繊維ニュース

特集 環境(3)/有力繊維企業の環境戦略

2021年06月25日 (金曜日)

〈溶剤代替の水系接着剤開発/ベルト用も水系で可能に/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアはゴム補強繊維用の接着剤で、これまで溶剤系が使われていた用途にも使用できる水系接着剤を開発した。含浸性が高く糸のほつれを防ぐことができ、従来の溶剤系と変わらない性能を確認している。

 環境方針「シンクエコ」では「きれいな空気と海を守ろう」を重点目標の一つに掲げており、その方針に沿って開発した。昨年に発表したレゾルシンとホルムアルデヒド(RF)を含まない水系接着剤と合わせ、自動車関連のゴム補強繊維全てに環境配慮型商品で対応できる形とした。

 柔軟性に富むゴムはさまざまな用途で使われているが、タイヤなどの用途では、強度や形態安定性を高めるため繊維コードとゴムを化学的に結合させる。そのために繊維コードの生産工程では、一般的にRFとラテックスから成る水系接着剤が使われている。

 レゾルシンは皮膚刺激性、ホルムアルデヒドは発がん性が指摘されており、これらを含まない接着剤への要望が高い。同社は昨年にRF代替として高分子化合物を使ったRFフリーの水系接着剤を開発した。

 ゴム製品の中には、水系ではなく溶剤系の接着剤が使われる用途もある。自動車のエンジンに使われるVベルトのように、糸が完全にゴムに内包されず外側に露出している用途で、ここでは糸のほつれを防ぐために濡れ性が高い溶剤系の接着剤が使われる。

 同社は繊維コード内部への含浸性を改良した水系接着剤を新たに開発し、ベルト用途にも使えるようにした。繊維コードは長繊維に撚りをかけて束ねたもの。太い糸を束ねると、どうしても繊維と繊維の間に隙間ができるが、新たに開発した水系接着剤は内部までしっかりと含浸して空隙を埋め、収束性(耐ほつれ性)を高める。

 ポリエステル繊維コードとEPDM(エチレンプロピレンジエン)ゴムとの接着では、従来の溶剤系と同等の剥離接着性を確認した。アラミドやポリアミド、炭素繊維などゴム補強繊維に使われるほぼ全ての素材に使うことができる。

〈環境負荷の低さが評価/昨年に新プログラム始動/三菱ケミカル〉

 三菱ケミカルが製造・販売しているトリアセテート繊維「ソアロン」は、環境負荷が小さいことなどが認められ、国内外で高い評価を得ている素材だ。環境への意識がこれまで以上に高まりを見せる中、サステイナビリティーに関する取り組みを深めており、昨年に「ソアグリーン プログラム」を始動している。

 ソアロンは、天然の樹木からできるパルプを原料とする半合成繊維だが、再生を保証するプログラムにより持続可能な形で管理された森林の木材を使用している。国際非政府組織(NGO)の森林管理協議会によるFSC森林認証を取得し、海外の展示会などで積極アピールしてきた。

 ただ個々のテキスタイル商材は糸構成や生産プロセスが多様で環境負荷度を客観的に示せていなかった。テキスタイル商材の環境負荷度を数値化・分類し、改善に向けた課題の「可視化」を図ることを狙いとしたのがソアグリーン プログラムだ。

 設計、製織・製編、染色といった生産段階ごとに内容・工程・手法を検証し、専用に設定した独自の評価基準に基づき採点評価、各商材を等級化して三つのクラス(ソアグリーンレベル)に分類する。例えば、ソアロン100%、ポリエステル複合などでクラスが分かれる。

 環境負荷度を示すことによって、これまでの「素材感」や「品質」などに加えて、サステイナビリティーの視点でも素材を検討することができる。個々の商材の改善に向けたポイントもより明確化することが期待でき、ソアロン全体のサステイナビリティー向上を目指すとしている。

 ソアロンの特性はホームページや会員制交流サイト(SNS)を通じて消費者にも伝え、より幅広い浸透を狙う。

〈サステビジョンを策定/環境技術で新ビジネス/小松マテーレ〉

 小松マテーレは、新環境方針「小松マテーレサステナビリティビジョン」を策定した。今期(2022年3月期)から10年間の取り組みを定めたもので、CO2排出量や水・エネルギー・薬剤などの使用量削減のほか、環境配慮型商品の拡大などに注力する。

