小林恵介のベトナム便り (10)

2021年09月21日 (火曜日)

さらなるリスク分散図る日本企業

 ベトナムでは特に感染拡大が見られる地域で、感染防止のための移動制限や工場の操業制限・停止が起きている。工場内での宿泊、食事を条件とした操業、いわゆる「三つの現場」や、定期的なPCR検査の実施、従業員数の制限などが企業の負担を増加させている。

 英国の調査会社IHSマークイットによると、8月の製造業購買担当者景気指数(PMI、注)は、前月から4.9¥文字(U+333D)低下の40.2となっており、3カ月連続で指数が50を下回った。ベトナムでのサプライチェーンの分断についての報道などが内外で見られている。

 こうした状況は外資系企業による投資意欲にどのような影響を与えるだろうか。もちろん今後のベトナムでのリスクとして、パンデミック(世界的大流行)での操業停止リスクというものが念頭に置かれたことだろう。

 計画投資省によると、今年1~8月の対内直接投資(認可額)は新規・拡張計163億㌦で、前年同期比で11.6%増となっている。第1四半期に認可されたシンガポールや日本のインフラ大型案件が大きいものの、現時点では直接投資が大きく減少しているとはまだ言い切れない。

 上記統計の発表後にも、韓国のLGディスプレイの追加投資14億㌦の認可、サムスン電子のスマートフォンの生産拠点の能力を50%増強するなどの報道もある。今後、外資系企業の対ベトナム投資がどのように推移していくのか注目される。

 ある日系メーカーは「どの国でも操業停止のリスクはあり得る。中国に移管する動きもあると聞くが、移管先で(ロックダウン=都市封鎖=のような)リスクがないわけではない」としている。新型コロナ禍によってサプライチェーンにおけるリスク分散の在り方が再検討されているといえよう。

 ※注 製造業の購買責任者を対象に、生産高、新規受注や在庫水準などを評価する指数。0から100の間で変動し、50未満は「前月比で悪化や減少」を表す。

 

こばやし・けいすけ 日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所次長。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。2003年ジェトロ入会の後、熊本事務所、ハノイ事務所、海外調査部アジア大洋州課などを経て20年8月より現職。『世界に羽ばたく!熊本産品』(単著)ジェトロ、07年、『分業するアジア』ジェトロ、16年(部分執筆)などの著書がある。