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ジーンズ別冊21AW(8)/Textile/Accessories/Trading/デニム素材と副資材メーカーの取り組み/YKK/レンチング/朝日ファスナー/大正紡績/フクイ/ユケンケミカル

2021年09月27日 (月曜日)

 持続可能な取り組みも進化が求められるようになった。国際規格の順守や数値的な目標、環境負荷軽減に向けた具体的な方法など、ただサステイナブルをうたうだけでは不十分とする意見もある。先シーズンは、コットンの代替素材やオーガニックコットンの採用が増えたほか、副資材でも持続可能な加工が主流になった。今季の有力企業の動向をまとめた。

〈YKK/環境負荷抑えるめっき技術/工程から有害物質排除〉

 YKKが開発しためっき技術「アクロプレーティング」は、従来のめっき薬品を一切使用しないことで、シアン、クロム、セレンといった有害物質を製造工程から完全に排除した。2019年に同技術を開発してから、ファスナー(スライダー)とスナップ・ボタンの製造に活用してきた。

 その成果を検証するため、主にジーンズなどに使用されるファスナー「3Y GSBN8 NH3」で調査を実施した。結果、製造工程で排出される温室効果ガスを96%、水使用量を66%、電力使用量を69%、熱エネルギー使用量を100%削減した。

 これらの結果を示したのはサステイナビリティー専門のコンサルティング会社であり、原料採取、生産、消費・廃棄といった一連の流れについて、環境負荷と潜在的影響を検証する「ライフサイクルアセスメント調査」という手法を使った。

 スナップ・ボタンについても同調査で環境に配慮した製品であることが実証されている。つまり、アクロプレーディングは環境の負荷を大幅に低減することが、第三者機関によって証明された。

〈レンチング/原着でインディゴカラー/環境負荷低減に貢献する〉

 レンチングのHWMレーヨン短繊維「テンセル」モダールの原液着色(原着)タイプ「インディゴカラーテクノロジー」への注目が高まっている。環境負荷低減につながる次世代のデニム向け原料として海外で採用が始まった。

 インディゴカラーテクノロジーは、ダイスターと共同開発したインディゴ顔料で原液着色したもの。同社によると通常のロープ染色によるデニム糸と比較して染色段階での薬剤、エネルギー、水の使用量と廃水量を大幅に削減できるとする。レーザー加工やオゾン加工でスレ・アタリ表現やウオッシュダウン表現が可能な一方、家庭洗濯では色落ちしない。

 現在、米国ではデニム製品のトレンドが戻りつつあるとされるが、サステイナビリティーにつながる要素が必須になっている。こうしたニーズを受けてインディゴカラーテクノロジーの採用が海外で本格化した。ジーンズのほか、セーターやインテリア製品でも採用の動きがある。

 日本でもモリリンがSDGs(持続可能な開発目標)達成を目指してクラボウなどと連携して立ち上げたブランド「アクアライズ」に採用された。次世代のデニム用原綿として一段と注目が高まる。

〈朝日ファスナー/“ビンテージ”の本質を追求/独自のモノ作りを生かして〉

 ファスナー製造卸の朝日ファスナー(三重県名張市)は、独自のモノ作りで“ビンテージ”の本質を究める。

 基幹ブランドの「WALDES」(ウォルディス)は米国で1930年代に実在したもの。タロンやコンマーと同様に長い歴史を持つ。同社はフリーになったウォルディスの商標権を取得。当時の製法を忠実に再現して、独特の武骨な顔つきのファスナーを作り出す。

 テープは綿100%の糸を使い力織機(りきしょっき)で織る。エレメントはメッキ加工を施さず、スライダーも豊富なデザインがそろう。使い込むうちに経年変化でジーンズの色落ちとともに絶妙な“味”を醸し出す。これらの工程を含め、全て本社に隣接する工場で一貫して生産を行う。

 福本毅社長は「昔と変わらない製法こそが『ビンテージ感』を生み価値をもたらす」と話す。国産のジーンズやアメカジを手掛けるブランド向けに豊富な供給実績を誇る。さらに「エレメントとスライダーの組み合わせと同様に、商機は無数に広がるはずだ」(福本毅社長)と新規の顧客獲得に向けて意気込む。

