繊維ニュース

特集 2021年夏季総合Ⅱ(4)/個人商店的な販売業者のためのモノ作りの受け皿が増えている

2021年07月27日 (火曜日)

 服作りの素人であっても、自らのアイデアを形にして売ることが可能になってきた。彼らのモノ作りを支援、代行するサービスが充実しつつあるからだ。

〈ノーマリズム/OEM企業が探せるサイト/マッチングの一括サービスも〉

 独自のアパレルブランドを立ち上げる企業や個人が目立つ。会員制交流サイト(SNS)などを使ったマーケティングによって、店舗がなくてもビジネスに育てられるからだ。アパレルへの新規参入者は増えると予想され、今後は「どこで作るか」「誰が作るか」がポイントになる。

 その課題に応えるのが「アパレルOEM検索」だ。アパレルOEM企業をまとめて探すことができるデータベースサイトで、ノーマリズム(東京都目黒区)が運営している。2018年にベータ版を開設し、ユーザーや実績を獲得した後、20年8月に正式版をリリースした。

 このデータベースサイトは、依頼者の利用は全て無料で、OEM企業の登録も基本的に料金は発生しない。登録企業には機能に応じて無料プランや月額有料プラン(5千円~)を用意しており、自由に選択できる。

 マッチングサービス(無料一括相談サービス)では、依頼者が仕事の内容を記すと複数のOEM企業に一斉配信される。OEM企業は依頼者に提案や概算見積もりなどのメッセージを送ることが可能。サイト内のチャットで直接メッセージを送受信できる。

 ノーマリズムは、元々アパレル企業のホームページ制作を行っていた企業。スタートアップ企業や個人事業の顧客も多く、「良いアパレルOEM企業を探している」という声を聞く機会も多かったことからサイトを立ち上げた。

〈御幸毛織/包括的販売支援サービス拡充/新たな協業と販路開拓狙う〉

 御幸毛織(名古屋市西区)は、オーダースーツの受注や既製服の販売を包括的に支援するサービスを拡充している。新たな協業の構築と販路開拓が狙いだ。

 オーダースーツの販売支援を行う「ミユキ・ネットワークプロジェクト(MNP)」は今年から始動した。MNPは採寸から受注、販売までを習得する開業前研修が付く。ゲージ(試着サンプル)や生地見本を収めたバンチブック、副資材見本も完備。およそ60万円の投資で開業が可能となる。

 副業として検討する個人や、不動産関連やエステティックサロンを営む企業から30件以上の応募があった。開業に向けての意思確認と審査を実施後、支援を進める。

 既製品の発注に最小単位で対応するプラットフォーム「MYKショーケース(MYKS)」も立ち上げた。MYKSは適時・適量の供給で、持続可能な生産活動の実現に取り組む。御幸毛織が掲げる、商品に長く愛着を持ってもらう趣旨のキャッチコピー「愛せる服を。」の具現化につながる。

 多種多様な仕様変更に1着から対応する。ジャケットやスラックス単体、フォーマル、婦人向けのコートも生産可能。別のアパレル企業との協業やセレクトショップ向けのOEM生産も視野に入れる。

 生産は同社の国内工場が担う。直営店「サローネ・パルテンツァ」をはじめ、全国のテーラーや紳士服専門店、百貨店で扱う商品と変わらない品質で提供ができる。100年以上の歴史で培ったモノ作りのノウハウや生産背景をフルに生かす。

〈SDファクトリー/アパレルと国内工場をつなぐ/登録工場は100軒超に〉

 ラクーンホールディングスグループが運営するSDファクトリーは、アパレルメーカーなどと縫製工場をつなげるマッチングサイトだ。2015年11月の立ち上げから約6年が経過し、登録工場数は100軒を超えた。アパレルメーカーやデザイナーによる工場への問い合わせも増えている。

 生産場の海外移転や高齢化などから、国内の縫製工場は数を減らしている。自社サイトを持っていない工場も多く、アパレル企業などが国内生産を志向しても、作り場が見つけられないケースがあった。それを解決するのがSDファクトリーで、登録工場の生産品目やロット、料金、納期が確認できる。

 縫製を中心に、刺しゅうや2次加工、プリント工場などの姿が見え、対応品目も多岐にわたる。小ロット対応が可能な工場が多いのも特徴。加工料金や納期などの交渉はアパレル企業と工場が直接行い、運営側は関与しない。工場は選ばれるためにレベルを上げる必要がある。

 マッチングは増えているが、新型コロナウイルス禍で問い合わせが増加。感染拡大当初はマスクを作りたいという要望が多かったが、現在は「衣料品を小ロットで生産したい」「ネットで販売する独自商品を作りたい」といった声が目立つ。

 運営者によると、トラブルの報告はほとんどない。ただ工場によって人気、不人気はあるようで、「親近感や安心感が顧客を引き付ける要素の一つ」としている。

〈ワン・パブリッシング/読者とオンラインで共創/D2Cブランド「ミッケ」〉

 婦人服のD2Cブランド「ミッケ」が好調だ。5月中旬、ファッション通販サイト「ゾゾタウン」で発売されると、花柄刺しゅうブラウスは完売し、カテゴリー別売り上げ1位になるほど。その勢いの鍵は“共創”にある。

 出版とコンテンツサービス事業のワン・パブリッシング(東京都品川区)が、10~30代女性向けファッションメディア「メル」から立ち上げた。ファン(読者)コミュニティーでプロジェクトメンバーを募り、新型コロナウイルス禍のためインスタライブやオンライン会議で共創のモノ作りを実現。完成した服をモデルが着て媒体で発信し、インフルエンサーがインスタライブで紹介する。

 メルの清水優香子編集長は「共創商品は創り上げるプロセスがそのまま商品の価値になる。こうした一連の流れでミッケを自分ごと化して楽しんでくれている」と言う。共創商品の一つが完売した花柄刺しゅうブラウス。花柄のスズランは「5月の花」「コロナ禍の中“再び訪れる希望”という花言葉もいい」と決まり、そのストーリーもファンに響いたという。「着回しが利き、トイレでも便利」と誕生した、オールインワン見えする上下セパレートも人気だ。

 正田省二第1メディアプロデュース部長は「メルのようなブランドメディアは同じ価値観を共有する読者の存在が強み。これからもファンと伴走しながら、リアルな声を反映し一緒に服作りしたい」と話す。