繊維ニュース

特集 スクールユニフォーム(9)/商社編/潮目の学販業界で勝ち抜く

2021年06月18日 (金曜日)

 中学校制服のブレザー化を筆頭に、学生服業界の潮目が変わりつつある。求められるのは多様な感性への理解と、変化を促すような商品提案だ。商品面では編み地拡大への対応が一つの鍵になる。ストレッチやウオッシャブルなどのイージーケア性や抗菌・抗ウイルス機能へのニーズも強い。

〈幼稚園服「インスキップ」立ち上げ/8月3日に「服育ラボ」開催/チクマ〉

 チクマのキャンパス事業部は、2021年春入学商戦で少子化の影響や昨年実施した値上げ前の駆け込み需要の反動が出た。トライアル的な位置付けで新たにデジタル採寸を実施したが、独自に行った手法については来期に向けてさらなるグレードアップが必要との判断を示している。

 セーラー服の中に着用することに特化した「インセーター」や、授業時間に当たる45分間で濡れた靴下が乾くという「瞬乾ソックス」の独自商品が好調。学校制服を巡る周辺環境は大きく変化しており、西日本を中心に広まっている中学統一服普及の動きを注視する。

 今春、“護れる”に特化した幼稚園服ブランド「インスキップ」を立ち上げた。泥汚れに対応した防汚加工や抗ウイルス加工、UVカットなど用途に合わせた機能を付加したスモック、ストレッチ性を高めたフォーマルシリーズなどをそろえる。幼稚園服アパレルを通して販売する。

 8月3日に24回目となる「服育ラボ」をオンラインセミナー形式で開催。学校・教育関係者を対象に、宝塚大学看護学部の日高康晴教授が「学校における性的少数者(LGBTQ)教育について」をテーマに講演する。

〈「Zシャツ」を学販初投入/編み地への切り替え進める/東洋紡ユニプロダクツ〉

 東洋紡ユニプロダクツのスクールユニフォーム事業の21年入学商戦向けは前シーズン比ほぼ横ばいだった。主力の織物シャツ地の需要が低調だったもののトリコットシャツ地と同製品販売で後半巻き返した。今後もトリコットや丸編み地の取り扱い拡大を図る。

 22年入学に向けては「編み地への切り替えがスキームになる」と見通す。同事業部の主力商材は旧合同商事の時代から織物製のシャツ地。しかし、軽装化やイージーケア性を優先する流れの中で学校ではシャツ、アウター共に編み地製への切り替えが進んでいる。「国内外の東洋紡グループ全体でこの流れに対応していく」ことが重点課題になる。

 その一環として、東洋紡STCが展開する丸編み地製シャツ「Zシャツ」を学販で初めて投入する。

 22年入学商戦に向けては同時に、東洋紡グループ内で協業した新商品開発も重点的に進める。例えば、学販シャツでは防透け機能が必須になるため、再生ポリエステルのフルダルタイプを開発中という。

 効率生産も重要テーマに位置付ける。学販業界でも価格要求が厳しさを増していることから海外などで効率生産の機能を磨き、コストダウンを図る。

〈「アウトラスト」でSDGs対応/強みの新柄提案力磨く/牧村〉

 牧村はスクール事業で、SDGs(持続可能な開発目標)を意識した素材の拡販に臨むとともに、引き続き新柄の開発、提案に力を入れる。

 2021年入学商戦の生地販売量は前のシーズン比ほぼ横ばいだった。新型コロナウイルス禍で商談が停滞していたため不安を抱えていたが、結果的には「生地の販売という点では(新型コロナの)影響はほとんど受けなかった」。ただ、商談停滞の影響は来入学商戦で表れてくる可能性もあるため気を引き締める。

 商品面で注力するのは、温度調節素材「アウトラスト」。日本国内の学販向けのニット製品としてライセンス契約しており、SDGsの意識が社会に浸透してきた今、改めて拡販に臨む。抗菌・抗ウイルス、消臭機能などの機能も「社会に定着する」として開発、提案を強める。

 同社の強みは学販向けに毎シーズン約100点の新柄生地を開発する企画力。この新柄を商談時の“たたき台”として活用し、そのまま販売、あるいは別注、半別注へとつなげる。22年入学に向けても約100柄を用意した。秋ごろに個別商談会の開催を計画している。

〈自治体への提案強める/ウールの魅力を再訴求/ナカヒロ〉

 ナカヒロのスクール事業の2020年11月期は前期比増収増益だった。各学生服アパレルが早期備蓄に動いたことなどが追い風になり、学生服地販売が好調に推移した。

 一方、21年入学商戦は「静かなシーズンのまま終わった」。20年入学で早期備蓄が活発だった反動もありアパレルも専門店も追加生産、追加注文に慎重な姿勢を強めたことがその要因。このため21年11月期の業績は厳しく見込むが、「しっかり利益は出していきたい」と力を込める。

