繊維ニュース

特集 環境(5)/役割が増す検査機関

2021年06月25日 (金曜日)

 繊維素材や生産プロセス、サプライチェーンのサステイナビリティーや人権尊重への要求が高まる中、第三者認証などの重要性も高まっている。こうした中、認証などの前提となる検査機関の役割が増している。

〈カケン/環境化学分析ラボで顧客支援〉

 カケンテストセンター(カケン)の環境化学分析ラボは、大阪事業所分析ラボを神戸市に移転・拡張したものだ。衣料品業界では環境団体からの指摘やCSR活動、サステイナビリティーへの対応など、環境負荷低減への取り組みが急激に進んでおり、そうした流れに応じた。

 環境化学分析ラボでは、分析に関する情報や正確な試験を提供すると同時に、制限物質リスト基準作成の支援、海外の分析トレンドの開示などを行う。現在は最終製品の有害物質試験の依頼が順調なほか、欧州連合(EU)における化学品規則であるリーチ規制に対する試験への問い合わせも増加している。

 有害物質にはアルキルフェノール/アルキルフェノールエトキシレート、発がん性染料、フタル酸エステル類、多環式芳香族炭化水素、六価クロム、重金属などがある。製品にもよるが、「日本の顧客の意識は高く、これらの有害物質は出ないことが多い」と言う。

 ただ規制対象となる物質は今後増えていく可能性が大きい。例えば、以前は使用できていた撥水(はっすい)剤が使えなくなったケースもある。カケンはホームページやセミナーなどを通じてこうした新しい情報を顧客に発信していく。

〈QTEC/国内外でCSR監査に対応〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)の業務の一つがCSR監査だ。海外工場における児童就労や強制労働の実態、国内工場での最低賃金や長時間労働の状況などの監査を行っている。中国の新疆ウイグル自治区問題の報道が増えていることなどから、CSR監査に関する問い合わせは増加傾向にある。

 QTECによると「(CSR監査は)嫌われると思っていたが、法律に基づくことなので敵対的にならない。むしろスムーズに進むことの方が多い」ようだ。例えば非常灯に関わることなど、「これまで分からなかったことが明確になって良かった」といった声が寄せられていると言う。

 日本の東日本事業所東京試験センター、中国の上海可泰検験(上海試験総合センター)にCSR監査の担当者が在籍し、共同で取り組んでいる。日本国内とASEAN地域の監査は東京の部隊が担当し、今後はリモートでの対応も増やす。中国は上海で全土をカバーする。

 大手企業はCSRや持続可能な開発目標(SDGs)に対する知識を持っているが、中小企業は必ずしもそうとは言えない。セミナーの開催などを通じて定義や取り組みの重要性を伝えていきたいとした。

〈ケケン/日本初のTE認証機関に〉

 テキスタイル・エクスチェンジ(TE)の認証機関に日本で初めて認定されたのがケケン試験認証センター(ケケン)だ。TEは農家らに優しいオーガニックコットンやリサイクル繊維、動物福祉に配慮したウールや羽毛などを使った繊維製品を対象とした国際的な認証制度。4月から業務受け付けを始めている。

 TEの認証機関には製品やサービスの認証に対して公正な審査ができる力を持っていることを示す国際規格ISO17065の適合認定が求められる。このため、透明性や公平性が高いといわれている。認証対象はTEが所有する規格である「GRS」「RCS」「OCS」「RWS」「RDS」の五つ。

 持続可能な開発目標(SDGs)やサステイナビリティーの浸透から繊維企業の関心は高く、4月にはGRSで第1号と第2号の認証を出した。GRSは製品のリサイクル含有物を検証し、環境配慮などの社会的責任を果たした上で生産されているかを証明する。

 6月に入ってからはウールの動物福祉と土地管理要件を検証し、供給源から最終製品までを追求するRWSの認証作業も進めている。ケケンはより多くの人にTEを知ってもらうためセミナー開催などを実施している。

〈ボーケン/試験で環境・人権に貢献〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は、認証・分析事業本部で有害物質分析や生分解性試験など環境に関連した試験事業を実施している。サステナブル・アパレル連合(SAC)にも加盟し、評価ツールの導入や運用に関する教育事業にも参入するなどサステイナビリティー関連の取り組みを拡大している。

 現在、世界的に有害物質への規制が強化されている。ボーケンでは欧州連合(EU)の有害物質使用制限指令(RoHS)に対応したスクリーニング・精密分析や欧州規格による重金属溶出試験、ニッケル溶出試験、米国消費者製品安全員会(CPSC)基準による金属アクセサリーの鉛溶出試験など海外規格に対応した体制を整備してきた。

 ドイツのホーエンシュタイン研究所の協力で生分解性試験の受け付けも2月から開始した。日本バイオプラスチック協会にも加盟し、情報収集・発信を進める。生分解性試験の国際標準化作業にも積極的に参画する。

 SACでの取り組みでは、このほどトレーナーの認定を受けた。7月から第三者に向けてSACのサステイナビリティー評価ツール「Higgインデックス」の運用に関する専門教育事業を開始する。CSR監査業務にも力を入れ、環境・人権・安全衛生に貢献することを目指す。