やウイルス対策商品を強化し、ニットなど新機能素材を拡充。採寸やECのシステムも充実させ、小売店と拡販できる仕組み作りを進める。

〈「スマート採寸」採用拡大/教育ソリューション深化も/菅公学生服〉

 菅公学生服は今春、スクールで前年並みのモデルチェンジ(MC)校を獲得した。エリアごとの営業の強化に加え、性的少数者(LGBTQ)の人々に配慮した制服のブレザー化にも対応し、堅調に採用校を得た。店頭商品は新型コロナウイルスの影響を受けるも、昨春のような全国的な休校がなかったため、夏物の販売への影響は限定的だった。

 人工知能(AI)を活用した「スマート採寸」は124校に採用され、2万人の採寸データを取得。スマートフォンの撮影によって家庭での採寸が可能となり、学校側の負担を軽減。長年の学校採寸のデータを活用しお薦めサイズを提案するレコメンド機能も好評だった。

 今後、「採寸とレコメンド機能の精度をさらに向上させ、お客さまの安心感と利便性を高めていく」(問田真司常務)などし、来春の全面的な採用に向けて取り組む。

 スポーツは、自社ブランド「カンコープレミアム」の採用が順調に増加。感染対策で制服よりも洗いやすい体操服での通学が許可される中、買い替え需要が増えたことも販売拡大に寄与した。

 教育ソリューション事業はキャリア教育、人材育成、学校魅力化、働き方改革と四つの柱で取り組みを強化。生徒の非認知能力(数値化が難しいコミュニケーション力や共感性)の向上に向けた活動のほか、教員の人材育成など学校をサポート。「学校中心に社会全体で生徒の学びを支える」(曽山紀浩取締役兼カンコーマナボネクト社長)事業へと深化させていく。

〈AIの採寸100校に導入進む/SDGsも拡充へ/明石SUC〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC)は今春、制服モデルチェンジ(MC)校を堅調に獲得した。全国的な営業の強化に加え、性的少数者(LGBTQ)の人たちへの配慮で進む制服のブレザー化に対応して実績を積み上げた。

 店頭は、抗ウイルスなどの機能を持つハイブリッド触媒「ティオティオプレミアム」加工の商品をはじめ販売が順調だった。昨春のような全国的な休校もなく、夏物にも堅調に注文が入っている。

 スポーツも「デサント」の累計採用校数が2千校を超えたほか、自社ブランド「アスリッシュ」でマンモス校の採用を獲得するなど安定感を見せた。

 人工知能(AI)を活用し、スマートフォンの撮影や手採寸の数値でサイズを推計する「明石インテリジェンス採寸」は、今春に多くの採用を獲得。現在100校への導入が進んでおり、「長年蓄積した採寸データの活用で、成長を見越したサイズの提案を強化する」(柴田快三常務営業本部長)考えだ。

 来春は制服のブレザー化でMCが増えるとみており、営業や開発のほか、AI採寸などのデジタル化を強める。今年から企業指針に掲げたSDGs(持続可能な開発目標)の活動も広げ、防災やエコ、LGBTQの人々の心のケアなどを推進する。

〈営業力強化方針が結実/ブレザー化への対応に力/瀧本〉

 瀧本の21年入学商戦は、売り上げ、数量ともに前年を上回った。営業力強化の方針が実った形だ。

 「顧客提案に専念させる」という考えの下、営業スタッフから発注業務などを外し、身軽にした。その結果、営業スタッフが学校や販売店などを訪問する機会が増加。新規を回れる時間的余裕も生まれ、「“試合回数”が大きく増えた」。その効果が、21年入学商戦での増収、数量拡大につながった。生徒数の多い“大口物件”を獲得できたことも寄与した。

 22年入学商戦に向けては、主に中学校で詰め襟学生服やセーラー服からブレザー制服への切り替えが急ピッチで進んでいることを受け、対応に力を入れる。ブレザー化の背景には多様性重視という社会的潮流がある。同社も学生服メーカーとしてこの流れに積極的に対応する。その一環として取り組むのが生地からの開発強化だ。

 ポリウレタンを使用せずに18%~19%の伸縮率を実現した「スーパーストレッチ」の生地を使った学生服がブレザー化の流れの中で好調に推移している。今後もストレッチ、ウオッシャブル、抗菌・抗ウイルスといった切り口で生地開発に取り組む。

