特集 介護メディカル(4)/高齢者向けウエア・肌着はニーズ顕在化/ワコール/グンゼ/帝人フロンティア/QTEC

2021年09月28日 (火曜日)

 高齢者向けウエア、介護ウエアのニーズが顕在化してきた。インナーメーカーなどによる販売も着実に伸びているが、高齢者や要介護者をひとくくりにしない打ち出しが奏功している。大手SPAによる高齢者や乳がん手術後向け「前あきインナー」の販売もその後押しになった。

〈ファッション性も重視/ワコール〉

 ワコールは「らくラクパートナー」を展開している。インナーからナイトウエア、カジュアルまで幅広いアイテムをそろえ、シニアの日常生活をトータルで支えている。“なるほど着やすい、らくラク設計”とファッション性の両立で高い評価を獲得し、販売も順調な推移を見せている。

 2021年4~8月は、実店舗での販売が前年の同じ時期と比べて18%増、EC販売も25%増を確保し、トータルで24%増だった。

 乾燥機に対応する商品が底堅いニーズを示すほか、新型コロナウイルス禍に伴うイエナカ時間の増加でルームウエアやパジャマの動きが堅調だった。

 代理購入者が機能面を重視していることから、乾燥機対応商品の品番数を増やしているほか、イエナカ需要に応じるルームウエアを強化。特にセットアップを充実させる。ボトムでは「ワコールカルソン」で人気の「まるでデニム」を打ち出す。

 まるでデニムは、ジーンズのような見た目を持ちながら、軽くてストレッチ性に優れ、はきやすいのが特徴だ。前身頃の足の付け根部分にできるヒゲ状の色落ちを再現したアイテムも投入するなど、おしゃれを楽しみたいシニアの需要を取り込んでいく。

〈異業種連携で販路の拡大/グンゼ〉

 グンゼは、乳がんなどの手術後や肌が敏感になった人のセルフケアをサポートする肌着などがそろう「メディキュア」の販路を広げている。異業種のリブドゥコーポレーションとの連携で高齢者施設などへのアプローチを強めているほか、連結子会社のメディカルユーアンドエイと「アームレッグカバー」取り組みも進めている。

 メディキュアは、医療現場や患者の声を受けて生まれたブランド。差異化技術の「カットオフ」(切りっぱなし生地)を用いて肌への優しさに配慮したハーフトップ、アーム・レッグカバー、パッド対応ボクサーブリーフ、オストメイト対応のショーツといったアイテムがそろう。

 21年4~6月は前年同期の倍近いペースで販売が伸びた。リブドゥコーポレーションと連携し、アーム・レッグカバーとパッド対応ボクサーブリーフで試着モニターを実施しており、今後も高齢者施設などでの販売を強化する。

 新販路の開拓にも積極的で、レーザー治療器を販売するメディカルユーアンドエイと連携。同子会社を通じて皮膚科クリニックへの卸売りを始めた。商品は肌触りが滑らかな「低刺激インナー」「アームレッグカバー」「カップ付きインナー」など。

〈軽失禁対応下着でOEMも/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティア・ウェルライフ部の軽失禁対応下着の販売が順調だ。オンラインを含む通信販売だけでなく、リアル店舗にも販路が拡大している。GMSのOEM生産がスタートしたことも全体の数字を押し上げ、2021年4~8月の出荷事績は前年同期比1・4倍を記録した。

 軽失禁対応下着は、以前はネガティブな商品として捉えられ、店頭販売は難しい部分があった。近年はアクティブシニアの着用が増えたことで印象が変わり、店頭での露出が目立つ。同部の「ウェルドライ」もドラッグストアでの展開が6600~7千店舗に広がり、ホームセンターなどでも販売されている。

 商品力も高い評価を獲得している。超極細繊維「ミクロスター」の吸水布を使用しており、逆戻りや横漏れが少なく、尿染みができにくいほか、肌にも優しい。洗濯後の乾燥が早いのも特徴の一つだ。今年は次回購入時に使用できる割引クーポンを配付するキャンペーンも実施した。

 今後は販路拡大に取り組む方針で、コンビニや百貨店などでの展開も検討する。

 まだ調査中とした上で越境ECによる海外販売も視野に入れている。中国、欧州、米国に目を向けている。

〈介護用制服などでコンサル/QTEC〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、医療用や介護用ユニフォームを重点分野の一つに位置付ける。東日本事業所のユニフォーム・産業資材チームがコンサルティング業務を行うほか、各種試験にも対応している。人員拡充や新試験の開発を進めるなど、機能をさらに高める。

 ユニフォーム専門の部隊を立ち上げたのは約2年前。企業制服を中心にさまざまな会社・団体から寄せられる問いに対して、多様な角度で助言している。介護ユニフォームや医療ユニフォーム関連では商社や介護福祉会社からの依頼が多く、件数自体も増えている。

 医療ユニフォームでは「工業洗濯に耐える生地の選定」「防透性」に関する相談が寄せられ、介護ユニフォームでは「独自性」「着数」「価格」に対するアドバイスなどが求められると言う。抗ウイルスへの質問も少なくない。ユニフォーム・産業資材チームはその一つ一つに答える。

 チームの営業担当者は現在4人だが、来年度に1人、再来年度に1人拡充する計画。コンサルティング業務は試験依頼にもつながっているが、今後は冷感持続性試験、電動ファン(EF)付きユニフォームの安全性試験などを本格的に展開したい考えだ。