産資・不織布通信(75)/帝人フロンティア・繊維コード/環境配慮型接着剤を開発

2021年06月28日 (月曜日)

 帝人フロンティアの産業資材のうち、ゴム補強繊維は約30%を占める主力商品の一つ。自動車向けが中心で、タイヤやベルト、ホースなどの用途に展開している。

 近年は環境方針に沿い、ゴム補強繊維の生産工程で使われる接着剤もエコ化を進めている。昨年にレゾルシンとホルムアルデヒド(RF)を含まない水系接着剤を発表したのに続き、これまで溶剤系が使われていた用途にも使える水系接着剤をこのほど開発した。これで同社のゴム補強繊維のほぼ全ての用途に環境配慮型品で対応できる形となった。

 柔軟性に優れるゴムは、さまざまな用途に使われている。その中でタイヤなど強度や形態安定性が求められる分野では、繊維コードとゴムを化学的に結合させる。このため、繊維コードの生産工程では接着剤を付与するディップ工程があり、一般的にレゾルシンとRF、ラテックスから成るRFL接着剤が使われている。

 レゾルシンは皮膚刺激性、RFは発がん性が指摘される中、これらを含まない接着剤への要望が増えていた。同社は昨年3月にRFの代わりに高分子化合物を使った接着剤を開発した。繊維コードに使われる各素材に使え、ポリエステル、アラミドとも従来品と同等の性能を確認している。

 ゴム製品の中には、溶剤系接着剤が使われている分野もある。自動車エンジンのVベルトなど糸が完全にゴムに内包されず、外に出ている部分がある用途で、糸のほつれを防ぐために水系より濡れ性が高い溶剤系が使われる。

 このほど開発した含侵性の高いRFL接着剤により、ベルトなどの用途にも水系で対応できる形とした。繊維コードの内部まで接着剤が含侵して空隙を埋め、糸のほつれを防ぐ。ポリエステル繊維コードとEPDM(エチレンプロピレンジエン)ゴムとの接着では、従来の溶剤系と同等の剥離接着性を確認。アラミドやポリアミド、炭素繊維などその他の素材にも使うことができる。

 RFフリー品は既にタイヤ用途を中心にサンプルワークが始まっており、将来的には世界の需要に対応するためライセンス生産も視野に入れている。溶剤系代替の水系接着剤はこれから提案を本格化させる。含侵性の高さなどの特徴を生かし、将来的にはコンクリート補強など自動車以外の分野も視野に入れている。