特集2021年夏季総合(7)/わが社の飛躍への萌芽/事例研究

2021年07月26日 (月曜日)

〈旭化成アドバンス/「エコセンサー」の浸透目指す/5本柱を打ち出す〉

 旭化成アドバンスは「ベンベルグ」、再生スパンデックス「ロイカEF」、再生ポリエステル、同ナイロン、オーガニックコットンの5本柱で環境配慮型素材「エコセンサー」を展開する。

 スポーツ部門、アウター部門、インナー部門が合同で「エコセンサー総合展」を開催しており、今年は5月下旬に大阪本社で、6月上旬に東京本社で開催した。海外市場にも浸透させるため、企画会社と連携し欧米アパレルへの売り込みにも着手した。

 スポーツ部門は廃棄された漁網を原料とする再生ナイロンを導入するなどでエコセンサーのアップデートを進めており、21秋冬・22春夏向けに打ち出す。

 インナー部門はベンベルグやロイカEFを主力にエコセンサーの商品ライン増強を進めており、特に使い回しの利く定番品の拡充を重視している。

 アウター部門はベンベルグやアセテートと再生ポリエステルとを交編するニットによるアプローチに力を入れている。

〈東レ/「GRプロジェクト」に邁進/「&+」が急拡大〉

 東レは成長分野でのグローバルな拡大を目指すとの基本方針を掲げ「グリーンイノベーション(GR)プロジェクト」を推進しており、プロジェクトによる売上高で2022年度に1兆円越えを目指している。

 繊維事業では21年度、白度やトレーサビリティーにこだわって開発したペットボトル再生ポリエステル「&+」(アンドプラス)の販路が一気に広がる見通しで、大手SPAや大手量販店、大手インナーアパレル、大手スポーツアパレルからの販売が相次いで立ち上がる。

 東レはバイオ由来原料で開発したエコ素材の拡販も重視しており、これまではポリエステルによる「エコディア」の販売を先行させてきた。

 数年前からスタートしたバイオ由来成分を含むナイロン610を中心とする「エコディア・ナイロン」では、ラインアップ拡充が進み、アウトドアなどナイロンへのニーズが高い業界での採用事例が相次いでいる。

 既に古くからナイロンのケミカルリサイクルを進めており、今後は市場ニーズの拡大に対応して、バージン原料とリサイクル原料を分別した新たな解重合設備の導入を検討している。

〈サカイオーベックス/抗ウイルス加工を拡販/環境への取り組みを重視〉

 サカイオーベックスは新型コロナウイルス禍収束後に向け、消費者の購買意欲に訴求できる商品の開発を強化するとともに、SDGs(持続可能な開発目標)に基づく取り組みを加速する。

 2021年3月期は新型コロナウイルス禍の影響を受け、染色加工事業、繊維販売事業とも大幅な減収減益となった。その中でも堅調な商品も出てきて、製品販売ではワンマイルウエアなどの販売が大きく伸びた。

 足元では新型コロナ禍前に比べ、全体では80%以上の水準に戻った。欧州向けの婦人衣料やナイロン織物はまだ厳しい状況が続くものの、今春からユニフォームやスポーツ、自動車資材などは回復に向かっており、稼働はほぼ通常の状態に戻っている。

 今後に向けては、「繊維メーカーとして新型コロナ禍後の消費者の購買意欲に訴求できる商品のための技術開発に注力する」考え。注力する商品の一つが、抗ウイルス加工「ヴイバスター」で、用途開発や機能性向上による拡販に取り組み、衣料用途だけでなく、資材、生活雑貨などにも展開していく。既にオリジナルの抗ウイルスマスクの生産・販売を開始しており、今期に30万㍍の販売を計画している。

 SDGsに基づいたサステイナブル対応も重視する。染料・薬品などの規制対応、エネルギーの削減、産業廃棄物のリサイクル、原材料のバイオマス化、排水・排気対策など各面で環境への取り組みを進めていく。

〈ダイワボウレーヨン/環境、リサイクルに焦点/プラスチック代替需要を開拓〉

 ダイワボウレーヨンは、レーヨンが木材パルプを原料とする再生セルロース繊維であることを生かし、環境とリサイクルに焦点を当てた開発や提案に取り組む。世界的に脱プラスチックの動きが加速する中、レーヨンで代替需要の開拓を目指す。

 欧州連合(EU)が7月から域内での使い捨てプラスチック製品の流通を禁止・制限するなど脱プラスチックの動きが一段と強まる。こうした中、同社は北欧の製紙メーカーと協力し、パルプとレーヨンショートカットファイバーを組み合わせた湿式不織布を実用化している。通常の紙と比較して強度に優れることから、容器や包装材などで使い捨てプラスチックの代替需要の開拓を目指す。

 今後、合繊の使用比率を減らす動きはウエットティッシュやコスメ用途など不織布製品全般でも強まる可能性がある。一方で新型コロナウイルス禍を契機にワイピング材の市場拡大が期待できる。こうした需要に対してレーヨン短繊維の生分解性などを打ち出す。

