繊維ニュース

特集 スポーツ・アウトドア(4)/加速するサステイナビリティーの潮流/素材編

2021年08月03日 (火曜日)

 スポーツ・アウトドアウエア市場では、高機能性の追求とともに、SDGs(持続可能な開発目標)実現に向けた企業の取り組みも不可欠なものとなった。中でもCO2や廃棄物の削減、自然由来・リサイクル素材の活用といった環境への配慮では、川上から川下まで一貫した取り組みが強く求められている。

〈「&+」で高機能素材群/東レ 22秋冬スポーツ〉

 東レは22秋冬のスポーツ素材商戦にサステイナブルを切り口とする企画を重点的に投入する。バイオ由来の原料を導入しナイロン610「エコディアナイロン」を新たに開発。「&+」(アンドプラス)なども合わせたエコ素材の多彩なラインアップを売り込んでいき「少なくとも前年を上回る販売量を確保する」との方針を掲げる。

 2020年度は新型コロナウイルス禍による苦戦で「10~12月期がもっとも苦しかった」ものの、21年の年明けとともに復調し欧米向けの輸出も回復基調に転じている。

 22秋冬では、「サステを大前提に企画を組み立てる」方針で、トレーサビリティーや白度にこだわって開発した再生ポリエステル「&+」を導入する高機能素材の開発を急いでいる。

 同社はバイオ由来原料によるエコ素材の拡販にも力を入れており、これまではポリエステルによる「エコディア」を先行させてきた。

 22秋冬からナイロン610もラインアップし、アウトドアなどナイロンへのニーズが高い業界へ売り込んでいく。国内外の著名ブランドがエコディアナイロンによる織物に注目しており、極細糸による軽量織物にラミネートを施した「ダーミザクス」の拡販を計画する。

〈「エコセンサー」をアップデート/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスは2021年度、米国向けが苦戦を続けるとみているものの、国内を「ほぼ新型コロナウイルス前の規模に戻せる」との手応えを示しており、スポーツ素材全体の販売量を19年度の90%前後まで回復させる。

 20年度は新型コロナ禍の影響で上半期にスポーツ用織物が苦戦。下半期に入り国内アウトドアや欧州からのオーダーが戻り12月以降、急激に回復した。

 環境配慮型素材「エコセンサー」を全面に22秋冬商戦に臨んでおり、廃棄された漁網を原料とする再生ナイロンを導入するなどエコセンサーのアップデートに力を入れている。

 21秋冬・22春夏向けに打ち出すとともに、海外市場にもブランドを浸透させるため、企画会社などとの連携を通じ欧米アパレルに対するアプローチを強化する。

 同社は3年くらい前からドレスシャツ向けに開発した「ベンベルグ」とポリエステルを交編したトリコットの販促に取り組んでいる。

 この間、郊外型量販店経由の販売を「倍々ゲーム以上のペースで伸ばしてきた」と言い、21年度もこれまでの勢いを持続させるために改めて企画提案、販路開拓に力を入れていく。

〈下半期からの反転目指す/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは22秋冬向けのスポーツ素材で、高密度ニット「スクラムテック」や高機能ニットシャツ地「Zシャツ」の拡販を目指す。下半期以降の市況好転に期待感を示しており、スポーツでも販売量の反転を計画する。

 2020年度はZシャツの販売が引き続き好調を維持したものの、新型コロナウイルス禍による影響が下半期に大きく発生したため苦戦を余儀なくされた。

 21年度も前半にコロナ禍の影響が残るとみているものの、後半からの市況回復を見通しており、下半期からスポーツ素材の販売を反転させる。

 22秋冬では戦略素材に位置付ける「スクラムテック」を打ち出し拡販を計画する。スクラムテックはポリエステルとPBT繊維などの高弾性糸を交編し高密度に編み込んだ軽量・ストレッチニット(丸編み)。

