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特集 高性能繊維/活躍の場広がり 成長に期待

2021年09月08日 (水曜日)

 近年、高性能繊維の市場は順調に拡大してきた。新型コロナウイルス感染拡大でいっときは需要が落ち込んだものの、自動車生産の回復などを背景に勢いを取り戻している。2021年は19年の水準に戻ると話す企業も見られ、22年以降の期待度も高い。活躍の場は多く、高性能繊維の伸び代はまだまだある。

〈クラレ/特徴生きる分野で拡大/次期中計中に増設検討〉

 クラレは2022年度(22年12月期)からの新中期経営計画で、高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」の増設を検討する。

 ベクトランは「優れた低クリープ性、非吸湿性、極低温下での高強力物性、耐湿磨耗性が最大の特徴」(髙井庸善繊維資材事業部長)。これを生かし、光ファイバーケーブルのテンションメンバー(張力から光ファイバーを守る補強材)、各種ロープ、スリングベルトなど向け中心に販売する。現在、各用途とも需要は旺盛。クラレ西条(愛媛県西条市)に置く年産1千トン設備はフル稼働中で、需給タイトな状況にあるため、増設の検討に入った。

 パソコン、スマートフォンの普及、5Gなど次世代移動通信の進展による光ファイバー市場の拡大に伴い、テンションメンバー向けは今後も販売拡大が狙える分野。水分を吸わないベクトランの特徴も評価されるという。

 ロープ向けは米国輸出を中心に好調である上、海底油田などの海底資源用や、浮体式の洋上風力発電用のロープも低吸水性が生きる分野として市場拡大を見込む。ワイヤー代替としてスリングベルト向けの増販も期待する。

 ベクトランは20年に事業化30周年を迎えた。この間に蓄えたベクトランでの技術ノウハウ、中でも高温下の溶融紡糸技術を生かし、自社だけでなく、他社製品を含めたエンジニアリングプラスチックの繊維化にも取り組む。

 低吸水性、高耐熱性、高耐薬品性などをポリアミド系エンジニアプラスチック「ジェネスタ」もその一つ。繊維化に成功し、既に特殊用途で販売する。PEI(ポリエーテルイミド)繊維「クラキス」も同様で、難燃性、低発煙性、染色可能などを持ち、航空機内装材向けで開発を進める。

〈東洋紡/「ツヌーガ」の増設決定/原着糸の開発急ぐ〉

 東洋紡は超高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」「イザナス」、PBO(ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール)繊維「ザイロン」という3タイプのスーパー繊維を展開している。

 耐切創手袋向けの販売増が見込めるツヌーガで増設投資を進めており、現状の年産1500トンを同2千トンに増強し、来年4月から量産を開始する。

 ツヌーガでは、耐切創手袋向けの販売が全体の85%を占めており、20年度は新型コロナウイルス禍で4~5月と苦戦を強いられたものの、その後復調。21年度4~6月期には「新型コロナ禍以前の状態に戻せた」と言う。

 現在、原着糸の開発を進めており、新設備が立ち上がる来年4月から3~4色による企画提案に着手。アウトドアのウエアやリュック、テントなどに優れた耐切創性を売り込んでいく。

 イザナスではホーサー向けの販売が低調なものの、新型コロナ禍に伴い密を避けられるレジャーとして人気を集めるフィッシング(=釣り糸)向けやバイクのヘルメット向けが伸びている。

 ザイロンの販売状況は「既にコロナ禍前の状態に戻った」と説明する。自転車(ロードレーサー)用チューブレスタイヤ向けの販売を大きく伸ばしているほか、パラスポーツ用車いす(ホイール)向け、卓球のラケット向けの販売が堅調と言う。

 ザイロンでは、このほど米デュポンの日本法人であるデュポン・スペシャルティ・プロダクツと消防服向け素材として独占的に供給する契約を締結した。

 中国やインドでの市場拡大などを背景に今後もグローバルな消防服需要の成長が続くとみられている。有機繊維の中で最高レベルの強度、難燃性を持つPBO短繊維を活用し軽さ、遮熱性を両立させた次世代型の消防服の開発に取り組んでいく。

〈帝人/アラミド繊維販売順調/22年度には一層の成長を〉

 帝人がアラミド繊維の販売を伸ばしている。新型コロナウイルス禍で2020年度前半は勢いを欠いたものの、10、11月から需要が急回復し、21年4~6月の販売は前年同期を上回った。年間でも19年の水準に近づくとみる。パラ系アラミド繊維「トワロン」の生産能力増強もあり、22年度には一層の成長を狙う。

 アフターマーケットを含めた自動車関連や他の産業の回復がアラミド繊維の需要をけん引する。パラ系とメタ系ともに良好な動きを示し、アラミド繊維全体の世界需要は新型コロナ前を上回っているといわれている。大手自動車メーカーが9月に実施する国内完成車工場の生産稼働調整の影響も限定的とみられる。

 中国メーカーの新増設はあるが、需給バランスは締まった状況が続く気配だ。帝人グループでアラミド事業を展開しているテイジン・アラミド(オランダ)はトワロンの生産能力を25%増強し、来年度から増設分の販売を始める。アラミド事業本部は「(販売の)前倒しも検討する」と話す。

 トワロンは高強度、軽量、高耐久性などを持ち、全用途で展開を強める方針で、2、3年で増設分のフル稼働を目指す。パラ系の「テクノーラ」も自動車用途を中心にフル生産フル販売が続く。長期耐熱性や難燃性といった特徴を持つメタ系アラミド繊維「コーネックス」「コーネックスネオ」などは防護衣料の深掘りを図る。

 環境対応もアラミド事業成長のためのコア戦略と位置付ける。リサイクルではメカニカルに加えて、ケミカルリサイクル技術が開発レベルにあるとしている。そのほか、カーボンフットプリントや軽量化などのソリューション提供などに取り組む。バイオ由来原料の活用を含めて、投資も積極的に行う。

〈東レ・デュポン/アラミドプリプレグ展開/スポーツ用途で採用進む〉

 東レ・デュポンは、パラ系アラミド繊維「ケブラー」でプリプレグ(強化プラスチック成形材料)の展開を始めた。柱の一つに育成する方針で、スポーツ分野や産業資材分野での販売拡大を狙う。既に採用が決まった用途もあり、将来はケブラー販売全体の10~20%に育てる。

 パラ系アラミド繊維の市場は、新型コロナウイルス禍で一時は冷え込んだものの、2020年度下半期以降(20年10月~)は自動車用途を中心に回復を見せた。21年度に入ってからも勢いは衰えず、厳しい状況が続いていた産業資材分野の復調もあって19年度の水準に近づいているといわれている。

 同社の販売も好調で、前年を大きく上回る水準で推移している。全体の6割強を占めている自動車向けがけん引役を務めており、「年間では19年度の実績と比べて10%の増販」を見込んでいる。今後も伸びていく用途での拡販を図るほか、高付加価値化で成長を目指す。

 伸びると捉えている自動車関連では、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)をはじめとする次世代自動車の部品、各種センサーの保護材などを深掘りしていきたい考えだ。そのほか産業資材では第5世代移動通信システム(5G)向けのケーブルなどの伸び代にも期待をかけている。

 高付加価値化で取り組んでいるのがプリプレグの提案だ。昨年夏にモノ作りのめどが付き、下半期から提案とサンプルワークを開始した。

 炭素繊維プリプレグと比べて耐衝撃性の高さなどが特徴。スポーツ用途で提案を開始し、レーシングカーのタイヤハウジング用途で採用されているほか、ゴルフシャフトや卓球のラケットなどにも浸透してきた。