 もう一つ力を入れるのがリサイクル。通常の木材パルプだけでなく、使用済み綿製品などから作るリサイクルパルプを原料として活用することに取り組む。既に使用済みデニム製品をパルプに再生し、それを原料とするレーヨン「リコビス」も開発した。こうしたリサイクルレーヨンの実用化を加速させる。

〈帝人フロンティア/抗ウイルス加工をカーテンに/用途広げ空間全体を〉

 帝人フロンティアが展開している「ウイルサラバ」は、生地に付着した特定のウイルスを99・9%減少させるなど、高い機能を誇る抗ウイルス加工素材だ。2020年7月に販売を開始し、カーテン分野を中心に浸透を見せる。カーテン用途以外についても開拓を図っていく。

 ウイルサラバは、生地表面に付着した特定ウイルスの細胞膜(エンベロープ)を変性し、(ウイルスの数を)99・9%減少させる。光触媒ではなく、特殊抗ウイルス加工のため「朝、昼、夜を問わず24時間効果を発揮」する。繊維評価技術協議会の「SEKマーク」(抗ウイルス加工)を取得している。

 ベースの生地はポリエステルとなるが、難燃タイプと組み合わせることが可能で、カーテン用途に求められる防炎基準もクリア。抗ウイルス効果は洗濯5回でも持続する。抗菌・防臭などとの組み合わせも問題ない。

 今後はカーペットやマット類、ふとんカバー類、クッション、ソファー生地、玄関シートなどにも展開し、空間全体をカバーする。

〈東洋紡STC/「Zシャツ」の好調続く/ジャケット狙いの新素材も〉

 東洋紡STCはスポーツやユニフォーム、スクールユニフォーム向けに高機能ニット「Zシャツ」を打ち出し一層の拡販を計画している。

 Zシャツは累計販売枚数が600万枚を突破した紳士服量販店の主力アイテムに採用されるなどドレスシャツ向けの販売が好調で、同社は20年度に続き21年度も2桁%の拡販を計画する。

 21年度は戦略素材に位置付ける「スクラムテック」も前面に打ち出している。スクラムテックはポリエステルとPBT繊維などの高弾性糸を高密度に交編した軽量・ストレッチニット(丸編み)。

 ハリ・コシにも優れているため製品映えするとともに、「圧倒的な軽量感が売り」としており、スポーツに加えて巣ごもり需要を含むジャケット、パンツといった中肉アイテムのゾーンを掘り起こす。

 Zシャツによるスクール用途への企画提案にも着手しており、今後は需要増が見込まれるブレザーなどのゾーンに中肉の高機能ニット「Xジャケット」を合わせて売り込んでいく。

〈ユニチカトレ―ディング「ユニソフィア」/高透湿タイプを新開発/内外200万枚体制で〉

 ユニチカトレーディングは医療現場で使われるアイソレーションガウン向けに展開する高機能複合不織布「ユニソフィア」シリーズを市立東大阪医療センターと共同開発し販売を強化している。先に高透湿タイプを戦列に加えた。

 ユニソフィアはユニチカのオレフィン系スパンボンド「エルベス」とコットンスパンレース「コットエース」、透湿防水性能が特徴のポリエチレン製高バリア性フィルムを組み合わせた不織布。

 ガウンとしては、肌の露出を減らす設計、作業効率を考えた工夫を取り入れ、脱ぎやすさに配慮した立ち襟タイプ、丸首タイプを構える。

 さまざまな医療現場から求められていた暑さ対策に応えるため、高透湿タイプを開発。着衣時の快適性を向上させ、感染リスクの高いガウンの脱衣時の作業を安全に行うことができるようにした。

 ユニソフィアを安定的に供給していくため、国内縫製約50社と連携し月産100万枚体制を構築。タイ、インドネシア、ベトナムなどのASEAN諸国でも月産100万枚体制を確保した。

〈クラレトレーディング/全量を「エコトーク」に/アウトドアを開拓〉

 クラレトレーディングはスポーツウエア向けを中心に環境配慮型の戦略素材「エコトーク」の拡販に力を入れており、ペットボトル再生ポリエステルでエコ化した十字断面の吸汗速乾素材「スペースマスター」を重点素材に位置付け22秋冬商戦に臨んでいる。

 当初は22年からの新中計を通じエコ素材の比率をポリエステル長繊維の50%に引き上げる予定だったが、「エコ素材を持っていないと戦っていけない」との認識を示しており、一気に100%に引き上げる。

 クラレグループは昨年からモビリティー、アグリカルチャー、スポーツ・アウトドアといったテーマに基づくセグメントマーケティングに着手。クラレトレーディングはスポーツ・アウトドアに参画する。

 3~4月中旬に開催したグループの「スポーツ・アウトドアオンライン展」に衝撃を吸収する新素材「スパンドール」や「エルモザ」などを出展した。

 その希少性が注目され、ウェブ展ではダウンロード率が上位3番目にランクされた。ソックスのパイル部、シューズのインソール向けの開発を進めており、22年度から投入する。