〈今入学商戦の販売は増加/MCやブラッシュアップで採用/オゴー産業〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は制服モデルチェンジ(MC)、生地やシルエットを刷新するブラッシュアップで採用を獲得し、今入学商戦の販売が前年比で増加した。

 緊急事態宣言で全国的な休校が広がった昨春に比べ、今春は基本的に通常通り授業が行われたことから半袖シャツなど夏物の販売も堅調だった。

 一方、文具メーカーのサクラクレパス(大阪市中央区)とのコラボレーションで販促する体操服などは、新型コロナウイルス禍でショッピングセンターなど提携店の販売に影響を受けた。

 そのため、同商品の専用ECサイト「にじいろスキップ」の販売や会員制交流サイト(SNS)での発信を強化。大手ECモールでの販売と併せて訴求する。今後はにじいろスキップのアクセス数や売れ筋を分析。「中高生向け商品のECサイトの構築含めてネットの販促を強化」(片山一昌取締役)する。

 その他商品では、清潔・衛生関連のニーズへの対応を強化。抗ウイルス加工を施した布帛シャツなどの展開を本格化させる。

〈販売店との連携強化/新たなニーズ取り込みに注力/金原〉

 学生服・ビジネスユニフォーム製造卸の金原(横浜市)は、2021年度学生服商戦で、有力販売店との連携強化や、換気・猛暑対策によるポロシャツ需要の拡大、ジャンパースカートのOEM生産受注増などに取り組んだ。少子化が進む中、前年を上回る実績に結び付けた。

 学生服製造販売を手掛けるこのみ(新潟県妙高市)との業務提携による効果も出てきている。学生服ブランド「コノミ」が生徒層に広く浸透していることから中学標準服の受注につながった。制服シルエットも企画段階から決めていくなど細かい対応で進めており、来期は高校を含めてさらに件数が増えていく可能性があると言う。

 原料高などによる来春に向けての製品の値上げ交渉については、値上げ幅をどれだけ抑えられるかさまざまな方策を探る。

 一方、新型コロナウイルス禍に伴う感染予防対策用品の需要増などを背景に、グループ会社で消防服製造卸を行う関東小池(相模原市)は引き続き大幅増収、防火服製造卸の共成(東京都江東区)も前期比増益となっている。グループ全体での情報共有を進めていくことで、21年6月期決算(決算期変更で11カ月の変則決算)では売り上げの前期比超えを目指す。

〈国内、中国向け共に伸長/組織改編で活性化図る/ハネクトーン早川〉

 スクールネクタイ製造卸のハネクトーン早川(東京都千代田区)の2021年国内入学商戦と、中国向け共に順調に伸び、同分野の売り上げは前年比103%強の増収となった。

 国内向けでは、性的少数者(LGBTQ)対応にもなるオプション品などのニーズが増えているほか、セーラー服のスカーフに替わり、成形リボンに移行する流れが続いている。中国では、日本の学生服が一般ファッションとしてブームになっていることから、慎重に需要を見極めながら強化していく。

 下野工場(栃木県下野市)では、新たにCAD/CAMやエッジコントロールミシンなどを導入して設備を増強。新卒4人を採用して人員の補充も行った。

 22年4月期では、学校側の世代交代も進んでいるため、ニーズに合わせた新しい提案を積極的に行っていく方針。昨年10月に実施した値上げ効果も今期に反映される。

 5月には社内の活性化を目指し組織改編を実施。スクール分野とビジネス分野の事業別営業推進チーム制とし、一気通貫で業務を進めていく体制を構築した。

〈適正在庫への取り組み本格化/感染対策用品の拡充も/佐藤産業〉

 ユニフォーム製造卸の佐藤産業(東京都千代田区)は、今入学商戦の売り上げが前年を若干上回って推移しており、2021年8月期決算で前期越えを目指していきたいとしている。

 今期は、在庫問題の解決に取り組んでいる。新たに需給分野を管理する部署を立ち上げ、計画生産の精度向上や適正な備蓄率による在庫の調整に注力。ECによる販売では、今春1校で使用実績ができた。

 主力商品は、家庭洗濯に対応できる詰め襟学生服「エレガンスブラック」、高級ラインの「エッセスコラ」、ベーシックデザインの「グリーンメイト」を引き続き3本柱として展開していく。

 新型コロナウイルスの感染防止対策商品を拡充している。千葉県内の物流センター内にクリーンルームを設置し、3層構造の高機能不織布マスクの生産を4月から開始した。柄やデザインをカスタマイズできる点が特長で日産最大3万枚まで対応できる。既に大手飲食チェーンなどからの受注も得ており、新型コロナ感染が収束に向かえば、スポーツ観戦やイベントなどでの需要がさらに拡大すると見込む。

