東洋紡 スーパー繊維事業部/「ツヌーガ」を増設/原着糸でアウトドア開拓

2021年08月26日 (木曜日)

 東洋紡のスーパー繊維事業部は耐切創手袋向けの販売増が見込める超高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」の増設投資を進めている。現状の年産1500トンを同2千トンに増強し、来年4月から新設備による量産をスタートさせる。

 同社は超高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」「イザナス」、PBO(ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール)繊維「ザイロン」という3タイプのスーパー繊維を展開している。

 ツヌーガでは自動車の組み立て工場などで使われる耐切創手袋向けの販売が全体の85%を占めている。2020年度は新型コロナウイルス禍で自動車生産がストップしたため、4、5月と大苦戦を強いられたものの、自動車業界の復調に伴いツヌーガの生産も回復。21年度4~6月期には「新型コロナ禍以前の状態に戻せた」(黒木忠雄繊維機能材事業総括部長)と言う。

 同社では今後も耐切創手袋での需要増を見込んでおり、このほどツヌーガの増設を決定。年産1500トンを同2千トンに引き上げ、来年4月から稼働させる。

 現在、原着糸の開発を進めており、既存の黒に3~4色を加え、新設備が立ち上がる来年4月から企画提案に着手する。アウトドアのウエアやリュック、テントなどにツヌーガの優れた耐切創性などを売り込んでいく。

 「イザナス」では船舶係留用ホーサー向けの販売が伸び悩んでいるものの、新型コロナ禍に伴い密を避けられるレジャーとして注目されるフィッシング(=釣り糸)向けやバイクのヘルメット向けが伸びている。

 「ザイロン」の販売状況は「既にコロナ禍前の状態に戻った」。自転車(ロードレーサー)用チューブレスタイヤ向けの販売を大きく伸ばしているほか、パラスポーツ用車いす(ホイール)向けや卓球のラケット向けの販売が堅調と言う。

 このほど米デュポンの日本法人であるデュポン・スペシャルティ・プロダクツに消防服向け素材として独占的に供給することで合意した。

 世界の消防服市場は中国やインドでの市場拡大などを背景に今後も成長が続くとみられている。有機繊維の中で最高レベルの強度、難燃性を持つPBO短繊維の活用で軽さ、遮熱性を両立させた次世代型の消防服の開発に取り組む。