 同社は1999年に「小松精練環境管理宣言」を策定し、環境保全・環境負荷低減に重点的に取り組んできた。16~20年度の前計画では、05年比でCO2排出量10%削減、PRTR法対象物質の大気排出量80%削減、ゼロエミッション推進(リサイクル率98・0%)、廃棄物量80%削減などの目標を掲げていたが、全項目で達成した。

 新たに策定したビジョンは50年のカーボンニュートラル実現に向け、10年間の方針を定めた。CO2排出量を原単位で13年比30%削減するなどより高い目標を設定するとともに、SDGs(持続可能な開発目標)の観点を取り入れ、社会貢献や人権保護などの項目も入れ込んだ。

 佐々木久衛社長が環境管理責任者を務め、技術開発本部傘下だった環境推進室を4月から社長直轄組織にするなど体制も整えた。

 工場内で使用する水や薬剤、エネルギーの削減に向け、設備の改良や環境技術の開発とともに、新しい設備の導入も検討する。染色加工工程だけでなく、より少ないエネルギー、水で染色加工できる新しい素材作りにも取り組む。

 世の中の環境保全・環境負荷の低減に貢献する商品の強化を図る。天然成分による「オニベジ」や「ベジベジ」、無溶剤のラミネート加工、バイオ原料使いなど環境配慮型商品を拡販するとともに、既存商品のさらなるエコ化に向けた開発も加速する。今後の新商品開発テーマはほぼ全てに環境が絡む形とする。

 保有する環境技術を外部にも提供し、新しいビジネスを創出する。技術開発本部内に環境・バイオ技術開発部を新設したのもその一環。新しい環境技術に向け、産学連携による開発も強化する。

〈「&+」をカーシートに/ナイロンケミカルに意欲/東レ〉

 東レは2020年度からの中期経営課題「AP―G2022」を通じ環境経営を徹底。グリーンイノベーションプロジェクトによる売上高を1兆円に引き上げる中期戦略に力を入れている。

 繊維事業では、新型コロナウイルス禍の影響で20年度、エコ素材の販売は低調だったが、それでも「PET再生ポリエステルの販売は前年を上回った」と言う。

 21年度は白度やトレーサビリティーにこだわって開発した再生ポリエステル「&+(アンドプラス)」による開発・販促を強化しており、大手SPAや大手量販店、大手インナーアパレル、大手スポーツアパレルとの取り組みが相次いで立ち上がる。

 ファイバー部門が強化するプロジェクトIの一環で、カーシート向けの販売を「第4四半期からスタートさせる」としており、電気自動車のカーシート向けにアンドプラスによるニットを投入する。

 アンドプラスの生産は国内が30%、海外が70%を占めており、今後もあらゆる特品(=差別化糸)のアンドプラス化を急ぎ商品ラインに厚みを持たせていく。

 ナイロンのリサイクルを本格化させる準備を進めており、生産工場内で発生する繊維クズをケミカルリサイクルで再びナイロン繊維に戻す“繊維to繊維”に「22年度下半期から大々的に取り組んでいく」としている。

〈「エコトーク」を前面に/まず「スペースマスター」から/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングはスポーツ素材を中心に環境配慮型素材「エコトーク」の販促に力を入れている。

 「ここに来てエコを求める要望が一気に増えてきている」としており、22秋冬商戦には、PET再生ポリエステルでエコ化した十字断面の吸汗速乾ポリエステル「スペースマスター」を打ち出している。

 さらに、防透け「エクステージ」、接触冷感「ソフィスタ」、抗菌防臭「スペースマスターAG」でもエコ化を急いでおり、早急にエコトークシリーズのラインアップを充実させる。

 スポーツ素材の販売では2020年度(20年12月期)、上半期までは前年並みの販売量を維持したものの、下半期に入って様相は一変。新型コロナ禍の影響を受けたものの、マスクやウエアラブルの販売が好調だったため、大きく落ち込むことはなかったという。

