秋季総合特集Ⅲ(14)/トップインタビュー/カケンテストセンター/SC維持へ単線から複線へ/理事長 寺坂 信昭 氏/情報集団としてサービスを

2021年10月27日 (水曜日)

 2020年度(21年3月期)から3カ年の中期経営計画を進行中のカケンテストセンター。今上半期に中間点を迎え、寺坂信昭理事長は「次に向けて体制を整えた。方向性に間違いはない」と話す。下半期以降は機能性と非繊維をキーワードに、「充実したサービスの提供で企業活動に貢献」し、既存顧客の満足度向上と新規顧客の獲得につなげる。

  ――日本を含むアジアの生産体制はどう変わっていくのでしょうか。

 生産場の海外移転はこれからも続くと思います。中国一極集中のリスクが米中問題などで大きくなり、東南アジアへのシフトが加速する流れでした。変化を与えたのが新型コロナウイルス禍で、回復が早かった中国に回帰する動きが見られました。21年は東南アジアの国々でロックダウン(都市封鎖)が行われ、中国回帰が目立ちました。

 しかしながら、中国は電力問題があるほか、経済成長にも少し陰りが出てきたと伝えられます。一方の東南アジアもミャンマー情勢に加え、タイやマレーシアの政治も不安定感があります。さまざまなことを考慮しなければなりませんが、サプライチェーンの維持には単線よりも複線が重要であることは間違いないでしょう。

  ――検査機関はどのような対応を取るのでしょうか。

 従来型の検査は伸び代が小さく、新型コロナ禍が落ち着きを見せたとしても回復は難しいのではないかと考えています。機能性や衛生関連、安心・安全に関する試験・検査への関心が高まっており、それらに比重を置くことが不可欠になると思います。加えて国内では非繊維分野やCSR監査、認証業務にも力を入れなければなりません。

 海外に目を向けると、中国の回復が早く、地域や拠点によって差がありますが比較的順調だと思います。東南アジアは21年の初めまでは堅調でしたが、新型コロナ感染拡大で厳しい状況にあります。南アジアはインドなどで動きが出てきているようです。こうした状況を見ながら対応していかなければならないと感じています。

  ――カケンの今上半期(21年4~9月)を振り返ると。

 前年と比較すると回復を示し、19年並みの水準に戻っています。機能性や安心・安全に関する試験・検査は増えているのですが、試験・検査の全体の件数はなかなか戻ってこず、コスト合理化などに継続して取り組みました。海外の事業所は市況通り、中国が順調だった半面で東南アジアが苦戦しましたが、トータルで19年並みを確保しています。

 4月に立ち上げた東京事業所川口本所のバイオラボは順調です。開設前はマスク試験の納期が数カ月でしたが、今では10日前後で対応しています。マスクが中心ですが、それ以外の物も増やしていきたいですね。その一環でもあるのですが、カケンの存在や役割をアピールして一般の人にも知ってもらう。企業がカケンを利用する理由にもつながります。

  ――中期経営計画が中間点を迎えました。総括は。

 新型コロナ禍はありましたが、方向性は間違っていないと思っています。バイオラボの開設やインドベンガルール試験室で試験業務を開始するなど、今後に向けての体制を整えることができました。とはいえ、全てではありませんが、数字面での目標は達成ができておらず、人材の育成についても途上で、成果が十分に出せていません。

  ――下半期以降については。

 バイオラボと大阪事業所環境化学分析ラボを本格化し、機能性と非繊維をキーワードに新規顧客を獲得していきます。非繊維については抗菌などを基軸にさまざまな領域に広げていく方針です。アジア戦略については中国がどのようになるのかを見極める必要がありますが、とにかくインドを軌道に乗せます。

 さらに単に検査機関としてではなく、試験・検査技術の高度化に取り組みながら、情報を持つ集団としてさまざまなサービスを提供して顧客の活動への貢献を図ります。認証がそうした取り組みの一つですが、そのほかにもCSR監査やプロセス管理などにも積極的に応じていきます。

〈私のターニングポイント/公務員試験を受けたこと〉

 寺坂さんにとって公務員試験の受験がターニングポイントだった。1975年に就職活動を行ったが、「最初は売り手市場。金融機関を志望していたが、どこかに入れると軽く思っていた」と言う。ところが石油ショックの後遺症で突然買い手市場に変わり、厳しい状況に。“たまたま”受けていた公務員試験に合格したため通商産業省(現経産省)に入省することができた。「高い志を持って公務員を目指したわけではない」と照れた。

〈略歴〉

 てらさか・のぶあき 1976年4月通商産業省(現経済産業省)に入省。2004年6月経産省大臣官房審議官、07年7月経産省商務流通審議官、09年7月原子力安全・保安院長、11年8月退官。15年6月冠婚葬祭総合研究所社長、17年8月互助会保証社長を経て、20年7月からカケンテストセンター理事長。