秋季総合特集Ⅲ(15)/トップインタビュー/カオス時代の検査機関/ボーケン品質評価機構/日本繊維製品品質技術センター(QTEC)/ニッセンケン品質評価センター
2021年10月27日 (水曜日)
新型コロナウイルス禍や各国・地域における政治情勢の流動化などで世界は大きく揺れている。日本を含むアジアに拠点を持つ検査機関への影響も小さくないが、業績はおおむね計画通りに推移する。生産体制やサプライチェーンが変化する中、技術や業務の高度化を図ることでカオス時代を乗り切る。
〈ボーケン品質評価機構 理事長 吉田 泰教 氏/品質サポート業務拡充/サステイナブル活動を支援〉
――2021年度上半期(4~9月)を振り返ると。
緊急事態宣言などで経済活動が事実上止まってしまった20年度と比較すれば試験業務なども回復傾向です。ただ、繊維事業は19年度水準までは戻っていません。一方、抗菌・抗ウイルス試験や日用雑貨の試験は堅調に推移しています。取り組み先の商品企画段階から品質確認や海外工場で量産時の指導を行う品質サポート業務は引き合いも増えており、成果が出ています。サステナブルアパレル連合(SAC)に加盟し、認定教育機関となったことで日本のサステイナブルトップ企業群との交流も始まりました。有害物質排出ゼログループ(ZDHC)認定ラボとして工場排水分析の取り組みも始まりました。一方、組織面では20年からボーケンDXプロジェクトを継続しています。未来研究所のSE人材を各本部に配置することで改善活動を進めています。19年からスタートした事業本部制も3年目に入り、特色や取り組みが見えるようになってきました。スタッフの専門性向上に取り組み、技術力・情報力・対応力を高めることに取り組んでいます。
――今後の戦略は。
通常の検査業務だけでは需要の完全回復は難しい。ボーケンとして何ができるのか。新しい“価値”を自ら発信していくことが重要です。繊維事業ではマスクや防護服、ユニフォームやインテリアなどの機能性試験は堅調です。不織布の試験依頼も増加しています。フェムテック性能(女性用ショーツの吸水性)や生分解性などの評価ニーズは多様化しているので、対応力を高めます。生活産業資材事業は上海、広州、ホーチミンなど海外でも提携検査機関を通じて各種試験に対応できることが強みです。
機能性事業は大阪に加えて東京の試験センターで抗菌・抗ウイルス性試験の能力増強が5月に完了し、既に多くのご希望にお応えしています。自社ラボの管理支援や立ち上げ支援などのサービスも実施しています。認証分析事業はSACの教育訓練事業のほか、加盟した日本バイオプラスチック協会と協力して生分解性プラスチック分析や情報収集・研究に取り組んでいます。工場のCSR監査や教育・コンサルティング業務のニーズも高いため、日本と海外で専属チームを作って対応しています。
オンラインセミナーなど教育支援業務も好評です。業務提携を生かしたサービスの開発も進めます。例えばユニチカガーメンテックとは人体生理測定を生かした試験方法の開発に取り組んでいます。バイオメディカルサイエンス研究会とは新型コロナ対策商品の評価方法の開発や感染予防活動を支援しています。
12月1日からボーケン展示会をオンラインで3カ月間開催します。品質サポート業務や教育支援業務も含めて、ボーケンとしての取り組みを広く発信します。
〈日本繊維製品品質技術センター(QTEC)理事長 山中 毅 氏/生産地の移動に対応/職員の成長が不可欠に〉
――日本を含むアジアの生産体制はどのように変化するのでしょうか。
ASEAN地域を見ると、ミャンマーの政変や新型コロナウイルス禍によるベトナムのロックダウン(都市封鎖)などが起こりました。これらによって生じたのが生産地の移動です。ASEAN地域から中国に生産場がシフトし、QTECの南通試験センター(南通浩達紡織品検測)の試験・検査も増えています。
生産地の移動は、しばらくは続くことが予想され、日本回帰の声も聞こえています。新型コロナ禍が落ち着きを見せ、ウイズコロナ時代になれば、消費者の購買意欲も戻ってくると思います。その中で日本製の高級品のニーズが高まると、日本の技術力が再評価される可能性も出てきます。
――そのような変化に対応するには何が必要になりますか。