 21年はエコ素材の販促に重点的に取り組み、下半期から新型コロナ前の状況へと回復させ、通年で増収増益を確保したい考えだ。

 エコトーク化したスペースマスターの売り込みを強化しており、あるアパレルが世界戦略企画として打ち出すアイテムに採用されたと言う。

 まず、ポリエステル長繊維関連の商材を100%エコトーク化した後、いずれはリサイクルしやすいアイテムをユーザーと共同で企画し、製品を販売後、回収して再度、繊維にリサイクルする取り組みに意欲を示している。

〈サステ推進プロジェクトを開始/この秋に環境方針を表明/ユニチカ〉

 ユニチカグループはケミカルリサイクルで生産するポリエステル「エコフレンドリー」やPLA繊維・樹脂「テラマック」、ナイロン11「キャストロン」、ケミカルリサイクルで生産するフィルム「エンブレットCE」といった多彩な環境配慮型素材を展開する。

 2020年7月、サステナブル推進グループをサステナブル推進室に昇格させ、SDGs(持続可能な開発目標)経営を強化・拡大する方針を鮮明に示した。

 12月からサステナブル推進プロジェクトをスタートさせており、温室効果ガスの削減目標やカーボンニュートラルをいつをめどに実現するのかといったSDGs経営にかかわる方針、定量的な目標を「この秋に明らかにする」としている。

 キャストロンではフランスのアルケマグループとの連携に乗り出しており、リサイクルしやすい製品を企画し、販売してから何年か後に回収し、再び繊維に戻すシステムの構築を目指している。

 フィルムで展開するプレコンシュマーによる工場内リサイクルは順調に進展しているといい、いずれは「ポストコンシュマーを実現したい」との意欲を示している。

 欧州向けのティーバッグを主力に展開するテラマックの販売が徐々に回復しているといい、新規用途としてファーストフード店で使われるカトラリー向けの販売がスタートした。

〈環境配慮した商品開発推進/大学と協定締結でSDGs達成へ/アン・ドゥー〉

 ジーンズ製造卸のアン・ドゥー(岡山市)は10年以上前からサステイナブル素材を採用したジーンズを開発するなど、環境に配慮した商品開発に取り組んでいる。今年4月には、岡山大学(同)と連携・協力に関する協定を締結。それぞれが持つ資源を活用しながらSDGs(持続可能な開発目標)達成と地域活性化につなげる。

 2009年からオーガニックコットンや、ペットボトルをリサイクルして得られる再生繊維を採用したジーンズを開発。19年にはジーンズ製品として国内で初めて「エコテックススタンダード100」の認証も取得する。これらの取り組みを深化させるものとして、今年4月には、SDGs達成に貢献する活動を推進している岡山大学と協定も締結した。

 同大学とは、エコ素材の使用による二酸化炭素の削減効果など、環境負荷低減の数値化に取り組む。着圧によるスタイルアップ効果など難易度の高い証明を、同大学がデータを持って証明する。

 大学生や高校生との交流によって、企業目線にはない商品開発も推進する。5月には今後のアプローチ方法について同大学とのミーティングを開催。1~2カ月に1度のペースで打ち合わせを行いながら今後の取り組みにつなげていく。

 中村二郎社長は「大学と協力しながらSDGs達成と地域貢献につなげたい」と話す。

〈原料から環境負荷低減/「コットンUSA」「オフコナノ」が柱/シキボウ〉

 シキボウは環境負荷低減につながる原料を活用した糸・生地販売を拡大している。サステイナブルな科学的精密農業で栽培される米綿使いの証明である「コットンUSA」認証商品と、燃焼時の二酸化炭素排出量を抑制する特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」を提案の柱に置く。

 世界的にサステイナビリティーへの要求が高まる中、サステイナブル原料への全面的な切り替えを宣言する大手アパレルも増えた。このためシキボウが販売する「コットンUSA」認証の糸・生地の引き合いも増加している。米綿業界が取り組むサステイナビリティー検証システム「USコットン・トラスト・プロトコル」にも参加した。新型コロナウイルス禍による外出自粛でホームウエアなどの需要が拡大していることも綿素材にとって追い風と見る。

 オフコナノへの注目も高まる。ベースのポリエステルは再生ポリエステルを使用しており、リサイクルを繰り返した後の最終処分である焼却時の環境負荷も減らすことができる。短繊維だけでなく長繊維も用意し、幅広い用途に提案する。現在、生産と販売の組み立てを同時進行させており、まずはユニフォームやスポーツ、寝装などで引き合いが多い用途での普及を目指す。