 ハリ・コシにも優れているため製品映えするのも特徴。スポーツだけでなく巣ごもり需要を含むシャツ、ジャケットのゾーンで新規顧客の開拓を強化する。

 この数シーズン、販促を強化してきた環境配慮型素材による企画提案も重視しており、ペット再生ポリエステル「エコールクラブ」、部分バイオポリエステル「同バイオ」、などを売り込んでいく。

〈新たに衝撃吸収「スパンドール」/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングは22秋冬向けのスポーツ素材で、環境配慮型「エコトーク」の市場浸透を目指す。エコ化した十字断面の吸汗速乾ポリエステル「スペースマスター」を前面に秋冬商戦に臨んでいる。

 2020年12月期では、新型コロナウイルス禍で苦戦を強いられたものの、マスク向けやウエアラブルの販売が好調で「大きく落ち込むことはなかった」。

 21年はエコ素材の拡販に重点化し下半期からの反転を計画。「通期で増収増益を達成したい」考えだ。

 エコ化したスペースマスターを、あるアパレルが世界戦略企画として打ち出すアイテムに採用。防透け「エクステージ」、接触冷感「ソフィスタ」、抗菌防臭「スペースマスターAG」でもエコ化を急ぎ、ラインアップを充実させる。

 クラレグループは昨年からモビリティー、スポーツ・アウトドアといったテーマに基づくセグメントマーケティングに着手。

 クラレトレーディングはスポーツ・アウトドアに参画しており、ウェブ展に衝撃吸収素材「スパンドール」を出展した。各方面から注目を集めており、ソックスのパイル部、シューズのインソール向けの開発を強化し、22年からの本格販売を計画する。

〈エコ素材を多彩に/ユニチカトレ―ディング〉

 ユニチカトレ―ディングはケミカルリサイクルで生産する再生ポリエステル「エコフレンドリー」やヒマ(唐胡麻)が原料のナイロン11「キャストロン」といった環境配慮型素材を前面に22秋冬のスポーツ商戦に臨んでいる。

 同社は全社を挙げてエコ素材によるモノ作り、企画提案に取り組んでおり、スポーツではエコフレンドリーの拡充、キャストロンによる開発を重視している。

 デュポングループとは部分バイオポリエステルと綿との複重層糸「パルパーソロナ」を共同開発しており、本格販売を目指した販促に力を入れている。

 エコ素材のマーケットでは再生ポリエステルの販売が先行しており、「ナイロンの希少性が注目されている」とキャストロンの拡販に期待を示しており、スポーツウエアだけでなくインナー・肌着を含むアイテムを掘り起こす。

 キャストロンでは、仏アルケマグループとの包括的なリサイクルにおける取り組みをスタートさせており、原糸、生地の生産ロス品、アパレルとの連携で回収した使用済み製品をマテリアルリサイクルで新たな繊維製品に再生する“繊維to繊維”の実現を目指している。

〈保温性高めた新作パーカ/アメアスポーツ〉

 アメアスポーツジャパン(東京都新宿区)は、アウトドアブランド「アークテリクス」の21秋冬新商品で、防風性に優れた生地「ゴアテックスインフィニアム」を採用した新作「アルファパーカー」などを投入する。

 アルファパーカーは、保温性を高めたダウンインサレーションビレイパーカで、防風性、耐候性、透湿性を強化するため2タイプの表地を使用した。他にスタッフサックに収納可能な「ニュークレイSVパーカー」、ジェンダーニュートラルサイジングを採用した「ニュークレイパンツメンズ」、軽量ダウンの「アグリウムフーディ」「アグリウムジャケット」などを新作として展開する。

 スノースポーツは、ゴアテックスインフィニアムを使い通常のソフトシェルよりも気候変化を考慮した「シャシュカ」ストレッチジャケットとストレッチパンツ、「プロクライン」のジャケットとパンツを新たに打ち出す。