人材育成が不可欠です。われわれは各拠点の長を場所長と呼びますが、場所長の役割が変わっています。これまでは実務が主体だったのですが、今は政経動向の把握からナショナルスタッフの教育、経営まで、求められる事柄が多岐にわたります。職員の成長と、成長できる環境づくりに力を入れます。
――本部を移転し、職場改善にも取り組んでいます。
健康経営と人材教育の一環として進めています。本部移転を機にさまざまな職場改善を図っています。例えばビルの7階に誰もが自由に使えるフリースペースを設けました。QTECで一番大切なのは職員です。健康経営と人材教育、それに連なる職場改善が職員の成長につながってほしいと思っています。
指示がなくても率先して取り組む職員が増えており、職員の成長を実感できるうれしい瞬間です。海外の駐在員も同様です。中国の駐在員の中にはこの1年半から2年間で一度も日本に帰っていない人もいるのですが、“現場感”でそれぞれが考えて判断しています。各人の頑張りには本当に感謝しています。
――2021年4~9月の業績はどのように推移しましたか。
国内と海外ともに全般的に改善し、計画通りに順調に推移しています。ベトナムはロックダウンの影響を受けましたが、中国はほぼ計画通りでした。日本市場の不振に影響を受けた場所はありますが、生産地域に近い青島試験センターや南通試験センターなどでカバーしました。
――下半期から来期にかけての基本方針は。
22年度から新しい中期経営計画がスタートします。キャンプ用テントのSGマーク認証試験業務など、QTEC特有の機能や強みを生かして成長を図ります。海外については技術力やCSR監査の強化などに取り組みたいと考えています。知名度や顧客満足度の向上にも注力します。
〈ニッセンケン品質評価センター 理事長 駒田 展大 氏/従来とは違う取り組みを/コンサル業務も強化へ〉
――日本を含むアジアの生産体制はどのように変化していますか。
新型コロナウイルス感染症は、アジアはもちろん、世界中に影響を与えましたが、2021年は特に東南アジアで混乱が生じました。ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の拠点があるベトナムはロックダウン(都市封鎖)の措置が取られ、インドやバングラデシュなども厳しい状況が続いています。
新型コロナ禍が落ち着きを見せれば、各国・各地域ともにある程度は元に戻っていくと予想していますが、中国が主体になって動いていくことに変わりはないでしょう。ただし、日本市場向けの製品をこれまでと同じようなやり方で生産していくのは難しくなると思っています。
――そうした変化に検査機関はどのように対応していくのでしょうか。
検査機関にとって一番の課題は試験・検査の価格です。サステイナビリティーが不可欠になる中、使用できる素材が制限されると製造原価の上昇につながり、試験・検査費用が削られる可能性があります。適正な利益を得るには従来の試験に加えて、新試験の開発やコンサルティング業務の強化なども必要です。
例えば「エコテックス」で積み重ねてきたノウハウの活用です。環境への対応が厳しくなり、製造会社には化学物質の管理などがこれまで以上に問われることが予想されます。化学物質の管理手法などに関するコンサルティング業務に取り組めればと考えています。
――ニッセンケンの21年上半期(4~9月)の業績は。
中国の生産が回復しているのが寄与して前年同期の数字を上回る水準で推移しています。中国は前年の前半は厳しかったのですが、いち早く回復し、現在もその状況が続いています。日本はエコテックスや抗ウイルス性・抗菌性試験などが順調です。ASEAN地域は苦戦しています。
年間でも前年の数字は超えられると考えています。ただ、繰り返しになりますが、サステイナビリティーの浸透でライフスタイルが変化し、アパレル業界もそうした流れに応じたモノ作りを進めています。ニッセンケンへの要求・要望も変わるでしょう。今後も新たなニーズに応えられる検査機関であり続けます。
――これからのアジア戦略について。
中国と南アジアに重きを置いています。中国は市場として外せず、今の事業を将来に向けて大きく育てていきます。しかし中国は必ずしも日本市場向けの生産拠点とは言えなくなっており、われわれも事業転換を図らなければなりません。
バングラデシュやインドは新型コロナ禍の影響が残っていますが、製造の拠点として脚光を集めています。ニッセンケンもしっかりと対応していきたいと考えています。