〈高利益体質へ転換進める/独自の生地開発に注力/吉善商会〉

 吉善商会(東京都中央区)の2021年入学商戦は、ほぼ前年並みの着地となった。一方、原料高が進む中、製造原価の削減策に注力したことで2021年7月期では増益を見込む。

 原価削減の取り組みでは、品質基準を満たし、検品体制が整っている協力工場への発注を進めるとともに、軽量でストレッチ性のあるウール、ポリエステル各50%のオリジナル生地の導入拡大などによって効果を得る。原料高騰の影響を受け、来期は製品価格について10%をめどに値上げを実施する予定。

 「今までの常識を打ち破る商品開発にも取り組んでいる」と吉村善和社長。制服を着用する生徒の立場に立って、着用感、デザイン、機能性にこだわった生地開発進め、再来年以降の本格投入を目指す。

 海外生産比率は、中国で体操服、ベトナムでシャツの一部などを行っているが、全体の売り上げに対しては5%程度。20年ほど前には中国内販を行っていたが収益面から一時撤退した。価格要求が高まる昨今の現状を踏まえ、生地や縫製の海外生産について、新型コロナウイルス禍の状況次第としつつも再度検討している。

 日本と中国の学校交流を進める日中新世紀会の理事長を務める吉村社長は、「新型コロナ禍でも交流を閉ざすわけにはいかない」とし、ネットを利用したリモートでの交流に取り組む。

〈6月期は増収へ/販売店の支援策を強化/ベンクーガー〉

 ベンクーガー(岡山県倉敷市)の2021年6月期売上高は前年比増収で着地しそうだ。今春、販売店との関係強化で詰め襟学生服を中心に販売が増えたほか、性的少数者(LGBTQ)の人たちに配慮した制服のブレザー化にも対応し、一定の成果を上げた。近年投入したニットシャツでも多くの引き合いを得た。

 最近では販売店への支援策で関係を強化。「制服専門店の将来像」をテーマにした勉強会を各エリアで開催し、意見交換の場として評価を得ている。

 同社は健康食品や化粧品などを製造販売する自然共生ホールディングス(岡山市)の子会社で学生服を担当している。その他子会社の美容、健康食品、教育などと合わせて販売店の閑散期対策も検討中だ。繊維製品以外の卸事業など含めて販売店の事業多角化をサポートする。

 来春に向けてこうした活動を強化するほか、伊藤忠商事と開発したスマートフォンによる採寸アプリ「ワンメジャー」を訴求。販売店の勉強会で使用体験などを実施する。

〈晃立/制服を支えるプリーツ加工/生産強化で加工シェア向上〉

 学生服、ジーンズの製品加工を主力とする晃立(岡山県倉敷市)は、女子学生服のプリーツ加工専門の新工場が稼働したことで、今春の学生服向けの注文で実績を積み上げた。生産キャパシティーの強化で自社の加工シェアを高める。

 同業者の廃業が相次ぐ中、同社は制服の別注などで細かい注文や多品種小ロットに対応して受注を確保する。

 昨年10月には、地場産業である学生服の安定供給に貢献したいとの思いもあって、プリーツ加工など学生服向けを中心とする小川工場(倉敷市)の敷地内に新工場を設立。2019年にもプリーツセッター1台を増設したが、さらに1台導入して4台体制に増強した。

 プリーツセッターで型紙ごとに成型真空熱処理する際、1分単位での時間変更など細かな設定に対応。「プリーツ加工40年で培ってきたノウハウ」(藤川由典社長)で、ウール100%からポリエステル混まで薬剤を全く使わずに3年間の着用でも取れないプリーツ加工を展開する。

 新工場の稼働も順調で、全社では前年比約1・5倍の日産3千点を加工している(フル稼働時の加工能力は日産4千点)。

 性的少数者(LGBTQ)の人々への配慮でスカートとスラックスの選択制が広がるなどして「小ロット短納期の注文が増え、3月は例年以上に忙しかった」と言う。それでも全体の景況感は安定しており、「5月下旬も備蓄のための注文が堅調に入っている」。

 学生服向けの加工が堅調に増える一方、カジュアル向けでは新型コロナウイルスの影響を受け、上半期(1~6月)売上高は前年同期比横ばいを見込む。今後もプリーツ加工の付加価値を高めるなどして、売り上げの維持拡大を図る。