両角みのりのイタリアモードの今(36)/第33回ミラノ・ウニカ/テキスタイル再稼働の兆し

2021年07月29日 (木曜日)

 6、7日に行われた世界的な服地見本市「ミラノ・ウニカ」(MU)には、270の出展企業(2020年9月展比27%増)が集まった。そのうち224はイタリア国内で、46は外国からの出展だった。対象シーズンは22秋冬。中国、米国、英国からの移動に大きな制限があり、常に60%を占める海外からのバイヤーの存在感は薄かったとはいえ、来場した3100社(前回展比29%増)のうち570社は外国から(42%増)だった。

 アレッサンドロ・バルベリス・カノニコMU会長は「まだ正常に戻ったとは言えないが、良い兆候であるとは言える。まだ苦しんでいるサプライチェーンの上流セクターにおいても回復の条件を再現するのに役立つと確信している」と述べた。

 クラウディア・ダルピッツィオ氏は「人々はファッション衣類を購入し始め、ブランドはこの間に蓄積された商品を消化し始めている。繊維業界はV字型に成長するはず。そして、明らかに今のキーワードはデジタル化、持続可能性、リサイクルにある」と分析した。

 「ユーロジャージー」ゼネラルマネジャーのアンドレア・クレスピ氏は「持続可能性が語られるずっと以前より当社は私たちの将来と地球を見据えた事業を展開している。持続可能性の真のフロンティアはそれをどのように行うかだ。今日、私たちはこれまで以上に経済的責任があるだけではなく、各生産において環境への影響を減らす義務があり、そのための最初のステップは自分自身を知ることだ。より責任ある選択をすることによってのみ環境を保護することができる。そのためにはサプライチェーン全体を巻き込むことが不可欠だと考える」と熱く語った。

 伝統・革新・持続可能性を企業理念のキーワードとする1663年創業「ビタレ・ルベリス・カノニコ」はオフリミッツ・ラインを発表。ウールの緯糸に、非常に細い再生ポリエステルの経糸を使った軽さと強靭(きょうじん)さを組み合わせた「多面体ウール」、最先端のエラストマーとの組み合わせにより25%を超える弾力を実現した「ハイパーストレッチ」、最新の研究を実現した「ハイブリッド」という三つの柱から構成された新しい日常に沿ったコンテンポラリーで持続可能性な生地ラインだ。

 他に蚕のサナギを成虫にかえす絹糸や地元の羊から採れた羊毛を使った生地など環境に配慮した生地も多く、全ての生地サンプルを見るのに1時間強を要したほどのボリュームだった。改めて生地というものは五感を通して感じるものであり、物理的接触は製品を理解する上で不可欠であり、見本市の真の付加価値だと感じさせた。

もろずみ・みのり 2003年にイタリアに渡り、建築デザインとファッションを中心とした企業視察や通訳を務める。2016年からImago Mundi代表。