不織布新書21秋(8)/ダイワボウレーヨン/レンチンググループ/髙安/宇部エクシモ

2021年09月29日 (水曜日)

〈ダイワボウレーヨン/機能化で企画提案推進/サステイナビリティーへ関心〉

 ダイワボウレーヨンは、得意の機能レーヨンを生かした企画提案を推進する。不織布用途でもサステイナビリティーへの関心が徐々に高まっていることから、再生セルロース繊維であるレーヨンの強みを打ち出す。

 同社の2021年度上半期(4~9月)の不織布向けレーヨン短繊維の販売は比較的堅調に推移した。ただ、原料の溶解パルプの価格が高止まりしていることから利益面では厳しさが増している。そうした中でも機能レーヨンへの関心は徐々に高まっている。

 このため、下半期も引き続き機能レーヨンによる用途開発を含めた企画提案を推進する。メディカルやコスメティック、包材を含む食品分野などがターゲットとなる。大和紡績の合繊事業との連携も重視する。使い捨て用途が多い不織布分野でもサステイナビリティーへの関心が徐々に高まり、レーヨンなど再生セルロース繊維へ注目が高まることへの期待は大きい。

 こうした潮流に向けて、プラスチック代替が狙える撥水(はっすい)レーヨン「エコリペラス」、海水中での生分解性も確認した「エコロナ」、使用済み綿製品を原料に活用するリサイクルレーヨン「リコビス」などを不織布用途でも積極的に打ち出し、用途開拓に取り組む。

〈レンチンググループ/急成長遂げる不織布原料/日本での認知も向上〉

 レンチンググループ(オーストリア)が展開する不織布原料が衛生用品やコスメティック分野で急成長している。同社によると、新型コロナウイルス禍前と比較してアジア市場で2桁%の伸びを記録していると言う。日本でもコットンパフなどに採用され、「ヴェオセル」のブランド認知も高まってきた。

 同社の不織布原料には「テンセル」リヨセル、スペシャリティービスコースが用いられ、しなやかさやドレープ性、吸水性などの特徴を持つ。ワイパー用途では高い拭き取り性を発揮し、フェースマスク用途では滑らかなタッチが人気を博す。製品に付けるB2Cブランドとしてヴェオセルの名称が使われる。

 レンチンググループの不織布原料は植物由来原料の使用や生分解性を持っているなど、環境への負荷が小さいことでも高い評価を獲得しており、そのことも日本をはじめとするアジアでのビジネス機会の拡大につながっている。新商品として疎水性を付与した「レンチング・リヨセル・ドライ」を打ち出している。

 日本では、綿を用いた製品を販売するコットン・ラボ(東京都豊島区)のコットンパフなどに採用されている。同製品のパッケージには「Veocel」のロゴが記載され、商品の価値向上に一役買っている。今後もスキンケア用途やコスメ用途、衛生材料用途での展開を強化する。

〈宇部エクシモ/新商品開発で成長図る/抗菌などの機能面も焦点〉

 各種不織布用原綿を販売している宇部エクシモは、新商品の開発と販売を積極的に進めることによって今後の成長につなげる。市場にない商品やSDGs(持続可能な開発目標)に対応する商品を中心に、顧客とのコミュニケーションを深めながらニーズをつかんでいく。

 新型コロナウイルス禍は不織布市場にも影響を与えた。コーヒーフィルターをはじめとするイエナカ商品は伸びたが、制汗シートなどは勢いを欠いた。産業資材は比較的安定した。

 プラス面やマイナス面が混在しているような状況下で、同社不織布用原綿の2021年4~6月の販売は計画通りに推移した。

 今後の販売拡大に向けては「新商品の投入がポイント」と強調する。同社は芯鞘構造の複合繊維「UCファイバー」、芯鞘複合繊維でありながら繊度0・2デシテックスを実現した「エアリモ」、強度や耐薬品性に優れる「シムテックス」などをラインアップし、存在感を示してきた。

 エアリモやシムテックスのようにこれまでは細さや強さに焦点を当てた商品を生み出してきたが、抗菌といった機能性にも目を向けている。福島県郡山市の先端繊維研究所を基点にどのような機能や商品に顧客のニーズがあるか議論を行っていると言う。

 SDGsへの対応も不可欠と捉え、製造工程での環境負荷低減にも取り組む。

〈髙安/高難度のSCFへ参入/最終的に再生原料化も〉

 再生ポリエステル短繊維・不織布製造の髙安(岐阜県各務原市)は、今年5月、関事業所(岐阜県関市)にポリエステル繊維新工場を建設し、高難度とされるポリエステルショートカットファイバー(SCF)への参入を明らかにした。

 総投資額は新工場と隣接する新倉庫も含めて約20億円。国産の製造設備(2系列・月産最大50トン)はまだ試験規模に過ぎないが「新設備で一つ一つの物性をクリアし、確認を進めて技術に磨きを掛けていく」(野田博之常務)とし、来春にはSCF専用設備2系列を導入し、本格販売を始めたい考えだ。最終的にはSCFに加え長繊維での販売を含めて、月産300トンまで拡大する計画を組む。

 ポリエステルSCFは湿式不織布(機能紙)の原料に使う。湿式不織布は水処理膜を補強する支持体として使われており、同分野は世界的な成長が見込まれるだけに「商機がある」と判断した。

 ただ、支持体に使う湿式不織布の原料であるSCFは強度、伸度、油剤も含めた水への分散性など品質面での難度が非常に高い。

 このため、当面はバージン原料使いでの生産となるが、再生原料使いも視野に入れる。さらに同社は再生ポリエステル短繊維の大手でもある。繊維くず、フィルム屑の回収、再生を手掛けるだけに、将来的に湿式不織布屑を再利用した生産も狙う。