 日常使いを想定したカテゴリー「エブリデー」の新作は、コートよりも短く、ジャケットよりも長い丈が特徴の「フォリアインサレーテッドジャケット」、軽量で温かいダブルニットを採用したモックネックの「エステラセーター」、ゴアテックスインフィニアムに起毛裏地を付けて保温性を高めた「ウィンドソフトシェルジャケット」、独自のエンジニアダウンテクノロジーを使った「コールダウンジャケット」、プレイドシャツ「キャンブリオンLSシャツ」などを展開する。

〈シューズにも「テンセル」/レンチング〉

 レンチングの精製セルロース繊維「テンセル」リヨセルがスポーツ分野でウエアだけでなくシューズなど周辺アイテムでも採用される動きが強まっている。

 近年、スポーツブランドの多くがサステイナビリティーを重視するブランド戦略を強化している。このため使用する素材をサステイナブル素材に変更する動きが加速しており、その選択肢としてテンセルへの注目が高まる。

 特に開発が活発なのがシューズ用途。既にアッパーを従来の綿キャンパスなどからテンセルに変更したシューズが商品化された。カバン地にもテンセルを採用する動きがある。こうした動きは、ブランドロゴ用の刺繍糸や混率や洗濯絵表示を表記するためのタグ用生地などアパレルパーツ用途にも広がる。

 レンチングは、テンセルが木材パルプを原料とする天然由来繊維であり、綿花と比較しても原料栽培時の環境負荷が小さいと主張している。さらにカーボンニュートラルを確認したタイプのテンセルも用意しており、これを採用することでカーボンニュートラルに貢献したモノ作りが可能になることを打ち出す。

 廃棄綿布を原料として再利用する「テンセルリフィブラ」への引き合いも強い。環境に配慮した素材としてテンセルの存在感がスポーツ分野でも高まる。

〈21秋冬商品に新たな熱反射防寒技術投入/コロンビアスポーツ/ウェアジャパン〉

 コロンビアスポーツウェアジャパン(東京都新宿区)は、アウトドアブランド「コロンビア」21秋冬で、体熱を利用した新たな熱反射防寒技術「オムニヒートインフィニティ」を取り入れたアイテムを展開していく。従来の熱反射技術「オムニヒートリフレクティブ」より熱反射率を40%向上させ、瞬時に暖かさを実現する。

 金色ドットのオムニヒートインフィニティ搭載の「ブーロポイントパスダウンジャケット」は、通気性を損なうことなく熱反射で瞬時に体を温める。動物に対する不当な扱いを行っていない農場から取れたことを証明する国際認定基準「RDS」の認証を受けた700フィルパワー(FP)のグースダウンを使用し、ボリューム感たっぷりに仕上げた。コンパクトに収納可能なスタッフバッグ付き。

 インフルエンサー・YURIE氏とコラボレーションしたフリース「ウィメンズシカゴアベニューリバーシブルジャケット」は秋口に展開予定。

 「マウンテンハードウェア」からは、通気性、ストレッチ、保温力、強力防風の4種それぞれのポーラテックテクノロジーを採用した高機能フリースや、ストレッチダウンパーカなどを投入する。

 今夏ECプラットフォームの大規模リニューアルを実施し、EC販売強化とともに、在庫管理の効率化を図る。

〈新規丸編み地構造体開発/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、22秋冬のスポーツ市場に新規丸編み地構造体「フリーモWB」を投入する。表生地と裏生地の間にキルト加工糸を挿入することで高い防風性を実現した。通気度は1平方㌢当たり1秒間に25~30㏄と同社従来品の半分以下に抑え、軽量感なども付与した。

 ソフト風合いや低ドレープシルエット、クッション性などの特徴を持つ特殊4層編み地構造の「デルタフリーモ」と、低通気度ニット生地「ウインドバリア」の防風性を融合したのがフリーモWBだ。通気度は防風ニットの基準50㏄をクリアする。目付(1平方㍍当たり)も250~320グラムで軽い。