〈機能性と生分解性が両立/ウールの中わた海外に広がる/アルゴ・インターナショナル〉

 原料商のアルゴ・インターナショナル(愛知県春日井市)が販売する中わた素材「ラバラン」はウールならではの機能性と生分解性が特徴だ。海外のブランドでは採用が進んでおり衣料向けだけでなく、ベビーやアウトドア向けといったさまざまな用途に広がりを見せる。

 製造するのは1913年設立の老舗メーカーでドイツのウール加工業、バウアーフリストッフェ。これまで培ったノウハウや知見を生かすことで、ウールをシート状に加工する技術を開発。ウールが持つ保温性や吸湿性、防臭・抗菌性といった多彩な機能を備える。

 ラバランは機能だけでなくサステイナブル素材でもある。ノンミュールシングウールを使用しており天然由来のため生分解性もある。シート状にする際にはトウモロコシ由来のポリ乳酸を混ぜる。人や環境に優しい素材として海外を中心に高い評価を得ている。

 海外では防寒ジャケットなどの衣料以外でも採用が進む。乳幼児のおくるみやヘルメットの中敷きのほか、手袋やふとん、寝袋の中わたなどに使用されるケースもある。シート状であることから多彩な用途に加工しやすい点も評価の理由だ。

 アルゴはラバランのホームページの翻訳なども手掛けており提案に力を入れている。

〈高品質のTシャツブランド/リサイクルボードも提案/モリリン〉

 モリリンは、糸・生地のプロがこだわりを込めたTシャツブランド「BODY PRO」(ボディー・プロ)を提案する。プリントなどの2次加工の仕上がりまで考慮した高品質を前面に打ち出す。

 ハイゲージ、ヘビーウエートで仕上げるため、手触りが良くプリントも映える。ほつれや襟元の伸びが起きにくく、洗濯を繰り返してもよれたりしない耐久性を備える。

 海外で生産した無地Tシャツを国内倉庫で保管・デリバリーし、プリントまでを担うという短納期に対応するビジネススキームを構築した。顧客が要望すれば、無地Tシャツのみの供給にも応じる。同社が独自にストックしている生地の提案も行う。中国で生機を備蓄し、豊富に種類をそろえたカラー台帳から色を選んでもらう。

 さらに、不要になった製品や生地を回収し、糸に生まれ変わらせる循環システム「リ・メードJ」の企画も進めている。

 サステイナブルな商品の展開は、アパレル製品以外の分野にも広がりを見せている。

 このほど、廃棄衣料品を原料とするリサイクルボード「PANECO」(パネコ)の販売を開始した。使用済みの繊維製品からボードを製作し、木材の代用品にする循環システムの活用を提案する。同社は国内の販売総代理店を担い、繊維の新しいアップサイクルとして普及を目指す。

〈「エコールクラブ」を拡販/スパンボンドでもエコ/東洋紡グループ〉

 東洋紡グループは衣料繊維事業、繊維資材事業の双方で環境配慮型素材による商品開発、販促に力を入れている。

 東洋紡STCは環境配慮型素材として、ペットボトル再生ポリエステル「エコールクラブ」、部分バイオポリエステル「同バイオ」、生分解性素材「ダース」の3本柱を構えている。

 ユニフォーム素材を拡販していく上で、「最近はエコ素材を外すことができなくなっている」としており、3本柱による販促を精力的に進めている。

 21年度はユニフォーム用途を中心にエコールクラブを打ち出し市場浸透を急ぎたい考えで、21秋冬からワーキング向けの販売を先行。定番を中心とする中肉織物を投入する。

 マテリアル事業部はインナー・肌着向けに高機能とサステイナブルを両立させた綿100%素材を投入。オーガニックコットンで開発した吸汗速乾「爽快コット―O」、消臭「デオドランーO」を打ち出し拡販を目指す。

 一方、東洋紡はペットボトル再生ポリエステルで商品化したスパンボンド「エコボランス」をラインアップし、再生ポリエステルの比率が70%の原反を主力に展開中。

 最近は「エコ素材への問い合わせが徐々に増えている」と言う。今後は再生ポリエステル100%で開発した原反を早急にラインアップするとともに、バイオ原料による新規原反の開発にも意欲を示している。