 22年入学に向けて力を入れるのが自治体への提案。多様性を認めようとする社会傾向を背景に、主に中学校で詰め襟学生服・セーラー服からブレザーへの切り替えが進んでおり、その決定を自治体が行うケースが多いためだ。地域としては特に九州や中部地区を重視する。各地域のモデルチェンジ校で主力素材の座を勝ち取る「マスターテキスタイル商社」を目指す。

 ウールの価値訴求も引き続きのテーマ。中でも省エネルギー性に優れるニッケの革新精紡糸「ブリーザ」で作った「エミナル」を主力素材に位置付ける。同素材を環境配慮型商材として自治体提案に活用するとともに、アパレルとの共同開発も並行して進める。

〈学生服のEC販売で実績/中学校制服の変化を注視/アカツキ商事〉

 アカツキ商事は、2021年春入学商戦でECシステム「ニッケメイト」による制服販売を新たに8校で実施した。新型コロナウイルス下での非接触採寸などのニーズに応えた。アパレル、学生服販売店との共同展開も含めて、来期以降の本格導入に向け検討を進めている。

 ニッケメイトは、生徒や保護者が自宅で採寸したデータを専用ウェブサイトに入力し、商品を選定。希望に応じて決済まで完結させることができる。今シーズンは通常の着せ付け採寸とほぼ変わらない精度で実績を作ることができたと言う。

 西日本や東海地方を中心に中学校制服を巡る周辺環境が変化している点を注視する。標準服の在り方やそれに対応する素材開発など、他地域へも広まっていくことを前提に対応できる体制を築く。

 一昨年から杉野服飾大学と産学共同プロジェクトを実施している。学生による柄デザインを生かした素材開発に取り組むことで、「着る側に近い感性でデザイン提案できる」と見る。

〈生地・縫製一貫を強みに/シャツ向けニットが堅調/東レアルファート〉

 東レアルファートは学生服で、生地販売と合わせて縫製OEMにも注力する。生産背景を整えており、実績ができつつある。生地・縫製まで一貫した提案を強化する。

 2021年3月期は、学生服向けの販売が前期比で増加した。特にシャツ向けのニット地はストレッチ性やイージーケア性が認知されて引き合いを得た。布帛からニットへの流れも追い風となり「直近数年と同じ高い伸び率を確保」(本間徳倉敷営業所長)したと言う。

 女子制服向けを中心に展開する「トレラーナ」はストレッチ性や軽量性などの機能に加え、天然繊維ライクな加工などが評価されて採用が増えた。性的少数者(LGBTQ)の人々への対応で制服のブレザー化が進んでいることも寄与した。

 インクジェットプリントの柄物は多品種小ロットの流れの中、生産や納期の負担が大きい先染めの柄物の代替として問い合わせが増えている。

 来春に向けて、ポリエステルのストレッチ性など機能性の強みを生かして拡販。ポリエステルリッチの生地や複数の機能性の付与などで提案に力を入れる。

〈抗ウイルス素材さらに拡販へ/SDGs対応にも力/イシトコテキスタイル〉

 イシトコテキスタイルは22年入学商戦に向け、抗菌・抗ウイルスやSDGs(持続可能な開発目標)を切り口とした素材提案に力をいれる。

 21年入学商戦向け素材販売はほぼ前シーズン並みで着地した。新型コロナウイルス禍で同業他社と同様に提案機会の損失が起きたものの、業界全体の底堅さや「営業スタッフの奮闘」により横ばいを維持した。提案手法としてはリモートも導入、商品面ではシキボウの抗菌・抗ウイルス加工「フルテクト」を施した素材が好調だった。この商戦結果に伴い、21年5月期決算も前期比ほぼ横ばいとなった。

 22年入学商戦については「アパレルの生産調整が懸念材料」と危機感を持つが、引き続きフルテクトの拡販に臨むほか、各校で採用が進むトリコットや丸編み地の提案に力を入れる。

 SDGsを念頭に入れた提案も行う。商材としては、水・土壌の保全強化と温室効果ガス排出量を削減するためのシステムである「U.S.コットン・トラスト・プロトコル」から生まれた綿素材、男女兼用柄、再生ポリエステル糸使い、燃焼時の二酸化炭素発生量を抑制したシキボウのポリエステル繊維「オフコナノ」などが中心。