特集 第57回東京ファッション産業機器展―57th FISMA TOKYO(4)/東レACS/現場の声を生かすシステム作り/実践に即した効率化追求

2021年11月08日 (月曜日)

 東レACSは、アパレルCADシステム「クレアコンポⅡ」をはじめとした各種のツールを活用し、服作りの現場の効率化を追求する。帳票を他社のシステムと組み合わせる提案にも力を注ぎ、アパレル業界でも高まるデジタル化支援のニーズに応える。

〈工業用パターン自動作成機能搭載〉

 クレアコンポⅡは、アパレルの企画・設計工程の生産性向上をサポートする。ユーザーの声を反映させながら、毎年のようにバージョンアップを行い、進化を図ってきた。多機能でありながら感覚的な操作性を備えているのも特徴だ。

 使用できるパソコンを固定しなくてもいい「ソフトウエアプロテクター」を採用した。社内ネットワーク上の全てのパソコンで、ライセンスの数に応じて利用できる。稼働率の低いソフト(マーキングソフトなど)のライセンスを共有できるため、導入費用を抑えられる。

 従来のクレアコンポとデータの互換性があり、操作性も引き継いでいる。クレアコンポのデータについてはファイルやデータベースの読み書きが可能で、共存や移行もスムーズにこなす。優れた互換性により、他社データの有効活用もできる。

 企業と個人事業者に分けて、それぞれ最適な運用方法を提案している。

 チームでの作業が多く、情報共有が必要な企業向けには、柔軟なライセンス管理ができる「クライアントサーバー」を薦める。「クレアクラウドサービス」を利用すれば、サーバー管理は東レACSが担うため、システム担当者がいない企業でも導入への心配はいらない。クラウド上にデータとライセンスを保存するため、非常時にも迅速に復旧する。自宅や出張先でも社内と同じ環境で作業できる。

 個人事業向けに提案する「スタンドアローン」は、データベースを持たなくても利用が可能。「クレアパーソナルサービス」は即日の契約、利用開始に対応するため、短期間や不定期にCADを使用したい人に適した運用方法となる。月額・日額のプランが選べ、10ギガバイトまでなら追加料金なしでクラウド上にデータを保存できる。

 8月にリリースした最新のVer・7は、アパレル生産の現場の課題解決に焦点を当てた改良がなされた。工業用パターン自動作成機能を搭載し、縫製工場の作業の効率性を追求した。

 自動化については、縫製に関わる全工程を対象にするのではなく、各工程に対象を絞ることで、実践に即した機能を発揮させる。パタンナーの手作業が必要な部分は残すよう配慮したと言う。

 今回のバージョンアップで、ポケット付け位置から関連するパターンを自動作成できるようにした。「2枚袖―2」機能も追加し、表袖パターンのみを使用して裏袖パターンを自動で作成する。

 縫製現場の意見を取り入れ改良を加えることを徹底し、どの現場でも使いこなせる機能性を目指した。その結果、「リードタイムを大幅に短縮できた」という声が寄せられるなど好評を得ている。 説明動画も充実させ、ユーザーのサポートを強化する。

〈「アヤトリ」との連携で情報共有促進〉

 縫製仕様書・帳票連携ソフト「XIFORM MAGIC」(サイフォームマジック)とDeep Valley(東京都渋谷区)のアパレル生産管理ツール「AYATORI」(アヤトリ)を連携させたサービスを8月から開始した。サイフォームマジックの帳票作成・入力支援機能と、アヤトリのデータ共有・コミュニケーション機能を組み合わせることで、ユーザーによる社内外での情報共有の充実化を図る。

 サイフォームマジックは、縫製仕様書や加工指図書などを適時に作成する。アパレル向けに使いやすく設計したレイアウト作成機能や入力機能、作画ツールが利用でき、データベースによる情報連携で煩雑な帳票管理をスマート化するシステム。

 アヤトリは、インターネット上で製造に必要なデータを集約・共有し、一元管理する。チャット機能で関係者間のコミュニケーションを強化することで、サプライチェーン全体の効率性を向上させる。

 この二つのツールの融合により、仕様変更の確認・連絡で発生していた手間やミスによる無駄なコストを削減でき、設計・生産・製造といった各業務の改革を円滑に進められるようになる。

 実際に業務でチャットを使う場合、ワンクリックで開始できる。仕様書データからメッセージ画面を立ち上げ、その仕様書に対するメッセージを入力する。メールを起動したり、関連書類をファイルに保存して添付する作業が省ける。

 仕様書ごとにコメントを入力し、確認することもできる。相手がコメントを見たら「既読」の表示がつく。他の仕様書のメッセージと混同したり、「言った、言わない」のトラブルの防止になり、過去のメッセージを探す手間もなくなる。

 関連ファイルはサイフォームマジックの「品番パック」機能でまとめておく。PDFや画像データは、プレビュー表示ができる。サイフォームマジックの多様な検索機能を生かし、仕様書を探す手間を省く。関連ファイルも仕様書と併せて送れる。

 こうしてビジネスチャットを効果的に活用することで、メールや電話によるロス、トラブルを防止し、生産性の向上につなげる。

 やり取りの履歴は残るので、作業管理にも活用することができる。

 これまでもサイフォームマジックを他社製のシステムと連携させた実績はあるが、導入する顧客の状況に合わせカスタイマイズしてきた。今回のアヤトリとの連携では〝標準化〟を実現させた。導入のハードルが下がったことも訴求し、ボリュームゾーンでの普及を目指していく。認知度を高めるため、ウェビナーなどの周知活動にも力を注いでいる。