タイ/感染拡大で工場労働者が不足/工業連調査、74%が生産能力低下

2021年08月17日 (火曜日)

 タイ国内で新型コロナウイルスの第3波が猛威を振るう中、工場労働者の不足が顕在化している。タイ工業連盟(FTI)が会員企業166社に実施したアンケートでは、73・5%が労働者不足によって工場の生産力が低下したと回答。外国人の出稼ぎ労働者を早期に雇えるよう政府に訴えている。一方、工場の生産能力の低下により、国内市場への食料や生活必需品の供給不足を危ぶむ声も上がる中、小売業界は十分な供給能力を強調。国民に落ち着いた消費行動を訴えている。

 FTIは7月、会員企業45業種・166社の最高経営責任者(CEO)などに新型コロナが工場生産に与えている影響についてアンケートを実施した。それによると、4月以降に本格化した新型コロナ第3波によって「工場の生産能力が最大30%低下した」と回答する割合が最も多く、全体の45・2%を占めた。「生産に影響は出ていない」が26・5%で続き、「生産能力が30~50%低下した」が20・5%、「生産能力が50~80%低下した」は7・8%だった。全体の73・5%が、生産能力が低下したと答えている。

 FTIのスパン会長は、29都県を対象とするロックダウン(都市封鎖)に理解を示しつつ、「仮に9月中に新型コロナの1日当たりの新規感染者数を5千人以下に抑えられなければ、国内産業と経済に深刻な打撃を及ぼすことになる」との見通しを示している。

 7月30日付バンコクポストによると、新型コロナウイルス感染症対策センター(CCSA)のタウィーシン報道官は、4月1日からこれまでに全国49県の工場518軒で従業員3万6861人のコロナ感染が確認されたことを明らかにした。

 県別の工場従業員の感染者は上位から、南部ペチャブリ県が4464人、北部ペチャブン県が3487人、南部プラチュアプキリカン県が2538人、バンコク西郊のサムットサコン県が2496人、南部ソンクラー県が2209人。

 業種別で感染者が確認された工場は、食品が99軒、電子が74軒、繊維・衣料が42軒、鉄鋼が42軒、プラスチックが36軒。

 部品工場で新型コロナのクラスター(感染者集団)が発生し、調達に影響が出たことから、トヨタ自動車がタイ工場の生産を停止するなど日系企業にも影響が及んでいる。

 FTIの担当者がNNAに説明したところによると、FTIの会員企業は、いずれもタイ政府が定めたロックダウン措置を厳守しており、午後9時から翌午前4時までの外出禁止のほか、それ以外の時間でも、可能な限り外出を避け、在宅ワークに努めている。外出制限の徹底は、日系企業の工場が集積する東部3県(チョンブリ、ラヨーン、チャチュンサオ)の経済特区(SEZ)「東部経済回廊(EEC)」も同様で、やむを得ない外出には、各企業がロックダウンに違反していないことを証明する書類を発行するようにしているという。

〈供給不足を危ぶむ声〉

 こうした中、FTIは、生産の停滞による供給サイドへの影響に懸念を示す。供給不足により、長引くコロナ禍で既に購買力が低下している国民にさらなる負担が及ぶとしている。

 FTIのクリアンクライ副会長は、昨年4月の第1波、12月の第2波では、消費者の購買力低下による需要の低下はあったものの、他国で見られたような供給サイドへの影響はなかったと指摘。しかし、過去最多の感染者数を連日更新している第3波では工場の停止による供給サイドへの影響が問題になりつつあると指摘した。鶏肉加工やステンレス製品、自動車部品などの工場でクラスターが発生し、サプライチェーンに混乱が生じつつあるとした。

 クリアンクライ氏は、1日当たりの新規感染者数が2万人近いペースで推移している現在の感染状況が8月中旬まで続けば、供給サイドへの影響の深刻化は避けられないと強調した。

 一方、3日付バンコクポストによると、タイ小売・卸売協会のソムチャイ会長は、缶詰や即席めんなどの一部の商品で供給不足が生じていることを認めた上で、「昨年4月に起きたような大規模な買いだめには至っていない」と説明。ただし、厳格なロックダウンがさらに長期化すれば、供給不足による社会不安につながると指摘し、政府に対して状況に応じた柔軟な感染対策を実施するよう訴えた。

[NNA]