防炎難燃素材/用途広がり需要拡大/背景にBCPの動きも

2021年08月10日 (火曜日)

 防炎難燃素材の需要が衣料用途で堅調に拡大している。労働現場の安全性確保への意識が世界的に高まることで作業服での採用が拡大していることに加え、アウトドアなど新たな用途にも広がり始めた。BCP(事業継続計画)の観点から採用素材の複数化を進める動きも需要拡大の背景にある。(宇治光洋)

 厚生労働省の労働災害統計によると2020年の労働災害死亡者数は802人(前年比5・1%減)だった。事故内容としては「墜落・転落」「交通事故」「はさまれ・巻き込まれ」がいずれも100人を超えているが、「高温・低温物との接触」26人、「火災」6人、「爆発」4人となるなど、依然として火災・爆発や高温物を原因とする労災死亡事故も後を絶たない。こうしたリスクを少しでも減らすために、作業服用途で防炎難燃素材を採用するケースが年々増加している。

 衣料用途で使用される防炎難燃素材は、熱溶融した繊維が皮膚に付着して重度の熱傷を引き起こす危険性を避けるため通常の難燃ポリエステルなどは使いにくい。着心地も重視される。このため自己消火性のある防炎難燃素材に綿など吸放湿性のある素材を複合するか綿に難燃加工を施す、あるいは難燃レーヨンを使用するのが一般的となる。

 クラボウは自己消火性のあるアクリル系繊維に綿を複合した生地「ブレバノ」を販売しており、現在は制電性を付与した「ブレバノプラス」、国際標準規格(ISO)と全米防火協会(NFPA)規格に対応した「ブレバノネクスト」、エコマーク対応の「ブレバノエコ」をラインアップする。毎年、安定的に販売量が増加しており、海外での採用も増加してきた。

 大和紡績は綿100%生地に難燃加工「プロバン」を施した「ボディバリア」を販売する。綿100%の風合いや、ノンハロゲンの難燃加工のため燃焼時や焼却処分時の有害物質の発生を抑えることができることへの評価が高く、作業服や溶接作業時に着用する工業用エプロンなどで安定的に採用されている。

 防炎難燃素材の需要拡大の背景には、労働現場での普及が先進国だけでなく新興国でも加速していることがある。特にアジア地域では労働現場での安全意識が急激に高まっている。

 加えて作業服以外の用途にも広がり始めたことも無視できない。クラボウのブレバノはアウトドア用途でも採用が決まった。近年のアウトドアブームで、例えばキャンプの際のたき木の火の粉からウエアを守る素材として防炎難燃素材への注目が高まる。

 BCPの観点から需要家が採用素材を複数化する動きも日本の素材メーカーにとって追い風となる。難燃素材は世界的にレンチングの難燃レーヨン短繊維「レンチングFR」も大きなシェアを持つが、1社調達を避けたい需要家が他社の素材を採用し始めた。

 ダイワボウレーヨンはリン系難燃剤練り込みの難燃レーヨン短繊維「DFG」でこうした需要を確実に取り込んでおり、海外を中心に販売が拡大した。2021年度(22年3月期)も前年度比倍増の販売量を計画しているが、4~6月段階で計画を上回る勢いで推移する。海外では民需だけでなく、安全保障分野を含めた官需用途でも採用が進む。