繊維ニュース

技術の眼

2021年08月18日 (水曜日)

 「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。

〈YKK/コンパクトなデザインのスライダー〉

 YKKの「ミニマルデザインスライダー」は、紐引手(ひもひきて)専用のスライダー。ひも、またはひも引手を直接スライダーの胴体に設置して使用する。引き手の代わりにコード・プラーを取り付ける仕様に特化した形状が特徴。通常は縦方向に配置してある柱部分を横方向に変更し、胴体を極限まで削ぎ落とした。

 金属製と樹脂製をそろえている。樹脂製は軽量に加え、検針機対応、さびることがないなど機能面でも多彩な強みを持つ。2015年度の「グッドデザイン賞」を受賞した際には、「ストラップを付けた後のすっきりとした外観が、正しい進化を裏付けている」と評価された。

 近年は、小型化により材料の使用量を削減したことが、サステイナビリティー対応のニーズに合致するとして顧客に支持されている。

〈豊島とSHINDO/廃漁網からテープ〉

 豊島と服飾資材大手のSHINDO(福井県あわら市)は、豊島の廃漁網を繊維原料に再生する取り組み「アンタングルイット」でブランドパートナーとして連携し、廃漁網から作った再生ナイロンを100%使用した細幅のテープ類を開発した。

 台湾では、使用済みの漁網を回収し、加工・選別の作業を経てアパレル製品に適した繊維を生み出すアップサイクルシステムが構築されている。アンタングルイットは、このシステムで生まれた繊維を使って生地やアパレル製品を作る。回収から行うアップサイクルのシステムを普及させ、放流された漁網が海洋生物に絡まる「ゴーストフィッシング」の削減につなげる。

 SHINDOはテープなどの副資材に使用するポリエステルのリサイクル品の比率を高めている。ナイロンでもリサイクルの活用を検討する中、社会的関心が高い廃漁網に着目し、アンタングルイットの繊維を原料にするテープ類の製造を決めた。

〈三菱ケミカル/新たなCMC材料を開発〉

 三菱ケミカルはこのほど軽量性や剛性と成形加工性を兼ね備えたセラミックマトリックスコンポジット(CMC)材料を開発した。

 環境負荷低減のための軽量化が求められるモビリティー用途や軽量化に加えて工程効率化への対応を求められる産業用機械用途などでは軽さと強度を兼ね備える炭素繊維関連部材の採用が進んでいる。

 一方、耐熱性が必要な部材で、加工性やコスト面での課題があるためまだ十分に普及しているとはいえず、主に比較的、高価なセラミック材が使われている。

 炭素繊維と金属材料を組み合わせた同社のCMC材料には高剛性、高耐熱性、高熱伝導率、軽量性、耐摩耗性、低発塵(じん)性といった特徴があり、モビリティーのブレーキ材料、産業機械部品に使われてきた。今回の開発品はこれらの特徴を持ったまま、高い成形加工性とそれに伴う低コスト化を実現した。

〈セーレン、DIC、福井県工業技術センター/高速硬化プリプレグ開発〉

 DICとセーレン、福井県工業技術センターは、最短30秒という高速硬化と常温保管を実現した炭素繊維強化プリプレグシートを開発した。量産プロセスをこのほど構築し、セーレンに置く実証機で生産したシートサンプルの提供を先月から始めた。

 炭素繊維強化プリプレグシートは、炭素繊維の束を広げて樹脂を含侵させたシート状の中間材料。一般的なエポキシ系のプリプレグシートでは140℃で5分かかっていた硬化時間を1分に短縮した。

 DICの高速硬化樹脂、福井県工業技術センターの空気開繊技術(炭素繊維の束を空気で薄く広げる技術)、セーレンの含侵技術を組み合わせて開発した。樹脂はウレタンメタクリレートで、180℃の加工では30秒という世界最速レベルの硬化時間を実現。エポキシ系のプリプレグシートは保管時に冷凍・冷蔵倉庫が必要だが、同商品は常温で保管できる。

〈大江/間伐材でレザー調シルク〉

 織物製造卸の大江(京都府与謝野町)は、間伐材のチップから液体を抽出し、糸や生地を染める同社独自開発の「原木染め」とラミネート加工を組み合わせてレザー調に仕上げたシルク100%織物「ヴィーガンレザーシルク」を開発した。

 ラミネート加工は国内の協力工場で施し、エナメル、透湿、マットの3タイプを用意する。生機はシルク100%のジャカードアムンゼン。生機にラミネート加工をした後に原木染めで染色するという「逆転の発想」(大江康夫社長)で柔らさとハリ感を併せ持つ独特の風合いに仕上げた。

 化学染料や薬剤を一切使わず、一般的な染色工程を経ないため工程内で発生する二酸化炭素も極端に少ない。廃棄される間伐材を使用するため地球環境にも優しい。

 同生地を使ってジャケットを製作した。大江社長によると、公式データは取得できていないものの防水性や消臭性を確認済み。色落ちもしない。

〈三山/染色しやすいポリ乳酸繊維〉

 糸製造販売の三山(大阪市天王寺区)は、耐熱性が高く染色しやすいポリ乳酸繊維の販売に力を入れている。従来のポリ乳酸繊維は耐熱性などが課題だったが、同繊維の耐熱性を高める技術を持つ企業と協業。染色性を高めたサステイナブル素材として訴求する。

 ポリ乳酸繊維は、トウモロコシやサトウキビなどを原料とした植物由来の繊維。サステイナブル素材として20年ほど前から注目されているが、耐熱性や耐久性が低く、染色性に課題がある点などが普及を妨げてきた。ポリ乳酸繊維の染色は一般的に分散染料が用いられるが、耐熱性の面から染色温度への注意が必要で、再現性などにも課題があった。

 この課題に対して、ポリ乳酸繊維の耐熱性を高める技術を持つ企業と協業して対応。協業企業が開発した改質剤を加えたポリ乳酸は、成型の場合で耐熱性を従来比90℃、耐衝撃性を10倍以上それぞれ高めた。繊維の染色性も高まった。