ジーンズ別冊21AW(3)/Origin/リアルとオンラインで攻めの姿勢/欧州戦略を継続する「ジャパンデニム」

2021年09月27日 (月曜日)

 セレクトショップ「パリゴ」を運営するアクセ(広島県尾道市)が監修する産地ブランド「ジャパンデニム」は、昨年来からオンラインでの商談を推進してきた。その一方で、来年2月開催の素材見本市「ミラノウニカ」(ミラノ)や、最終製品を展示する「トラノイ」(パリ)への参加を見込む。新型コロナウイルス禍で海外出展が難しくなった現在も「欧州展の参加を模索している。オンラインを含め、商談を継続することが大切」と同社の高垣道夫専務は話す。

 パンデミックの直前となる2020年2月開催の素材見本市「ミラノウニカ」では計177社と商談を実施したほか、製品ではパリの合同展「トラノイ」に参加した。バイヤー数の減少など、既に新型コロナ禍の影響があったものの「商談に手応えがある。改めて日本発のデニムにポテンシャルを感じている」と高垣氏。その後、欧州展で培った人脈を生かし、オンライン商談を実施している。遠隔でジャパンデニムの特徴を伝えてきたが、海外の有力バイヤーからは「製品のシルエットとデザインの特徴をもっと知りたい」「デニム生地を実際に触りたい」とする意見が増えたと言う。

 そこで、欧州のセールスエージェントと新たに契約し、製品サンプルをイタリアへ空輸した。デニム生地に関しては、日系商社の欧州ショールームにサンプルを展示。外部企業による、それぞれの得意分野でジャパンデニムの商談を行っている。「製品はセールスとのつながりで販路が増えそうだ。生地は日系商社のネットワークを介し、確度の高い商談が期待できる」と説明する。

〈欧州で認知度アップ〉

 備中備後エリアに点在する国内有数のデニム産地、企業を「世界に知らしめる」ため、産地ブランド「ジャパンデニム」は誕生した。高品質という日本製デニム生地を巡るステレオタイプな宣伝よりも、国内外へ出展、販売し、よりリアルな声を吸い上げている。アクセが旗振り役を務めるジャパンデニムでは、小売り目線のビジネスを進めることで、マーケット性やトレンド、世界各国におけるジーンズ需要を探ってきた。

 ジャパンデニムは、行政と事業者が連携して備後圏域デニムを発信する「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」事業を通じ、発足した輸出振興プロジェクトだ。デニム生地と最終製品でそれぞれ商標登録し、19年3月からは製品の販売をスタートしている。現在、ジャパンデニムに参画する事業者は約30社に拡大。カイハラ、篠原テキスタイル、クロキ、山陽染工、豊和、坂本デニム、フーヴァル、大江被服、西江デニムなどが名を連ねている。

 環境保全に配慮した生産工程も特徴で、各事業者はデニム生地の生産や製品を展開する上で、エコ染色や省ボイラーシステムの導入、排水処理、水使用量の削減といった取り組みを実施している。製品には、ラベルに配した2次元コードで事業者情報を開示している。

〈製品の販売も好調〉

 今年2月末に発売したジャパンデニムの製品では、国内のデザイナーズブランド「アメリ」「コーヘン」「チノ」「ミュベール」「クルニ」「ロキト」「ラシュモン」などと協業。デザイン感の強いジーンズや分量感のあるデニムジャケット、ラッフル仕様のデニムスカートなどを提案している。新たに人気ブランドの「08サーカス」も加わる予定で、デザイナー側も「単価の高いデニム商品が良く売れている。品質も素晴らしいので今後も継続したい」(ミュベールの中山路子デザイナー)と期待感を示している。

 デニム商品の弱点とされる、真冬・真夏の販売動向を分析し「オンス変化でジーンズを製作したほか、デニム雑貨を拡充した。デザイナーには売れ筋情報をフィードバックした」と説明する。ブランドによっては2、3回と追加生産をかけた。事業者からも「生産量が大きくなった」という声が挙がっている。国内で事業者を探していたデザイナーも、継続的に仕事を依頼できるメリットがある。

 国内外でビジネスに好循環が生まれたことについて「やはり継続は力。できることを忠実に行う」とまとめた。日本発のデニムを巡っては、広島県福山市、岡山県井原市を中心とした備中備後エリアで国産デニムの8割以上を生産する現状があった。海外の有力バイヤーは、ジャパンデニムの存在を知って同エリアを認識した人も多い。