ベトナム/規制定まらず生産回復に時間/南部労働者不足、解消に「1年」

2021年10月08日 (金曜日)

 ベトナム南部では新型コロナウイルス感染第4波で実施された移動・外出制限などの緩和が進むが、製造業の生産回復に時間がかかりそうだ。最大の障害になってきた「工場隔離」の操業継続規制は、9月中旬以降、条件付きで自宅からの通勤を認める試験措置がホーチミン市の一部地域で始まったが、条件認定などに手間取り広がっていない。経済難を理由にした古里への帰省ラッシュも労働者不足を深刻化させており、障害の解消には1年以上の時間が必要との見方が出ている。

 「(3カ月続いた社会隔離措置で)寸断されてしまった部品・原材料のサプライチェーン(調達・供給網)を復旧させるのに3~5カ月。労働力を再び確保するにはその3倍の時間が必要になる」

 ベトナム労働組合・労働者研究所(IWTU)のブー・ミン・ティエン所長は、ベトナム紙グオイラオドンが1日に開催したオンラインセミナーで、製造業が受けた打撃の大きさをこのように表現した。7月中旬以降、南部各省市では企業が相次ぎ操業停止に追い込まれ、失業した出稼ぎ労働者は故郷に帰り新たな生活をスタートしている。ティエン氏は、操業を再開した工場が新たに要員を確保するには、給与や福利厚生を一層充実させる必要があると説明した。

 ホーチミン市内の工業団地などを一元管理する輸出加工区・工業団地管理委員会(HEPZA)によると、市内の工業団地と輸出加工区では7月初旬まで28万8千人が働いていたが、中旬から実施された「工場隔離」規制以降も就業を続けていたのは720社の6万4千人にとどまった。ファム・タイン・チュック副委員長によると、HEPZAでは失業や一時帰休などで3万1千人が帰省したとみている。

 市政府による4日の記者会見では、今月からの規制緩和に伴い、「工場隔離」から通常生産体制への変更・増員または通常体制での生産再開の申請により稼働人員数が13万5千人に増えた。ただ、HEPZAへの労働者の登録数に対する割合は46%にとどまっており、労働者が不足している状況との認識が示された。

 ビンズオン省労働・傷病軍人・社会事業局のファム・バン・トゥエン副局長によると、同省の企業数は5万社で、120万人が働いていた。このうち隔離措置により操業を継続した企業は3500社・25万人にとどまった。生産再開に向けては4万~5万人の労働力が不足すると見込んでいる。

〈企業は「自主責任」求める〉

 南部の一部地域では9月以降、ワクチン接種を終えた労働者らが、感染リスクが低い「グリーンゾーン」と判断された居住地、通勤路、生産エリアを移動することを認める試みが始まった。今月からの社会隔離規制の緩和に伴う本格的な生産再開への期待が高まるが、出足は鈍い。

 5日付「サイゴン・ザイフォン(電子版)」によると、HEPZA企業協会(HBA)のチャン・ティエン・ロン副会長は、ホーチミン市内に18カ所ある工業団地と輸出加工区に入居する企業の大半がいまだに「工場隔離」で操業を継続していると話した。

 HEPZAは、9月16~30日の生産活動に関する公文書2789号で、「グリーンゾーン」と認定された7区のタントゥアン工業団地とクチ郡の工業団地を対象に、従業員、従業員の居住地、通勤路、生産エリアのいずれもが感染リスクの低い「グリーン」と認定された場合、自宅からの通勤を認める試験的な措置を導入した。

 しかし、地域の感染状況や住民のワクチン接種に関する状況は日々変わり、数万~数十万単位の労働者の状況を日々把握するのが困難なことなどから、この措置は広がっていないのが実情とロン氏も認めている。

 ホーチミン市は今月1日に生産活動に関する公文書3048号を発出し、感染対策に対する企業の裁量権と責任を広げる緩和措置を定めた。ただ、企業が管轄機関の指導に従わないなどの違反行為があれば、企業の活動を一時停止させて感染防止計画を見直しさせる規定が盛り込まれており、政府の方針が生産活動を左右する状況は続いている。

 ロン氏は「各社は感染対策の完全な自主責任を望んでいる」と話した。これまで、工場内で感染者が出た場合、政府当局が工場全体の稼働停止を命じ、メーカーの生産計画に狂いが生じた。政府首脳は10月以降、工場内で感染者が出た場合でも、封鎖を一部にとどめて操業を継続できるとの見解を表明しており、ロン氏は「政府の統一見解として地方政府に徹底する必要がある」との考えを示した。

〈南部労働者の3分の2に打撃〉

 グエン・バン・ホイ労働・傷病軍人・社会事業省次官によると、南部19省市の労働者1800万人のうち、7月以降の南部全体のロックダウン(都市封鎖)により3分の2が失職、レイオフ(一時解雇)、一時帰休など悪影響を受けた。

 ホイ氏は、生活が困難となったほか、ホーチミン市や近隣の工業地域など人口密度が高い場所ほど感染リスクが高いとの認識が広がり、帰省する人が増えているとの見方を示した。このため、特にホーチミン市、ビンズオン省、ドンナイ省、ロンアン省の皮革・靴、繊維、電子部品組み立てなど労働集約型産業で労働者不足が発生しているという。

 ファム・ミン・チン首相は、工業生産の回復に向けた3日付の指示27号(27/CT―TTg)で、サプライチェーンの寸断、受注キャンセル、労働者不足などの諸問題を迅速に解決するよう、各政府機関に命じた。製造業の停滞が続けば外資企業の投資も流出し、負の影響が広がることに危機感を強めている。

 7月中旬から実施された「工場隔離」規制については、政府担当官を含む関係者がこれ以上の継続は困難と口をそろえており、新型コロナと共存する新常態に適した柔軟な措置が必要になる。

[NNA]