〈大正紡績/プレミアムゾーンに特化/獣毛混オーガニック綿糸も提案〉

 オーガニック綿糸のパイオニア的存在である大正紡績(大阪府阪南市)は、高級品を中心としたプレミアムゾーンに向けた提案への特化を強める。デニム糸も欧米のプレミアムブランドに採用される生地用に世界の希少な綿花を使った糸を供給する。

 世界的にオーガニックコットンへの関心が高まる中、デニム糸にもオーガニック超長綿など最高級原料の活用を進める。ウールやカシミヤやアルパカ、ヤクといった獣毛とオーガニック超長綿を混紡したデニム糸もプレミアムジーンズ向けに提案する。

 近年、オーガニックコットンは海外で不正認証事件が発生したことから、トレーサビリティーが極めて重要となった。同社は長年にわたって米国の契約農家などから原綿を調達しており、信頼できるサプライヤーとして豊富な実績がある。

 プレミアムゾーンに向けての提案には、世界のプレミアム綿花を活用することに加え、同社の歴史や綿花栽培農家との関係なども打ち出し、消費者に向けてブランド力や知名度をさらに引き上げることを目指す。そのため消費者やアパレルとの距離を縮める提案手法に取り組む。

〈フクイ/ブランディング支援に注力/提案ノウハウを幅広く活用〉

 服飾資材製造卸のフクイ(東京都台東区)は、「タグ屋」として事業を始めてから約70年にわたり、顧客のブランド価値の向上を追求している。ブランディングの一翼を担うつもりで、最適なデザインやスペックの資材を供給してきた。

 得意とするジーンズ向けの洗濯ネーム(ケアラベル)でも、ジーンズのダメージの度合いなどで求められる品質が変わってくるという。こうしたきめ細かいニーズに応えることで顧客からの信頼も獲得した。

 顧客の商品の付加価値を高める「ブランディングパーツ」を提案するノウハウを体系化し、幅広い分野で活用することも目指している。

 「モチフク」と名付けたプロジェクトは、ブランドの価値を持ち味と解釈し、さまざまな業界を対象にブランディングをサポートする。餅をトレードマークにして、作り手の意志と商品の価値を餅(モチ)のように膨らませ、生活者へ分かりやすく正確に伝えることに徹する決意を込めた。土屋哲朗社長は「苦楽を共にするぐらいの気持ちで取り組んでいく」と語る。

〈ユケンケミカル/硫化の風合い、反応染料で/特化型でSDGsへ対応〉

 加工薬剤製造のユケンケミカル(愛媛県今治市)は、硫化染料の代替となる反応染料「リアクティブKR染料」を開発した。硫化染料と同じように中白染色ができ、ストーンウオッシュやレーザー加工などで経年変化のようなアタリ感を出すことができる。

 硫化染料は基本的に水に溶けず、繊維に吸着させるためには還元剤を使い還元状態にしてから、高温の水で染色する。染色廃液による環境負荷も少なくない上に、臭いがきつい、生地が脆化(ぜいか)しやすい、再現性が難しいといった問題があった。

 リアクティブKR染料は他の反応染料と同じ使い方で、還元剤が必要なく、50℃の水温で染色できる。再現性とともに堅ろう度も高い。さらに硫化染料で出せなかった赤や緑といった鮮やかな色を出せる。パンツだけでなくニットやシャツ地など薄地への加工も可能で、「パンツ以外のアイテムでも使われ、新規取引先につながるケースも出てきた」(鴨川祐司社長)と言う。8月末には有害化学物質排出ゼログループ(ZDHC)の適合証明も取得した。

 水を使わず、常温で使用可能なパウダーブリーチ加工薬剤「ブラックシェード」(ブラックデニム用)、「サスライト」(ブルーデニム用)は海外からの引き合いが活発。国内外でSDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みが進む中、リアクティブKR染料やブラックシェードなど、特化型の加工薬剤の売上比率を現状の2~3割から半分以上へ高める。