繊維ニュース

特集 差別化ヤーン/復活の鍵は“糸”

2021年09月03日 (金曜日)

 2020年から続く新型コロナウイルス禍は世界の繊維産業に深刻な打撃を与えた。外出制限や店舗休業などで衣料品需要が大幅に減退している。しかし現在、デルタ株による感染再拡大など不安要素はあるものの、ワクチン接種の進展などで経済正常化への道筋が見え始めた。こうした中、糸の需要も回復傾向に。消費構造の変化や新たなニーズへの対応など、繊維産業復活の鍵は“糸”が握る。

〈未利用綿や改質原綿活用/サステイナビリティーが軸/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けた事業運営に力を入れる。特にサステイナビリティーを軸にした提案を進め、未利用綿(落ち綿)や改質原綿で綿素材の魅力を打ち出す。

 同社では綿が持つ環境に優しい特徴を改めて打ち出しており、未利用綿を活用した糸「エコット」を打ち出した。原綿改質によって綿に機能を付与した吸汗速乾糸「爽快コット」、消臭機能糸「デオドラン」なども用意。消費者にとって分かりやすい機能を見せることで需要の掘り起こしに取り組む。

 オーガニック綿糸「ソレイユオーガニック」も販売している。近年、オーガニックコットンは不正認証事件が発覚するなどでトレーサビリティーの重要性が高まった。同社は長年にわたってインドの大手紡績と提携してオーガニック綿糸を調達しており、信頼できるサプライヤーとして豊富な実績を持つ。

 そのほかにもサステイナブルな科学的農法で栽培される米綿使い「コットンUSA」やベターコットンイニシアチブ(BCI)などの認証を受けた糸も多彩にそろえる。環境と人権を重視したモノ作りと提案に取り組む。

〈関心高まる「オフコナノ」/海外工場も多彩な原綿活用/シキボウ〉

 シキボウは世界的にサステイナビリティーへの要求が高まることに対応し、燃焼時の二酸化炭素を抑制する特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」を活用した糸を積極的に提案する。

 オフコナノは、ベースのポリエステルに再生ポリエステルが使われている。これにより再生から最終処分である焼却時も含めて環境負荷を抑えることができる。ポリエステル綿混紡糸や綿高混率糸(CVC)を中心に量産体制が整った。

 市場の関心も高く、引き合いが増加している。当初はユニフォームなど衣料用途が中心だったが、ここに来て一般資材や包装資材など用途でも採用に向けた商談が進む。

 そのほか、「クイックドライコットン」や「ツーエース」など綿と合繊を組み合わせた2層構造糸の提案にも力を入れる。綿の風合いと合繊の機能を両立する。

 海外工場での生産能力も強み。インドネシア子会社のメルテックスは2層構造糸の生産が可能なことに加えて、再生ポリエステル、オーガニックコットン、サステイナブルな科学的農法で栽培された米綿「コットンUSA」など多彩な原綿を活用できる。

〈ラメ糸もサステイナブル/生分解性ラメの注目高い/泉工業〉

 ラメ糸製造卸の泉工業(京都府城陽市)は、サステイナビリティーに焦点を当てたラメ糸のラインアップを拡充してきた。現在、再生ポリエステル、バイオ原料ナイロン、生分解性がある再生セルロースをそれぞれ採用したラメ糸を提案しており、特に生分解性ラメ糸への注目が高まっている。

 ラメ糸は金属を蒸着した樹脂フィルムをスリットして生産する。同社では現在、樹脂フィルムに再生ポリエステル、バイオ原料ナイロン、再生セルロースを採用したタイプを開発し、サステイナブルラメ糸のシリーズとして打ち出す。

 特にセルロースフィルムを使った生分解性ラメ糸「エコラメ」への引き合いは多い。このほど大阪で、開催された合同展示会「機能性繊維フェア」にも出展し、注目を集めた。近年、欧米市場ではサステイナビリティーへの対応が提案の前提条件となっている。このため欧米への輸出に取り組む産地のテキスタイルメーカーに提案を進める。

 主力の後加工対応ラメ糸「ジョーテックス」もフィルムに再生ポリエステルを使ったタイプの開発を進めており、量産化に向けた最終段階にある。減量加工などをしている北陸地域の取引先からの要望が強い。

〈環境に配慮した糸が充実/「彩生」システムに勢い/新内外綿〉

 新内外綿が廃棄物の削減を始めとする、環境配慮を付加価値とした糸の品ぞろえを増やしている。

 2020年から取引先への提案を始めた廃棄繊維を糸にリサイクルするシステム「彩生」は、アパレル業界の環境意識の高まりを追い風に着実に取り組み先を増やしている。

 彩生は縫製工場などから出る裁断くず、使われず余剰となった生地、不要となった縫製品を回収し、反毛した上、新たな原料を混ぜて再び糸にするというもの。システムの始動から2年足らずで編み地や織物製造業、商社、アパレルを中心に取り組み先を広げ、国内の著名アパレルブランドやセレクトショップのオリジナル商品にもこの糸が使われ市場に出始めている。

 植物性の天然繊維と言えば綿、麻がその代表格だが、同社はパイナップル、葦(よし)、竹、バナナといった植物に由来する糸も扱う。環境への優しさが付加価値とされる今、こうした異色の植物繊維も、一味違った糸として打ち出しを強める。綿混でカジュアル衣料用の糸として提案する。

 綿紡績として知られる同社だが、リサイクルポリエステルでも新たな商材をパートナー企業と組んで開発中。海洋汚染の防止に焦点を当てたリサイクル糸で10月開催の「北陸ヤーンフェア」で初披露する予定だ。

〈豊島/環境配慮でサステ重視/徹底管理でトレースも確立〉

 豊島が展開する「トゥルーコットン」と「フードテキスタイル」。いずれも有機栽培やリサイクルなど環境配慮という側面に加えて、トレーサビリティーにも対応したサステイナブルな差別化素材だ。衣料品を中心に採用例も広がりを見せている。

 トゥルーコットンはトルコ産のオーガニックコットン糸で“生産者の顔が見える”をコンセプトに掲げる。独占契約を結んだトルコの大手紡績グループ・ウチャクテクスティルが管理体制を徹底しており、生産農場から紡績までの流れを追跡できるのが特徴だ。

 廃棄食材を染料に活用するフードテキスタイルは50種類の食材を活用し500色という豊富なカラーバリエーションをそろえる。生地や製品だけでなく、色数を絞り込み糸での備蓄販売も進めている。流通経路や生産工程を豊島が一元管理することでトレーサビリティーも実現した。

 両素材の採用ケースも増えている。最近では、オーガニックを掲げるブランドを展開する米国デザイナーのジョン・パトリック氏とカリフォルニア発のセレクトショップ「ロンハーマン」がコラボレーションした新しいプロジェクトに採用されるなど認知度は高まっている。

 特に今年で7年目を迎えるフードテキスタイルはライフスタイル全般に向けた提案を進め、衣料品以外の用途にも広がりつつある。