 生地と生地の間に新規開発のキルト加工糸(ハイマルチ糸)を挿入し、高密度キルト構造とすることによって防風性と断熱性を実現した。保温性や吸水拡散性といった特徴を持ち、ウインドバリアと比べてかさ高性にも優れている。再生ポリエステルで生産することも可能だ。

 オールシーズン型のアウター素材としてスエットシャツやボトムス用途などに提案するほか、タウンユースのパンツ用途でも訴求する。22秋冬で3千反(1億円)の販売を目指す。

〈昇華ユニ軸に、新領域へ/スタクティカ〉

 スポーツウエアを扱うスタクティカ(東京都葛飾区)は主力の昇華プリントユニフォーム販売に加え、新たな商品の展開で事業領域を広げる。

 同社は主にフットサルやサッカー用の昇華プリントユニフォームを扱う。デザインと販売を行うのは日本フットサルリーグ2部、しながわシティフットサルクラブ所属の山田翔司選手だ。昨年5月に事業を開始し、累計販売数は約60チーム、2千枚を数える。

 簡単なイラストや画像でデザインを具現化する手軽さも奏功して順調に販売数量を伸ばすが、新たな商品の販売も進める。ボディーと昇華プリントを中国で一貫生産する背景を生かし、トレーニングウエアやピステ、ビブス(ゼッケン)も扱う。まずはユニフォームを販売したチームや団体を中心にアプローチする。注文はホームページや会員制交流サイト(SNS)で受け付ける。

 山田選手は今後について「ユニフォームは月に3団体、合計100枚の販売を目指す」と話す。さらに「ピステやトレーニングウエアの拡販とともにバスケットボールといった新しい領域へ事業を確立したい」と意気込む。現在、バスケットボールのウエアのブランド立ち上げを目指す企業や団体を対象にOEM生産といった協業を模索中だと言う。

〈止水機能に加え柔らかさも/YKK「フラットニット アクアガード」〉

 YKKの「アクアガード」は、ファスナーテープの表面をポリウレタンフィルムでラミネートし、止水性を持たせたファスナー。雨水が染み込みにくい機能性が支持され、スポーツやアウトドアの分野に活用されている。

 ファッション性も追求し、チェーン部分に好みのデザインをプリントできる「アクアガード プリファ」、ファスナーテープとフィルムで2色展開の「アクアガード ツートン」、フィルムをメタリック調にした「アクアガード メタリック調フィルム」などバリエーションを広げた。

 昨年11月には〝柔らかさ〟にこだわった「フラットニット アクアガード」をラインアップに加えた。フラットニットは、ニットテープにエレメント(務歯)を編み込んだコイルファスナーの一種で、薄くて柔軟性にも優れ、端正なシルエット表現ができる。

 フラットニット アクアガードNo.45は、No.5止水ファスナーと比較し、柔らかさは約2・7倍で、70%の薄さとなっている。リブのない開具を採用して、より縫製がしやすい仕様にした。スライダー開口部が大きい専用の挿入補助スライダータイプであるため、操作性が格段に向上した。

〈モンベル/ポケット付き最軽量レインウエア投入〉

 モンベルは、21秋冬で軽量性と機能性を備えたレインウエア「レイントラッカー」をモデルチェンジする。寒風や冷気をシャットアウトする防風性と衣服内のこもった汗の水蒸気を素早く外に逃がす透湿性を併せ持つ。ゴアテックスインフィニアムウインドストッパーファブリクスを採用。

 光沢感を抑えた落ち着いた印象で現行モデルと比べジャケット、パンツ共に約23%の軽量化を実現し、同社の腰ポケット付きレインウエアでは最軽量モデルとなる。スキー用ヘルメットに対応する大きめフードが特徴の新商品パウダーグライドパーカにも同生地を採用した。

 キャンプブームを背景に、ベースキャンプスタイル、コンパクト&シンプルキャンプを提案。1、2人用が好調なテントは、3シーズン向けだけでなく冬用の需要も高まっている。素早い設営、撤収を実現したクロノスドームシリーズをモデルチェンジし、温度調整や出入りの利便性を上げた。